こんにちは。仙台で小さなアパートを経営しているhayasakaです。
10年単位の時間軸で事業を展開する不動産投資では、長い間に賃料の低下や空室の発生、金利上昇と言った様々なリスクにさらされます。
そのような下振れリスクにも動じない(赤字に転落しない)ようにするには、いかに自己資金の割合を厚くしておくかが重要になってきます。
しかし、初めて不動産投資を始める方は、自己資金に限度があるのは当然です。
限られた自己資金で自己資金の割合を高める方法はただ一つしかありません。
それは投資金額を抑えること。
自己資金が1000万円なら、5000万円の物件ではなく、3000万円の物件を探すことが鉄則になってきます。
しかし、そんな物件は果たしてあるのでしょうか?
試しに収益不動産の検索サイトで地域を指定しないで検索してみてください。
地方には驚くほど安価な物件があることに気づくはずです。
そんな格安地方物件の中には、「非線引区域」という物件もあるかも知れません。
今回は、非線引区域の概要と、注意点などについて学んで行きたいと思います。
目次
非線引区域の基礎知識
非線引区域とは
日本中の土地は、都市計画法や、建築基準法によって「都市計画区域」と「都市計画区域外」に大別することができます。
わかりやすく言えば、都市計画区域は計画的に都市開発する地域なのに対し、都市計画区域外は開発の可能性自体が薄いので規制するまでもない地域という位置づけです。
- 都市計画区域=計画的に都市開発を進める地域
- 都市計画区域外=開発の可能性が低いので規制していない地域(山林や農地)
都市計画区域は、さらに以下のような3つの区域に分けられます。
- 市街化区域=市街化を優先的かつ計画的に進める地域
- 市街化調整区域=市街化が進んでいる(もしくは10年以内に市街地化する)地域で、開発行為を抑えることで良好な生活環境を維持しようとする地域
- 非線引区域=市街化区域にも市街化調整区域にも入らない地域
政令市のような中核都市では、市街化区域か市街化調整区域に線引きすることが義務付けられています。
ところが、より小さな地方都市では、どちらにも入らない非線引区域というエリアが存在します。
自然環境と住環境が混在しているようなエリアで、いわば「地方都市の町はずれ」といった場所です。
ちなみに、国土交通省によると、各地域の面積割合は次のようになっています。
- 市街化区域:3.8%
- 市街化調整区域:9.9%
- 非線引区域:12.8%
- 都市計画区域外:73.5%
人が住んでいるのは国土のおよそ4分の1で、その中のおよそ半分を占めるのが非線引区域というわけです。
あまり耳にする機会はありませんが、非線引区域は思いのほか多い事がわかります。
非線引区域と都市計画区域外の違い
都市計画区域外の土地については都市計画法の規制は掛かりませんが(「準都市計画区域」に指定された地域は、ある程度の制限があります)、非線引区域はあくまでも都市計画区域内にあるので都市計画法の規制を受けますし、都市計画税もかかります。
ただし、それはかなり「緩い」もので、たとえば、市街化区域では1000㎡以上で開発許可、建築許可申請が必要なのに対し、非線引区域では3000㎡以上となっています(自治体によって容積率、建ぺい率などの条件が異なりますので、事前に管轄の自治体にご確認ください)。
また、都市計画区域外の地域に比べて、非線引区域の土地は開発ニーズが期待できるという違いもあります。
都市計画区域外の土地とは、いわゆる“田舎”の土地なので、現実的には資材置き場か太陽光発電所ぐらいしか利用価値がありません。
いずれも収益性はあまり期待できないため、規制がなくとも開発ニーズはそもそも生まれにくいのです。
これに対し、非線引区域の土地は、ある程度の町づくりが進んでいるエリアなので、立地環境によっては工場や倉庫などとしての活用も考えられるのです。
ただし、若者の流出と人口減少が続いている地域が多いため、賃貸住宅経営は困難と見るべきでしょう。
つまり、現状、開発ニーズがほとんど期待されないのが都市計画区域外であり、立地環境によってはある程度の開発ニーズが期待できるのが非線引区域と言えるでしょう。
非線引区域のメリットと注意点
非線引区域のメリット
都市計画区域内にある土地なので、立地環境によっては収益不動産としての可能性があり、しかも、市街化区域や市街化調整区域に比べて土地活用の自由度が高く、用途が幅広いというのが一番のメリットです。
また、市街化区域や市街化調整区域に比べ、より安価に購入できるのも魅力(つまり自己資金の割合を高くして、リスクに強い経営を実現できる)と言えるでしょう。
非線引区域の注意点
非線引区域では、電気やガス、上下水道、道路と言ったインフラが整っていないケースが少なからず見られます。
場合によっては自分で引いてこなければならない場合もあり、莫大な都市計画事業費用を投じる事態に陥る可能性もあります。
また、住居も混在しているエリアなので、地域住民との間で摩擦が生じる懸念もあります。
地方都市ほどコミュニティの結びつきが強い傾向があるので、注意が必要です。
さらに、土地活用の規制が緩いということは、開発しやすい環境ということであり、将来的にいわゆる“迷惑施設”などの建築物が周囲にできてしまう可能性もあるということです。
そうなると、資産価値や収益性を大きく低下させる恐れも否定できません。
そして、所有者が撤退や不動産売却を考えた場合、次の買い手を見つけ、不動産売買するのは容易ではない点にも注意が必要です。
いわゆる「出口戦略」を模索しにくいという点にも注意しなければなりません。
その他にも、市街化調整区域の方が、市街化区域に比べて固定資産税が高くなりがちです。
非線引区域投資で注意する点
建物は建てられるか
非線引区域での住宅建築などの建物建設は可能です。
ただし、電気・ガス・水道・上下水道などが未整備な宅地もあるので事前にチェックする必要があります。
また、それ以外の規制についても、管轄する自治体に問い合わせてから購入する必要があるのは言うまでもありません。
融資は受けられるか
非線引区域物件は安価な反面、次の買い手が見つかりにくいこともあり、担保価値は低く見られる可能性があります。
つまり、融資額が予想以上に低く、資金計画でつまずく心配があるということです。
特に人口減少が予測される地域では融資自体が見送られる可能性も否めません。
しかし、逆に言えば金融機関が融資に慎重だということは、長期安定経営が危ぶまれる物件ということでもあり、その場合は投資自体を見合わせた方が賢明と考えるべきでしょう。
将来的展望は?
人口減少社会に突入した日本では、2040年に自治体数が半減するという予測もあります。
全国におよそ1800ある市町村は、各地の中核都市化に収れんし、900近くが“消滅”するとの予測です。
※日本創成会議「全国1800市区町村別・2040年人口推計結果」 座長:増田寛也(東京大学大学院客員教授、元総務相)
非線引区域は政令市などの中核都市ではなく、消滅可能性のある中小の自治体に偏在しており、そのような場所では資産価値も収益性も“消滅”する恐れさえあるのです。
つまり、将来的には大きな不安を抱えた物件と言っても過言ではありません。
従って、非線引区域の不動産への投資は、特に慎重に判断することが必要と言えるでしょう。
まとめ
都市計画区域内の土地は、都市開発を進める市街化区域と、都市開発を抑える市街化調整区域、さらにそのどちらでもない非線引区域の3種類があります。
非線引区域は“地方都市の町はずれ”といった立地環境にあり、都市計画区域外よりは町づくりが進んでいるものの、土地活用ニーズ自体はそれほど期待できないエリアと言えます。
非線引区域の物件は安価で規制が緩いのが魅力ですが、インフラが未整備な場合や、規制が緩い分周囲に思わぬ施設が建設される可能性もあります。
融資の面でも難航する可能性は否めません。
また、非線引区域は中核都市ではなく、中小の都市に多いことから、将来的に消滅の危険性があるような自治体の場合は、特に慎重な判断が必要です。
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