こんにちは。仙台で小さなアパートを経営しているhayasakaです。
平成25年時点での日本の空き家は約820万戸、空き家率は13.5%を突破しています。
今後はさらなる空き家の“激増”が予測されており、2033年には空き家数1250万戸、空き家率は実に30.2%に上るとの予測も発表されています。
つまり、今から10数年後には日本の住宅の3軒に1軒が空き家になるという、賃貸住宅業にとって空前の「氷河期」がやってくる恐れがあるわけです。
20年、30年という時間軸で事業展開する不動産投資では、極めて深刻な逆風と言えるでしょう。
(株式会社野村総合研究所(発表元) 「2018年、2023年、2028年および2033年における日本の総住宅数・空き家数・空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)の予測」より)
では、これからは不動産投資を避けた方が良いのでしょうか?
必ずしもそうではない点が不動産投資の面白いところ。
大量の空家が発生するという事は、視点を変えれば「巨大な空き家市場」が出現することでもあります。
つまり、空き家を活用した新たな不動産投資のチャンスが芽生えることでもあるわけです。
現に「空き家ビジネス」と呼ばれる新たな収益モデルも次々に生まれ「空き家ビジネス」を始めている事業者や起業家、企業も増えています。
そこで今回は、空き家ビジネスの可能性やメリット、注意点などについて学んで行きましょう。
目次
空き家ビジネスの基礎知識
空き家ビジネスとは
空き家ビジネスとは、空き家を活用して何らかの収益を上げるビジネスモデルです。
例えば、空き家を定期的に訪問して、掃除や除草、風通しなどを行う「空き家管理ビジネス」などは、すでに成長モデルとして注目を集めています。
その他にも、空き家の再生ビジネス(リフォーム・リノベーション事業や民泊事業)や、空き家のマッチングサービス、空き家の住宅診断サービス(インスペクション)など様々な空き家ビジネスが産声を上げています。
民泊サービスは現在非常に注目を集めており、住宅宿泊事業法(民泊新法)により、届出を出して登録さえしていれば、一般の住宅でも、旅行者に宿泊施設を提供することが可能です。
ですが、東京オリンピックが終わると、宿泊施設としての収益を上げる事は困難になる懸念があります。
このようなビジネスモデルは人的労力が必要であり、サラリーマン投資家などが現在の仕事を続けながら不労所得を上げる不動産投資とは異なります。
では、不動産投資としての空き家ビジネスにはどのようなものが考えられるのか見ていきましょう。
賃貸住宅への再生
空き家を賃貸住宅にリフォーム・リノベーションして運用する方法。
立地環境が良く、躯体がしっかりしている空き家なら、風呂・トイレ・キッチンなどの設備を入れ替え、床や壁紙を張り替えるなどのリフォームで賃貸住宅に再生することが可能です。
特に「戸建て賃貸」は需要に比べて供給が極端に少ないため、一戸建ての空き家を戸建て賃貸として活用する方法は有望と言えるでしょう。
ただし、リフォームやリノベーションに多額の費用が発生する物件は要注意。
現在の建築基準に適応させるために大がかりな耐震工事や断熱工事が必要になる物件なら手を出さない方が無難です。
その場合はむしろ更地にして、その土地に戸建て賃貸専用商品(1000万円前後で建築できる商品も存在しています)を建てた方が良いかもしれません。(解体費用分は地主さんに値引き交渉すると、応じてくれるケースが多いはずです)
アパートやシェアハウスなどへの再生も不可能ではありませんが、リノベーション費用が莫大になるので、わざわざ空き家を活用するメリットはないと言えるでしょう。
事業用賃貸物件への再生
観光地などにある物件なら、民泊施設やカフェ、店舗付き住宅など、事業用賃貸物件への再生事例も増えています。
特に太い柱を使った再生古民家は、外国人や観光客にも人気です。
ただし、賃貸住宅に比べて借り手(物件を借りて事業を営もうという人)が少ないため、借り手が見込めるかどうかがポイントになります。
万が一借り手が現れなければ、負の資産になりかねないので注意が必要です。
倉庫やトランクルームへの活用
賃貸住宅は難しい場所(すでに空室物件が目立つエリアなど)なら、倉庫やトランクルームに改修するという方法もあります。
人が住むわけではないので、改修費用を抑えられるのが利点です。
ただし、こちらも需要には限度があるため、近隣に競合が存在しないことが大前提になります。
また、あとから競合が出現すればたちまち収益性が悪化する可能性があることも頭に入れておかなければなりません。
有望なのは賃貸住宅への再生
このように、不動産投資という観点から見た場合、空き家を活用したビジネスで最も安全性・安定性・収益性が期待できるビジネスモデルは、やはり豊富な借り手が期待できる賃貸住宅への再生と言えるでしょう。
しかし、ここで疑問が生じます。
そもそも人口減少・家余り現象が加速する中で、果たして賃貸住宅の市場性は今後も見込めるのでしょうか?
少し掘り下げて考えてみましょう。
不動産投資としての空き家ビジネスの展望
なぜ空き家が急増するのか
空き家が急増する理由としてまず挙げられるのが、人口の急激な減少です。
日本の人口は少子高齢化社会が進み、2008年をピークに減少に転じています。
特に800万人ともいわれる団塊の世代は間もなく後期高齢者に入り、人口減少にさらなる拍車をかけることが予想されています。
人口が減れば、それだけ住宅がだぶつくことになり、空き家を生むことになるは当然です。
しかも現在の高齢者が所有する住宅は、耐震性や断熱性が低い上、郊外に立地する物件が多く、若い世代には魅力がないのも大きな問題です。
現実に、高度経済成長期に開発されたニュータウンなどの地域では若い世代が移り住まない(世代交代が進まない)ことから、学校や商業施設などの閉鎖が起こり、一層若い世代から敬遠される悪循環を招いています。
このような物件は当然、中古住宅としての流通性が乏しく、空き家増大を加速させると見られています。
加えて2022年には都市部に存在する「生産緑地」の約8割が指定解除され、大量の農地が宅地として放出されることで、三大都市圏の地価が暴落する可能性が指摘されています。
この結果、新築住宅が手に入りやすくなり、相対的に中古物件の魅力が低下し、空き家として放置される可能性が高まるのです。
大都市圏以外でも、人口減少を見越したコンパクトシテイ化が進行しており、自治体においても、将来人口の減少に合わせた市街地の縮小化が計画されています。
縮小線の内側に行政機関や教育機関、医療機関、商業施設などを集約するもので、縮小線の外側では空き家が増加すると見られています。
このように空き家が増えていくのは人口減少と高齢化のダブル進行に加え、高齢者が所有する住宅の流通性の乏しさ、大都市圏での地価下落などが相互に影響して進行して行くもの。
決して一過性のものではなく、少なくとも今後数十年にわたり続いていくトレンドと見られます。
空き家が賃貸住宅経営に与える影響
空き家はそのまま放置しておくと、やがて迷惑な「特定空き家」に指定され、固定資産税の軽減措置制度を受けられなくなる可能性があります。
たとえば20万円だった固定資産税が一挙に6倍の120万円にはねあがるのですから、所有者は何らかの対応を迫られることになります。
つまり、空き家ビジネスを模索するか、売却するかですが、同じような物件が一挙に市場に放出されるため、貸すにしても売るにしても価格の暴落は必至。
結果として不動産価格は大幅下落し、一般のサラリーマンでも無理なく住宅を購入できる環境になって行くでしょう。
住宅購入が容易になるという事は、賃貸住宅需要を大きく冷え込ませる可能性があります。
賃貸市場は需要が減ったからといって、すぐに供給を減らすことはできません。
つまり賃貸市場では、供給が需要を上回る事態が常態化すると見られます。
これは家賃の引き下げ圧力として作用するため、家賃はダラダラと歯止めなく下がり続ける恐れがあります。
特に、駅から遠い、近くにコンビニがない、建物が古い、間取りや設備が古い、狭いといった物件から振るい落とされるはずで、良質な物件以外は利用者があらわれず、負の資産に転落する恐れが大と言わざるを得ません。
どんな空き家が狙い目か
従って、今後空き家を活用して賃貸住宅事業を検討するのなら、駅から近い物件か、多少駅から遠くても住環境が良く、簡単なリフォームで済みそうな比較的状態の良い空き家を吟味して購入することがポイントになります。
どんなに安くても賃貸住宅としての魅力が乏しく、リフォームやリノベーションに多額の費用が発生する物件は避けるべきです。
また、郊外の古いニュータウンなど、高齢者が多く若い世代にとって魅力度が低いエリアは、さらに住環境が悪化する恐れがあるので、手を出すべきではありません。
地方の場合は、全国に82カ所選定されている「中枢中核都市」内にあるかどうかも、重要な目安と言えるでしょう。
このような好条件の物件でも、格安に入手可能なのがこれからの時代です。
超買い手市場を背景に、不動産業者を通していかに安く買いたたけるかがキーポイントになるはずです。
空き家投資のメリットと注意点
空き家投資のメリット
空き家を活用して賃貸住宅経営を行う利点は、なんといっても投資額を抑えることが可能な点です。
地方都市の物件には、わずか数百万円で購入できるマンションや一戸建て住宅が豊富に存在します。
このような物件の中から建物の状態の良い物件を選び、リフォーム費用を抑えることができれば、1000万円台前半程度の投資で賃貸事業をスタートすることも可能です。
不動産投資では返済比率(家賃収入に占めるローン返済の割合)を40%以内に抑えることができればまず安全と言われており、投資額を抑えられる(=ローン借り入れを抑えられる)空き家投資は、それだけリスクに強い不動産投資になるのです。
空き家投資の注意点
便利な場所にある住宅なら、家族や親族が住むか、すでに第三者に貸し出して活用しているはずです。
それが、空き家として活用されないままになっているというのは、何かしらの問題を抱えている物件である可能性があります。
たとえば、周囲に迷惑施設がある、子育てや生活に必要な施設がない、事故物件等々、住宅としての重大な問題を抱えているようなケースです。
このような物件は借り手にも敬遠されるため、必ず現地に足を運び、近隣住民の話を聞くなどの現地調査を行うようにします。
また、マンションにしろ、戸建て賃貸にしろ、簡単なリフォームやリノベーションで賃貸住宅に再生する場合、入居者は1名(1家族)だという事も注意点です。
つまり、退去後、次の入居者が入るまでは家賃収入はゼロになるという事。
複数の入居者にリスクヘッジできるアパートに比べ、経営が不安定になりやすいことを想定し、ある程度の資金をプールしておくなどの対策が必要です。
さらに、空き家投資が成功するかどうかはリフォーム費用に掛かっていると言っても過言ではありません。
どんなに安くてもリフォームやリノベーションに多額の費用が発生するようでは、ローン返済が収益を悪化させ、リスクに弱い投資になってしまうからです。
従って、状態の良い物件かどうかを確認することが極めて重要であり、専門家による建物診断(インスペクション)を依頼するようにしましょう。
費用は10万円~20万円程度で、目に見えない部分も含めて細かく診断してもらえるので安心です。
融資や補助金の申請の際に必要になる場合があり、また将来売却する際にもインスペクションを受けていることはプラス材料になるはずなので、必ず受けるようにしましょう。
まとめ
今後、空き家は急増して行くのは避けられない現実で、10数年後には3軒に1軒が空き家という、不動産投資にとってはまさに「氷河期」が訪れようとしています。
しかし、視点を変えれば「空き家ビジネス」という新たな投資市場が出現することでもあり、特に空き家を賃貸住宅に再生する事業は有望と言えます。
空き家を賃貸住宅に再生する場合に重要なのは、立地環境と建物の状態が良い事。
どんなに安くても、人口減少が予想される場所や交通の便と住環境が悪化して行く可能性の高いエリアの物件には手を出さない方が無難です。
また、できるだけ投資額を抑えるには、建物の状態が良い物件を選ぶこともポイントで、専門家による建物診断(インスペクション)を受けて、良質な物件のみを購入・再生して行くことが重要です。
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