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区分マンションのヤドカリ戦略とは?

投稿日:2017年12月4日 更新日:

区分マンションのヤドカリ戦略とは?

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不動産投資を行うときには動く金額が大きいだけに、できるだけリスクを抑えて投資をしていきたいもの。特にローン返済ができなくなると、物件を手放すだけではなく任意売却や自己破産にまで追い込まれてしまい、後々の生活にも大きな影響が出てきます。

そこでリスクを抑えた不動産投資をしていくための戦略の一つに、通称「ヤドカリ戦略」というものがあります。

ここではそのヤドカリ戦略を採っていくための方法とメリット、そして気になるリスクについてお伝えしていきます。

ヤドカリ戦略とは

まずヤドカリ戦略とは次々に家を買い替えていく投資手法を指します。

ヤドカリというのは大きな貝殻を見つけると次々に自分が新しい貝殻に住み替えていく生き物ですが、そのヤドカリになぞらえて、住宅ローンを使って購入した家を、住宅ローンの完済とともに新しい家に次々に住み替えていくことを「ヤドカリ戦略」というのです。

例を挙げると、最初は小さな区分マンションを購入し、そこで住宅ローン完済の目処が立ったら、区分マンションを賃貸に出します。その状態で戸建てを購入すれば、戸建ての自宅を持ちながら、区分マンションの賃貸収入が得られるのです。

戸建ての住宅ローンを完済したら、次はもっと大きな戸建てや大型マンション物件などを購入し、区分マンションと戸建ての家賃収入を得ていきます。

ヤドカリ戦略のフロー

ヤドカリ戦略のフローを具体的に説明していくと、まず一つ目の物件は、比較的価格の安い小さな物件を購入していく人が多いです。

それはなぜかと言うと、ヤドカリ戦略は時間がかかる不動産投資になるので、1つ目で高額な物件を購入すると、完済に時間がかかってしまうからです。特に若いうちは収入も少なく、用意できる頭金もそれほどないので、住宅ローンを利用して物件を購入するとしても、1000万円前後のかなり安い物件になるでしょう。単身用、もしくは夫婦で住める程度の物件を購入することから始める人が多いです。

しかし若いうちからヤドカリ戦略を始めるために物件を購入しておけば、後々に大きなメリットになってきます。

家を買うタイミングとして、一般的には子供ができて大きな家に住みかえる必要が出てくるとして、出産を待ってから購入する人が多くなっています。子供ができる前は夫婦2馬力で貯金ができるタイミングとはよくいますが、実際にこのタイミングで常に家を買っておいた方が良いのです。

なぜなら、夫婦2馬力で賃貸に住みながら住宅購入のための貯金をしていると、結局は家賃と、将来の住宅用の頭金としてプールするお金で、二重の住居費が発生しています。

しかし1000万円程度の物件であれば、頭金がそれほどなくても夫婦2馬力の収入があれば若くても十分に融資を受けて購入が可能です。早めに物件を購入してしまえば、毎月の家賃を支払うこともなく、それまで貯金していた分をそのまま毎月のローン返済にプラスすることが出来ます。

そして家賃として払っていた分は、繰り上げ返済としてどんどん住宅ローンを返していくことを可能になるのです。
つまり二重に支払っていた住宅費を使って2倍の速さでローンを完済していくという方針に変えられるのです。

家賃(8万)+貯金(10万)=住居費18万を

全てローン返済(18万)にしてしまえば、数年で小さなマンションを自分たちのものにできるのです。

そして2つ目の物件を購入するときは、1つ目よりもやや大きな家を購入します。その際には最初の住宅ローンは既に完済しているはずですから、1つ目の物件の家賃収入は、まるまる自分たちの不動産投資用の資金になります。
2つ目の物件の住宅ローン返済は自分たちの普段の給料から返済して、さらに1つ目の物件の家賃収入も同時にローン返済にまわしていきましょう。
そうすれば2つ目の物件も、普通に返済するよりもスピーディーに返済していくことができます。

2つ目の物件のローンを完済し終わったら、次は3つ目の物件を購入します。この時にはローンを完済している2物件分の賃貸収入を3つ目の物件ローン返済にまわしていけます。

初めての購入の際は収入が少なく、不動産収入もないために住宅ローン返済に時間かかるので安めの物件を購入しなければいけませんが、2つ目の物件からは家賃収入が入るので1つ目より早く住宅ローンを完済できる上に、3つ目では大きく収入が増えます。
最初は返済に苦労する代わりに、物件が増えていけばどんどん住宅ローンの返済は楽になり、同時に収入も増えていくのですます。そのため、できるだけヤドカリ戦略は若いうちから始めたほうが良い投資手法となっているのです。
フロー

三つ目の物件まで、1LDKマンション、2LDKマンション、戸建てと住み替えていった場合のシミュレーションを提示します。2つしか物件を所有しないとしても、ヤドカリ投資を始めてから27年で、毎月20万円ほどの家賃収入が得られるようになります。

返済シミュレーション

ここでは1つ目の物件は5年、2目の物件は10年、3つ目の物件は12年で返済する想定になっています。定年を60と考えると、33歳までには始めたいものです。

ヤドカリ戦略のメリット

ではなぜこのヤドカリ戦略は、リスクが小さい不動産投資といえるのでしょうか。それは空室リスクなどを抑えられるからです。

ヤドカリ戦略は低リスクで自由な戦略が取れる

ヤドカリ戦略はまず自分が家を購入した物件のローンは完済し、そこで改めて不動産投資を始めるという流れになっています。無理な物件購入をしないのでリスクを避けられるのです。

1物件目のローンを返済したところで、初めて賃貸物件の入居者を募集します。そして入居者が確定したところで、自分たちの新しい家を探していけば、賃貸物件を買ったのに空室があって、ローンを返済できないという、いわゆる空室リスクがない状態で不動産投資を始めることができるのです。

2物件目、3物件目も同様で、入居者を確保した上で新しい家を探していけば、収入が確保できてない状況で、賃貸物件を始めるという、不動産投資の最も大きなリスクを避けることが可能なのです。

このような空室対策のしやすさが、ヤドカリ戦略の大きなメリットだと言えます。さらに賃貸に回す物件は住宅ローンを完済していることが前提ですから、毎月のローン返済がない状態で所有することになります。

そのため運用コストとしては、固定資産税程度しかありません。住宅ローンは基本的に二重での融資が受けられませんし、アパートローンも利用しないので、過剰なローン返済もなく、返済リスクも抑えられます。さらに1物件目の賃貸状況が悪くなってきたら、ローン残債もないので自由に売却できます。

このように

  • 二重ローンを使わない
  • 入居者が確定した上で賃貸に出す
  • ローン完済の上で賃貸に出すので、入居者がいなければ自由に売れる

といった取り組みで大幅に空室、返済の2大リスクを抑えられるのです。

ヤドカリ戦略は住宅ローンが利用できる

さらに融資の上でもヤドカリ戦略には大きなメリットがあります。それは住宅ローンが利用できるというところです。住宅ローンは不動産投資物件を購入するためのアパートローンよりもはるかに金利が安いのです。

空前の低金利である現在の状況ならば、変動金利の住宅ローンの融資は、0.5%前後の条件ということも多いです。変動金利なのでその後金利見直しのタイミングで金利が上昇する可能性も高いですが、住宅ローン返済の金利負担分が大きなローン返済初期に低金利であることは、リスク軽減の上で大きなメリットと言えるでしょう。

一方、アパートローンで融資を受けるとしたら安くても2.5%程度、金利が高ければ4%や5%ということもあります。

投資物件用に2000万円の融資を受けた場合でも住宅ローンとアパートローンでは以下のように非常に大きな差が出てきます。

2000万円の融資を受けた際の毎月返済額

住宅ローン アパートローン
金利 1.1% 2.5%
返済期間10年 176,077円 188,539円
返済期間20年 92,873円 105,980円
返済期間30年 65,250円 返済期間設定が難しい

住宅ローンを利用できれば返済期間も35年まで伸ばせるので、結果的に毎月の返済負担額は小さくなります。
住宅ローン・控除

ヤドカリ戦略のメリット住宅ローン控除も利用できる

ヤドカリ戦略は住宅ローンを用いるため、新築や築浅物件を住宅ローンで購入すれば住宅ローン控除の利用も可能になります。

住宅ローン控除を使えば毎年の所得税対象所得から最大で年間40万円も控除を受けられます。その他にも新築物件を買えば固定資産税の優遇などの措置もあるので、税金的に様々な控除が利用できます。

ヤドカリ戦略のデメリット

一方でヤドカリ戦略にもデメリットがないわけではありません。一般的にリスクが少ない投資手法はリターンも少ないと言われます。ヤドカリ戦略のデメリットやリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。

急激な資産拡大には向かない

ヤドカリ戦略は先のシミュレーションで示したように、大変時間のかかる投資手法になっています。不動産投資で利益を上げていきたい人はヤドカリ戦略のように先の長い戦略を採るのではではなく、積極的に金融機関から所有物件を担保に融資を受けて、レバレッジをかけて不動産物件を次々に購入していくという人もいます。不動産投資だけで生計を立てていくのでしたら、不動産による収益を増やさなければいけないのでこのような戦略を取らざるを得ません。

ヤドカリ戦略はまとまった家賃収入を得られるまでには、10年15年といった時間をかける必要があります。それだけに若いうちから物件の購入を始めなければいけませんし、不動産投資の収入だけで食べていくのは難しいでしょう。

そのためヤドカリ戦略自体は、不動産投資を副業と考えて、サラリーマンとして本業の収入がある人向けと言えます。そういった方にとっては、リスクを抑えながら生活を楽にするための余剰収入をヤドカリ戦略で得ることで生活に余裕を生み出せるのです。
サラリーマン向け

金融機関に対するリスク

ヤドカリ戦略をとる場合は色々な金融機関を利用しなければいけないときがあります。一つ目の物件を購入したときと二つ目の物件を購入した時では別々の金融機関に融資を受けなければいけない時もあります。一つ目の物件のローンを完済したばかりなのに、またすぐに別の物件を購入したいという時はその事情を色々金融機関の担当者に説明しなければいけない時もあるでしょう。

不動産投資とは、とにかく融資が肝になってくるので有利な条件で融資を受けられるように工夫をしなければいけません。融資の借り換えをすることで、最終的な返済額を軽減できるのでしたら状況の変化を見ながら迅速にそういった施策も検討しなければいけません。その意味では融資に関して、手間と労力を惜しんではいけないと言えるでしょう。

もし大きな金融機関や融資条件の良いネットバンクから借りられない時は、やや条件の悪い金融機関から融資を受けなければいけない時もあります。ヤドカリ戦略は、とにかく自分が利用できる金融機関を探していかなければいけないので、場合によっては金利面、返済面の条件が悪くなるリスクを抱えることもあるでしょう。住宅ローンの融資は物件の評価額や収益性ではなく、債務者の収入の確実さが重視されるので、ヤドカリ戦略を採るからといって本業の仕事をおろそかにするのではなく、本業でもしっかり年収をアップしていくことも念頭に置きましょう。

また、1件目を返済しないまま2件目の住宅ローンを組む場合には1件目の貸しはがしに合うというリスクもはらんでいます。
貸しはがし

債務超過状態になりやすい

ヤドカリ戦略を採るということは、今住んでいる物件はいずれ賃貸に出すことになります。そうなると自分たちが一定期間住んだ後に他人に済んでしてもらうことになるので、極力物件を購入する時には新築の物件を購入した方が良いです。そうしないと自分たちが退去して他人に貸し出すときに設備が老朽化していたり、築年数が古くなることもあります。その状態では賃貸物件としての魅力がなくなり、客付けにも苦労をしますし、リフォーム費用がかかることになります。

ただし新築の物件は当然ですが中古物件よりも価格が高いです。住宅ローンを利用して物件を購入した場合でも、新築から中古になった途端にすぐに資産としての評価額が減少してしまいます。

例えば一つ目の物件として、2200万円の新築物件を2000万円の融資を受けて購入したとします。物件価格の評価額は、購入したとたんに1割以上目減りするので、評価額が1900万ほどになってしまうことが考えられます。しかしその時点で住宅ローンの残債は2,000万円以上ありますし、金利分を考えれば総返済額は2500万円以上でしょう。

つまり自分たちの資産に対して負債が多いという債務超過状態に陥りやすいのです。

もちろんしっかりと毎月の給与収入から住宅ローンを返済していければ、そのうち住宅ローンの残債も減っていくので債務超過崩壊状態から脱することができます。即ち自己資金がなく、融資に頼る状態で新築物件を買うと、債務超過というリスクが発生するのです。債務超過の状態でも住宅ローンの返済が滞ってしまうと任意売却や競売にかけたりしなければいけないこともあります。

超過債務

そうなると自宅を手放した上で毎月の残債の返済をしなければいけませんので、さらに生活が苦しくなります。多少のリスクを取って自己資金が少ない状態で住宅を積極的に買っていくヤドカリ戦略をとるのか、それとも自己資金をある程度用意した状態で債務超過に陥らないような、融資額で余裕のあるヤドカリ戦略を採っていくのか。自分が投資に求めるスピード感で戦略も変わってきますが、少なくとも初めての不動産投資になる2つ目の物件を購入する時は、債務超過を避けた方が良いと言えるでしょう。

2物件目の融資(住宅ローン)を受けることは可能なのか

ヤドカリ戦略が住宅ローンを利用することが肝になりますから、もし住宅ローンの融資を二重で受けられたら、その投資のスピードや効率もぐっとアップをします。しかし現実的に二重の住宅ローンを組むことは可能なのでしょうか。

個人の属性に大きく依存をする

住宅ローンはよく知られているように融資を受ける人の属性を見て、金融機関はどれぐらいの金額を融資するのか、この人には融資をしない方がいいのかとなどの判断を下します。

金融機関への信用性を高めるには

  1. 収入の高い勤務先に努める
  2. 倒産リスクのない企業に勤める(公務員や半官組織、大企業など)
  3. 一つの勤務先に長く勤める
  4. これまでに住宅クレジットカードの滞納がない、信用情報の基礎がない
  5. 年収に対して返済額が大きくない
  6. 物件運営で利益を積み上げてきた実績がある

といったポイントを稼がなくてはいけません。身も蓋もない言い方をすると、高収入で大きな企業に勤めていれば年収の何倍もの融資を受けることもできますし、年収が500万円あるような人に3000万円の融資であれば二頭目の住宅ローンが受けられることもあります。

つまりあなたの返済能力次第でのケースバイケースなのです。

ただしやはり二重住宅ローンというのは条件が悪くなる傾向にあります。少なくとも一つ目の物件の住宅ローンが2~3年以内に完済できるなど返済が間近であることが証明できないとなかなか、二つ目の物件の購入資金の融資も、金融機関からは審査がおりないでしょう。

セカンドハウスローンを組むことは可能

住宅ローンとは別に、セカンドハウスローンという融資商品を提供している金融機関もあります。これは別荘の購入に充てたり、地方から都会に進学する子供のために、その子供の住まいを購入するためなどに利用されます。フラット35でもセカンドハウスローンの融資をしているので比較的低い固定金利で、セカンドハウスローンの融資を受けられれば2つ目、3つ目の住宅の購入もグッと有利になるでしょう。

ただし、セカンドハウスローンはセカンドハウス自体を賃貸に出す名目では融資を受けられません。自分か親族などがそこに住む必要があります。2物件目は自分たちの住居用であり、住所を移した上で、一つ目の物件を賃貸に出すという方針を金融機関に説明し、セカンドハウスローンの申請を行いましょう。

2つ目のローン

返済に余裕がないうちは、二重ローンを組もうと思わないほうが良い

またセカンドハウスローンの融資条件は住宅ローンよりもずっと悪鋳物が多いです。金利で言えば、3%以上などアパートローン以上の水準になってしまいますし、返済期間もそれほど長くすることができません。

その意味では収入に余裕がないと大変リスクが大きいです。一つ目の物件の返済が終わってない状態で二つ目の物件を購入したい場合でも、返済によほどの余裕がある、空室がまず起きないといった状況でもない限りは、セカンドハウスローンの利用は避けた方が無難でしょう。三つ目の物件、四つ目の物件と実績を積み重ねていき資金でも余裕が出てきたうえで申し込みを検討した方が良いです。

まとめ

ヤドカリ戦略は着実に自分の所有する物件を増やし、それを賃貸に出していくという非常に手堅い投資戦略になっています。ヤドカリ戦略で資産を形成していくためには、数年といった短いスパンではなく、10年~20年、場合によってはそれ以上の長期戦略が必要となります。

もちろんヤドカリ戦略で資産形成をするためには、若いうちから物件を購入した方が後々に有利になりますし、若ければ返済期間を長くとることができます。すぐに本業不動産投資家になりたいという人には向いていませんが、堅実な職業に就いていて、夫婦共稼ぎで稼げる人ならば、ヤドカリ戦略には大きなメリットがあります。

副業としてヤドカリ戦略に取り組むことで、50代、60代以降の生活をもっと楽にできるでしょう。そのためには夫婦でしっかりと話しあい、お互い一つの目標に向かってヤドカリならぬオシドリのようにともに歩んでいきましょう。

おしどり

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もりお@不動産投資の森編集部

不動産投資の森の編集部。寄稿された投資家の記事を編集しています。

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