「相続をした収入物件を少しでも高く売りたい」
「投資用物件の売り時を見極めるポイントは?」
収入物件の売却には、住居用の不動産とは異なる専門知識が求められます。
では、どのような不動産会社に相談をしてどんな準備をしたらよいのでしょうか?
本記事では、収益物件と売却方法について、高く売却するコツから、かかる税金・費用、注意点までを解説しています。
最後まで読めば、不動産会社選びと売却計画のコツをおさえて、高値で収益物件を売却するための知識が得られます。
収益物件とは
収益物件を購入する際は、家賃収入に加えて、物件を売却した際の利益も考慮して投資するケースが一般的です。
収益物件は、主に以下のような種類に分類されます。
- 一戸建て、アパート、マンションなどの居住用不動産
- オフィスビルや事務所向けの商業用不動産
- 店舗やコンビニエンスストアが入るテナント用不動産
また、アパートやマンションでは、1室を所有する「区分所有」と、建物全体を所有する「一棟所有」の形態があります。
なお、これらの不動産は自ら住むためではなく収益を得る目的のため、購入時には住宅ローンではなく不動産投資ローンを活用します。
収益物件の売却方法
収益を目的とした不動産を売却する際には、仲介業者に依頼するのと買取業社に依頼するのと2つの方法があります。
それぞれの特徴を理解し、自分の状況に適した方法を選択することが重要です。
収益物件の売却方法:
- 仲介業者に依頼して売却する
- 買取業者に依頼する
仲介業者に依頼して売却する
仲介業者のサポートを受けて買主を探し、市場価格に近い価格で売却する方法があります。
この方法の主な特徴は次の通りです。
メリット:市場価格で売却できる可能性が高い。
デメリット:買主を探すために時間がかかることがある。
仲介での売却は、売却を急いでいない人や、少しでも高く売りたいと考えている人に適しています。
買取業者に依頼する
転売を目的とした仲介業者ではなくて、買取業者に直接物件を売却する方法があります。
この方法の主な特徴は次の通りです。
メリット:スピーディーに売却が完了する。
デメリット:売却価格が市場価格よりも低くなる傾向がある。
買取での売却は、売却価格が多少低くても早急に現金化したい人に向いています。
収益物件を高く売却するコツ
収益物件を高く売却するコツは次の通りです。
- 利回りを基準にして売り出し価格を決める
- 適切なタイミングで売却する
- 複数の不動産会社に査定依頼する
- 収益物件の売却が得意な不動産会社に依頼する
- 外国人投資家への売却も検討する
利回りを基準にして売り出し価格を決める
収益物件の購入者の多くは物件の利回りを重要視して検討するため、売却時には、利回りを基準に価格を設定することが重要です。
- 利回りを基準にする理由:収益性が投資家の判断材料となるため。
- 注意点:相場の正確な把握や適正な価格設定は難しい場合があります。
不動産会社に査定を依頼し、プロの意見を参考に価格を決定することで、売却の成功率を高めることができます。
適切なタイミングで売却する
収益物件を高く売却するには、適切なタイミングで売却することが非常に重要です。
- 高値で売却するコツ:地価の上昇や税制の変更に合わせて売却することで、相場より高く売れる可能性が高まります。
- 費用を抑えるメリット:適切な時期を選ぶことで、税金や諸経費を削減できる場合もあります。
日ごろから地価や税制の動向をチェックし、計画的に売却時期を設定しておくことがポイントです。
満室になっているタイミング
満室になっているタイミングは、買主にとって魅力的で、早期に売却できる可能性があります。
入居者が全て埋まっている状態で売却すると、購入者がすぐに安定した家賃収入を得られるため成約率が高まります。
逆に、空室が目立つ状態の場合は、買主も入居者を見つけて契約するのに時間がかかる可能性があり、敬遠されがちです。
所有期間が5年を超えるタイミング
所有期間が5年を超えると税負担を軽減できるため、実際の収益が増加します。
不動産を5年以上所有すると、譲渡所得税の税率が軽減します。
所有期間 | 譲渡所得税の税率 |
5年未満(短期譲渡) | 39.63% |
5年以上(長期譲渡) | 20.315% |
これにより、売却後の手元に残る金額が増加します。
大規模修繕工事が始まる前のタイミング
大規模修繕が始まる前のタイミングだと、工事にかかる出費を抑えられるため、利益を最大化できます。
マンションなどの大規模修繕工事は、多額の修繕費用が発生する場合があります。
建物の外壁塗装や設備のメンテナンスを含む大規模修繕工事が必要になる前に売却を検討することで、修繕の経費を削減することができます。
築年数が経過するとともに建物が劣化し、費用が増加しやすいです。
特に、修繕工事の費用が売却で得られる利益を上回る場合には、工事を実施する前に物件を売却することで、コスト負担を軽減できるかもしれません。
減価償却が終了する前のタイミング
減価償却費を経費として計上できる期間内に売却することで、税金の負担を抑えることができます。
減価償却とは:
固定資産の購入費用を、その耐用年数の期間内で分割して経費として計上することで、資産の価値が徐々に減少していくことを反映。
固定資産を経費として計上できるのは、法定耐用年数内に限られています。
法定耐用年数に基づいて減価償却を行うことで、毎年の税務申告で節税ができます。
法定耐用年数とは:
税法上で定められた固定資産の使用可能な期間のことで、具体的には資産が経済的価値を提供するとみなされる期間を指す。
日本では、国税庁が「耐用年数表」としてこの期間を規定。
耐用年数は、資産の種類や構造、用途によって異なる。
特に以下の法定耐用年数に注意が必要です。
構造 | 法定耐用年数 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
木造 | 22年 |
減価償却費を経費として計上することができなくなる前に売却をすることで、収益を効率的に確保できます。
周辺相場が上昇しているタイミング
地価の上昇や景気の回復時には、物件の売却価格が高騰するため、利益を最大化しやすくなります。
できるものならこのタイミングで、相場よりも高値で売却するのがよいでしょう。
普段から地価や景気の回復をチェックしておくことと、査定時に不動産会社に確認することを必ずしましょう。
ローン金利が低いタイミング
低金利によってローン返済の負担を軽減することができるため、購入希望者が増加し、競争が激化するため高値で売却できる可能性が高いです。
需要が高まると、価格交渉の場面でも売主に有利な条件を引き出しやすくなりますね。
2023年7月に、日銀は「長期金利上昇容認の政策変更」をして、長期金利の上限を「0.5%から1%」に緩和する方針を示しました。
この動きにより長期金利はわずかに上昇傾向にありますが、2025年1月現在でも、歴史的な低金利状態は続いています。
最新の情報を確認しながら、売却の時期を検討しましょう。
複数の不動産会社に査定依頼する
不動産を売却する際には、複数、最低3社の不動産会社に査定依頼をして相場と適正価格を判断しましょう。
<複数社に査定依頼するポイント・理由>
査定は複数社に依頼 | 価格に差が出るため、複数の意見を聞くことで相場を理解できる。 |
最低3社を目安に | 比較対象を増やし、正確な判断材料を得る。 |
サービス内容も重要 | サポートの充実度や担当者との信頼関係も売却をスムーズに進めるポイント。 |
会社ごとに提示される査定価格が異なるため、1社だけに依頼した場合、その価格が適正かどうか判断は難しいです。
少なくとも3社以上に査定を依頼し、それぞれが提示する価格を比較することで、物件の相場を把握できます。
また、査定価格だけでなく、各不動産会社のサービス内容や担当者との相性も考慮することが成功のカギです。
収益物件の売却が得意な不動産会社に依頼する
収益物件の取引には、収支計算や税務処理、賃貸借契約の引継ぎなどの専門知識が求められるため、収益物件の売却に特化した不動産会社を選ぶことです。
<収益物件に特化した会社を選ぶポイント・理由>
専門知識が重要 | 収支計算や賃貸借契約の引継ぎなど、一般的な物件とは異なる知識が必要。 |
実績豊富な会社を選ぶ | 市場の動向を把握し、適切な売却アドバイスを受けられる。 |
全国的な対応力 | 地元だけでなく全国の投資家にアプローチできる会社を選ぶと効果的。 |
安心の取引 | 豊富なノウハウを持つ会社なら、スムーズで確実な売却が期待できる。 |
収益物件の売却実績が豊富な不動産会社であれば、適切な売却タイミングについてのアドバイスや市場動向に基づいた的確な提案を受けられます。
また、豊富なノウハウを活用してスムーズな取引を進めることができるため、安心して依頼できます。
さらに、投資用物件の場合、購入希望者は地元だけでなく全国規模で存在します。そのため、必ずしも地域密着型の不動産会社が最適とは限りません。全国の投資家ネットワークに強い不動産会社を選ぶことで、より多くの購入希望者に物件をアピールすることが可能です。
外国人投資家への売却も検討する
投資用物件を売却する際は、中国人をはじめ海外の投資家への売却も視野に入れることをおすすめします。
特に、中国や台湾をはじめとするアジア圏の投資家は、日本の不動産市場に高い関心を持っていて、魅力的な条件で購入してくれる可能性が高いです。
これは、アジアの多くの地域において収益物件の利回りが日本よりも低い傾向があるためです。
そのため、日本国内、特に都内の物件は、安定した収益性と魅力的な資産価値から、アジアの投資家の間で人気があります。
日本人に限定せず、外国人投資家もターゲットに含めることで、売却の可能性を広げ、高値で取引できるチャンスが高まるでしょう。
収益物件を売却する際にかかる税金・費用
収益物件を売却する際にかかる税金・費用は主に以下の通りです。
- 譲渡所得税
- 登記費用
- 印紙税
- 仲介手数料
- その他(ハウスクリーニング・解体・土地測量)の費用
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に課される税金のことです。
この譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 売却価格 – 取得費用 – 譲渡費用
この税金の税率は、所有期間の長短によって異なり、5年を基準に税率が大きく変化します。
所有期間の判定は、取得日から売却した年の1月1日までの期間を基準とします。
<譲渡所得税の税率>
譲渡所得税の種類 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計税率 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 5% | 5% | 0.315% | 20.315% |
登記費用
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合、抵当権抹消の登記費用が必要になります。
抵当権抹消登記とは:
抵当権とは、不動産を「担保」と設定することで、債権者(たとえば銀行)が貸したお金を優先的に回収する権利を確保する仕組みのこと。不動産を売却する際は、この抵当権を抹消する手続きが求められる。
抵当権の抹消手続きは通常、専門知識を必要とするため、司法書士に依頼することが一般的。
抵当権抹消に関連する費用は、主に以下の2種類です。
項目 | 費用内容 |
登録免許税 | 不動産1件につき1,000円が課税されます。 |
司法書士手数料 | 地域や依頼先によって異なりますが、1~3万円程度が相場です。 |
司法書士の費用は事前に見積もりを確認し、比較検討するのがおすすめです。
ローンの一括返済手数料
投資用不動産に未払いのローンがある場合、売却時には全額を返済する必要があります。
この返済手続きに際して、金融機関への手数料が発生します。
手数料の金額は金融機関ごとに異なりますが、一般的には5,000円から3万円程度が相場となっています。
印紙税
不動産の売買契約書は、課税対象となる文書の一つで、契約書には収入印紙を貼付する必要があります。
この印紙税は、契約書に記載される売買代金の金額によって異なります。
以下の表で、契約金額ごとの印紙税の本則税率と、軽減税率(※)を比較して説明します。
<印紙税額一覧表>
契約書に記載する売買金額 | 本則税率 | 軽減税率(※) |
1万円未満 | 200円 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
金額の記載がないもの | 200円 | 200円 |
軽減税率は2014年4月1日から2027年3月31日まで適用されます。
この期間中に作成される不動産売買契約書に対しては、軽減税率が適用されるため、通常の印紙税よりも負担を抑えることが可能です。
※軽減税率は、売買契約書の課税額を一時的に引き下げる制度で、2027年3月31日までの適用が予定されています。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産取引を仲介した不動産会社(宅地建物取引業者)に支払う手数料のことです。
不動産会社が受け取る手数料には、上限が設けられています。
取引額に基づいた仲介手数料の計算方法は以下の通りです。
<取引額ごとの仲介手数料>
取引額 | 仲介手数料(別途消費税) |
200万円以下 | 取引額 × 5% |
200万円超から400万円以下 | 取引額 × 4% + 2万円 |
400万円超 | 取引額 × 3% + 6万円 |
仲介手数料には消費税が別途加算されるため、最終的な支払額はこれらの金額に消費税が加算されます。
その他の費用
収益物件の売却に際して発生する可能性のある費用には、以下のようなものがあります。
- ハウスクリーニング費用
- 解体費用
- 土地測量費用
収益物件を売却する際には、これらの費用や税金が発生する可能性があるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
収益物件を売却する際の注意点
収益物件を売却する際には以下の4点を心得ておきましょう。
- 現金化するまでに時間がかかる
- オーナーチェンジ物件はトラブルになる可能性がある
- 売却するタイミングは慎重に見極める
- 資金計画を立てておく
現金化するまでに時間がかかる
収益物件の売却を決定してから現金化するまでには、通常数ヶ月を要します。
一般的に、売却プロセスには約3〜6ヶ月かかることが多いです。
条件やタイミングによっては、さらに時間がかかる場合もあるため、売却のスケジュールには十分な余裕を持つことが重要です。
オーナーチェンジ物件はトラブルになる可能性がある
オーナーチェンジ物件は、すでに借主が入居している収益物件を指します。
購入者は、物件内見をせずに購入することが一般的です。
これにより、売却後に不具合が発見される可能性があり、トラブルが生じることもあります。
売主は、契約不適合責任を負うため、売却後に発覚した不具合に対して、買主から修繕や損害賠償、契約解除を求められる可能性があります。
そのため、オーナーチェンジ物件を売却する際には、買主が内見できない部分について、売主の契約不適合責任を免除する契約を結ぶことが推奨されます。
売却するタイミングは慎重に見極める
収益物件の所有年数や売却時の市況によっては、思わぬ損失を出す可能性もあります。
たとえば、不動産市場が不況に陥っているときには、購入価格よりも低い価格で売却せざるを得ない場合があります。
また、物件の築年数が大幅に経過した後に売ると、価値が大きく下がっていることが多いため、損失を出すリスクが高まります。
資金計画を立てておく
収益物件を手放すことにより、定期的な収益(家賃収入)が得られなくなります。
この影響で生活に困らないように、物件を売却する前に十分な資金計画を立てることが重要です。
まとめ
- 収益物件を購入する際は、家賃収入に加えて、物件を売却した際の利益も考慮して投資するケースが一般的。
- 収益を目的とした不動産を売却する際には、仲介業者に依頼するのと買取業社に依頼するのと2つの方法がある。
- 高く売却するには、3社以上に査定依頼、海外の投資家への売却も視野に入れて、知識・実績を豊富に持つ不動産屋さんに相談をすることが重要。
- 売却する際には、譲渡所得税、登記費用、印紙税、仲介手数料、ハウスクリーニング代、解体費、土地測量費などがかかる。
- 収益物件は現金化するまでに時間を要し、売却の時期により損益が変動し、オーナーチェンジ物件の契約不適合責任問題や家賃収入がなくなることなどを考慮し、計画的に進めること。
収益物件の概要と売却方法、高く売るためにおさえるべきポイント、必要経費、よく発生する問題についてを解説しました。
ポイントをおさえて、計画的に準備をすることで、収益物件のよい売却ができます!
記事を参考に、最適な不動産会社を見つけるところからスタートしましょう。