こんにちは。
仙台で小さなアパートを経営しているhayasakaです。
不動産投資では、いかに安く物件を入手するかが非常に重要なポイントとなります。
物件が安ければ安いほど、自己資金の割合が高まり、ローンの返済比率を抑えられることから、少々の空室や家賃低下にも耐えられるからです。
しかし、不動産には掘り出し物はないと言われる通り、安い物件は立地環境の問題や、建物の老朽化などの問題を抱えている場合がほとんど。
そんな中、立地環境が申し分なく、建物も比較的新しいのに格安な物件が売りに出されていることがあります。
備考欄に「告知事項あり」と明記されているような物件です。
今回は、この「告知事項あり物件」の概要や注意点を掘り下げたいと思います。
今回も、落語風の問答にしてみましたので気軽に読んでください。
ご隠居:アパート投資に明るい、横丁の物知りご隠居
熊さん:大家さん稼業を夢見る少しだけテンネンな大工さん
【ご隠居と熊さんの不動産投資珍問答】
「告知事項あり物件」は福の神か、貧乏神か?
目次
「告知事項あり」とは
“告知事項あり”に該当する物件
ガラッ!
ご、ご隠居!
つつ、遂に、掘り出しもんの物件を見つけたぜ!!
またかい?熊さん。
“不動産に掘り出し物なし”と何度も言っているのに、懲りない人だねぇ…
それがあったんだよ!
見てくれこの物件広告を。
四谷でこの値段だ、相場よりかなり安い!
どれ見せておくれ。
…ふむふむ。
なるほど、確かにこれは破格の安さだ。
だろ?
いや~、遂においらにも運が向いてきたってこった、がっはっは!
だが、熊さん、ここに『告知事項あり』と書いてある。
これが安い理由だろうな。
なんだい、その告知事項ってのは?
呆れたねぇ…。
平たく言えば『訳あり物件』ということだ。
心理的瑕疵の意味
なんでぇ訳ありって。
こちとら江戸っ子でぇ、物事はスパッと言ってくれ!
いいかい、熊さんなら殺人事件が起きた賃貸物件に住みたいと思うかい?
さ、殺人事件!?
ま、まっぴらごめんだ!
お化けなんざ、かかぁの100倍怖い!
そうだろう。
多くの人は、人が死んだ不動産を嫌う。
このような多くの人に嫌われる欠点を『心理的瑕疵』というのじゃ。
心理的菓子?
菓子じゃなく、瑕疵。
心理的な欠点を抱えている物件のことを瑕疵物件というんだ。
多くの人が不安や不快感を覚え、入居をためらう可能性がある事項は、売主が契約書を交わす前にきちんと伝えるよう法律で決められているのじゃ。
なるほど!
うちのかかぁも結婚前にやきもち焼きという欠点を言ってくれていたらなぁ…
やきもち焼きが欠点なんじゃなく、そりゃ熊さんの女癖が悪いからだろう。
いいかい、不動産取引では、例えば次のような取引物件の場合は、事前告知が必要と言われておる。
- 自殺や殺人が起きた
- 火事や事件で死亡者が出た
- 家で病死後、長期間発見されなかった
- 風俗店や暴力団事務所など、住宅以外に使用されていた
- 入居者から逮捕者が出た
要は、購入者や入居者が過去の事実を知った時に“それを知っていたら契約はしなかった”という事態に発展しかねない問題は事前に告知、説明しておくという考え方だな。
このような心理的瑕疵物件の事前告知を怠った場合は、瑕疵担保責任を追求でき、契約を白紙に戻せることになっているのじゃ。
なるほど。
確かに物件の心理的欠点を事前に教える仕組みは、買い手や借り手には安心だ。
しかし逆に言えば、土地所有者や大家にとっちゃ、たまったもんじゃないね。
一度事故物件になったら、収益力が吹き飛ぶってことだろ?
おや、地主や大家の視点で物事を見るようになったのは不動産投資家としては大変な進歩だね。
お上もその辺のことを配慮したんだろうか、実際には告知義務はあっても、ルールはかなりあいまいになっておる。
事故物件の告知義務と実際の運用
告知義務はあっても、ルールはあいまい?
なんだか頭がこんがらがって来たぞ…
先の例で言えば1.や2.は明らかな事故物件だが、3.以降は必ずしも事故物件とは言えない。
例えば3.の場合、マンションの一室で高齢者の孤独死というケースもあるな。
それが自然死なら事故物件とは言えないが、長期間発見されなかった場合や、自殺の疑いがある場合などは事故物件になることもある。
要するにケースバイケースで、統一されたルールにはなっていないのが現実なのじゃ。
つまり、明らかな事故物件以外は、告知するかどうかは仲介業者の胸先三寸ってことかい?
胸先三寸というほど適当ではないが、地域によっても告知すべき期間が変わってくることは現実にある。
例えば、アパートで殺人事件が起きたとする。
住人の入れ替わりが激しい都市部では数年でその事件を知っている人がいなくなるのに対し、田舎では何十年も地域の話題として残る。
だから、物件状況報告書で事前告知すべき期間も都市部は短く、田舎は長くなるのは当然なことなのじゃ。
そういうことか。
事故物件の場合もケースバイケースなのかい?
事故物件の場合は、次の購入者や入居者に告知すれば、その次の入居者には告知しなくて良い、という判例が基準になっているようじゃ。
と、いうことは一旦安く入居してもらい、次から相場の家賃に戻すことも可能ってことかい?
そうなるな。
だから、あえて格安の事故物件を手に入れるという不動産会社や不動産投資家もいるにはいる。
告知事項ありの物件はお得?
告知事項あり物件を売買する際の注意点
つまり、事故物件を安く買って一度だけ格安で貸し出し、その後は相場で家賃収入を得ようって腹だな?
そうだ。
短期間に入居者が入れ替わるような物件なら、そのぐらいのリスクを取る価値はある。
物件が安ければ、少々家賃を引き下げてもソロバンが合うってぇわけだ。
訳あり物件もうまく使えば福の神になるってことだな。
しかし、注意点もあるぞ。
まず、事件によっては遺体の強烈な臭いや跡が残っている場合がある。
また、感染性の病気で亡くなった場合は入居者が感染する恐れもある。
これらを完全に取り去るには専門家に依頼するか、大幅なリフォームや設備投資が必要になる場合があるのじゃ。
少々安くても、リフォーム費用で吹き飛ぶような物件ならダメだってこったな?
それに、次の不動産売却も簡単ではなくなる。
事故の記憶が消えないうちは、次に売ろうとしたときも“告知事項あり物件”となり、相場よりも安く取引される可能性があるからじゃ。
特に、人口減少・家余り時代に突き進むこれからは、このような“訳あり物件”は真っ先に毛嫌いされる恐れがある。
二束三文どころか、無価値になる恐れすらある。
たとえ住宅ローンを組んで物件を購入しても、返済できずに任意売却する羽目になってしまう事もある。
む、無価値…
それじゃ福の神どころか、貧乏神だ。
とは言っても、 付帯設備表や物件状況確認書で問題のない物件はそれなりの価格になるので、資金力のない熊さんにはなかなか手が届かねぇ。
悩ましいことだね~
痛いところを突きやがる。
しかし、ご隠居の言うのももっともだ。
少々のリスクは取らねぇと、いつまでも不動産投資家になどなれやしねぇ。
よし肚を決めた。
ご隠居、告知あり物件を探すにはどうしたらいいんで?
告知事項あり物件を探すには
熊さんは『大島てる』を知っているかい?
そんな女、知らねぇなぁ。
女じゃあない。
なら、おかまか?
事故物件検索サイトの名前だ。
全国の事故物件情報を簡単に検索できる。
へー、そんなサイトを作ったのか。
とんだ物好きもいたもんだ。
相変わらず口が悪いねぇ…。
サイトをこしらえた人も代々大家さんでね、もともとは社内閲覧用に事故物件情報を集めたのが始まりだったそうだ。
今では全国の事故物件情報を、誰でも簡単に検索できるようになっておる。
なるほど。
地図の中の炎が上がっている部分をクリックすると、事故物件の場所とどんな事件・事故があったのかがわかるのか。
…それにしても、こんなにあるということ自体が驚きだ。
それだけ事故物件に遭遇する可能性があるというわけだな。
不動産投資家たるもの、事故物件に無頓着では居られないということが、これだけでも分かる。
なるほど。
しかし、このサイトは誰でも閲覧できるんだろ?てぇことは、入居希望者も見るってこったな。
だったら、いつまでたっても事故物件だったってことがバレバレになるんじゃねぇのかい?
さぁ、そこだ。
昔は、一度入居者が入れば、次からは普通の不動産として運用できていた。
しかし、このサイトができてからは、入居希望者や購入希望者が事故物件かどうか事前にチェックする。
てことは、事故物件は空室になるリスクが以前より増しているわけで、そういう意味でも事故物件に投資するのは、よくよく考えた方がいい時代と言えるだろうな。
不良な告知事項あり物件をつかまないために
なるほど、事故物件検索サイトに掲載されているような物件への投資はリスクが大きいのは分かった。
しかし事故物件以外の“訳あり物件”程度なら、案外掘り出し物が見つかるんじゃないかい?
そうだな。
しかし、海千山千の仲介業者や不動産業者も多いので、中古物件購入の場合には必ず『心理的瑕疵はありませんか』と不動産屋に念押しすることが大事だ。
つまり、仲介業者に“こいつは心理的瑕疵を知っているな”と察知させることで、包み隠さずに白状させると言うわけだな。
そうだ。
さらに、買い付け証明書の備考欄には『心理的瑕疵のないこと』という条件を加えておけば万全じゃ。
なるほど、今日はいいことを聞いた。
心理的瑕疵か…平たく言やぁ、心理的な欠点ということだったな。
ならばご隠居のケチは、心理的瑕疵だ。
まとめ
相場よりも安い物件の中には“告知事項あり”という物件が含まれています。
事件・事故・自殺などで死亡者が出た物件は、人口減少・家余り時代の加速や事故物件検索サイトの登場などで、益々敬遠される恐れがあり、投資物件としては慎重な判断が必要です。
また、事故物件以外の“訳あり物件”についても、必ず心理的瑕疵がないか物件状況確認書を確認し、買い付け証明書などにも「心理的瑕疵がないこと」という条件を入れておくことが鉄則です。
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