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譲渡所得税の計算方法|ケース別にシミュレーション

投稿日:2024年10月31日 更新日:

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「不動産を売却したいけど、税金がいくらかかるのかわからない…」

「譲渡所得税の計算方法が複雑で、どうやって計算すればいいのか不安…」

 

結論から申し上げると、譲渡所得税は以下の基本式で計算できます。

譲渡所得税 = (売却価格 - 取得費 - 譲渡費用)× 税率

 

この計算式を理解し、適切な特例制度を活用すれば、余計な税負担を避けられます。

例えば、マイホームの売却では最大3,000万円の特別控除が適用できたり、所有期間が10年を超える場合は税率が軽減されたりします。

 

ただし、取得費の計算を間違えたり、使える特例を見落としたりすると、必要以上に税金を支払ってしまう可能性があるため注意が必要です。

そこでこの記事では、以下の内容について詳しく解説します。

  • 譲渡所得税の基本的な計算方法
  • 土地・建物別の取得費の計算方法
  • 4つのケース別の具体的な計算例
  • 税負担を抑える5つの特例制度

 

この記事を最後まで読むことで、不動産売却にかかる譲渡所得税を正確に把握でき、適切な特例制度を活用して税負担を最小限に抑えられます。

 

なお、弊社(株式会社 Alba Link )では不動産売却に関する無料相談を承っております。税金面での不安や質問がございましたら、まずは気軽にご相談ください。経験豊富な専門家が、お客様の状況に合わせて最適なアドバイスをさせていただきます。

譲渡所得税とは

譲渡所得税とは、不動産を売却したときに発生する所得税および住民税、復興特別所得税の税金の総称です。

不動産を売却すると、譲渡所得と呼ばれる売却益が生じ、これに応じて税金が発生するためです。この譲渡所得は、以下の計算式で表されます。

譲渡所得 = 譲渡価額(売却価額) - 取得費(土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額)- 譲渡費用(仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に要した費用)

譲渡所得に対する税金は、以下の計算式で求められます。

税金 = 譲渡所得 × 税率

具体的な税率は、所有期間によって以下のように異なります。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

なお、所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が加算されます。

不動産売却時の税金は、売却価額から取得費と諸経費を引いた利益に対して課税され、所有期間に応じた税率が適用されます。

譲渡所得の計算方法

不動産の譲渡所得を正確に計算するには、「収入金額」「取得費」「譲渡費用」「特別控除額」の4つの要素を把握する必要があります。

これらの要素は、以下の計算式で譲渡所得を算出するために不可欠だからです。

譲渡所得 = 収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

各要素を具体的に説明すると以下のとおりです。

収入金額 動産の純粋な売却額
契約時の手付金と残代金の合計額
取得費 その不動産の現時点での価値
土地:購入価格(手数料込)
建物:購入価格から減価償却費を控除した金額
譲渡費用 仲介手数料
印紙代
測量費
売却のための建物解体費 など
特別控除額 3,000万円特別控除
軽減税率の特例
空き家の特例 など

それぞれの要素を正確に把握し、上記の計算式に当てはめることで、課税対象となる譲渡所得を算出できます。

なお、譲渡所得がマイナス(譲渡損失)の場合は、課税対象外となります。

取得費とは

取得費とは、不動産の現時点での価値を表す金額です。

土地と建物では計算方法が異なります。

建物は経年劣化により価値が下がるため、購入時の価格から「償却費相当額」を差し引かなければなりません。

一方、土地は劣化の概念がないため、購入価格がそのまま取得費となります。

取得費の基本計算式は、以下のとおりです。

  • 土地の取得費 = 購入価格(手数料込)
  • 建物の取得費 = 購入価格 - 償却費相当額
  • 償却費相当額 = 建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

 

特殊なケースの取得費は、以下のように計算します。

  • 取得費不明の場合の取得費 = 売却価額 × 5%
  • 相続した不動産の取得費 = 通常の取得費 + 相続税額の一定金額

不動産の種類による取得費の計算のポイントをまとめると以下のとおりです。

不動産の種類 計算のポイント
土地 購入価格(手数料込)をそのまま使用
建物 経年劣化(償却費相当額)を考慮
取得価格不明 売却価額の5%で計算可能
相続物件 相続税額の一定金額を加算可能

取得費は譲渡所得税の計算で重要な要素です。

取得費が高いほど課税対象となる譲渡所得が少なくなるため、該当する特例があれば積極的に活用するようにしましょう。

譲渡費用とは

譲渡費用とは、不動産を売却する際に直接かかる費用の総称です。

不動産の売却では、仲介手数料などさまざまな費用がかかります。これらの費用は売却による利益を減らすため、税金の計算では控除対象となります。

ただし、すべてが譲渡費用に含まれるわけではなく、以下のとおり含まれる・含まれないを判断しなければなりません。

譲渡費用に含まれるもの 譲渡費用に含まれないもの
  • 仲介手数料
  • 印紙代
  • 測量費用
  • 土地売却のための建物解体費
  • 貸家売却時の借主への立退料
  • 借地売却時の地主への名義書換料
  • 売買契約書の作成費用
  • 所有権移転登記の費用
  • 居住期間中のリフォーム費用
  • 売主の引っ越し費用
  • 住宅ローンの抵当権抹消費用
  • 固定資産税
  • 不動産取得税

※土地の造成費用は譲渡費用ではなく、取得費として計算します。

譲渡費用は売却に直接関係する費用のみが対象となります。どの費用が控除できるのかを正しく理解したうえで計算する必要があります。

譲渡所得税額の計算方法

譲渡所得税額は、まず課税譲渡所得を算出し、そこに税率を掛けて計算します。
正確な税額を算出するために、以下の2つのステップで計算します。

  1. 譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)
  2. 課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除

各項目の説明は、以下のとおりです。

譲渡収入金額 土地・建物の譲渡代金
固定資産税・都市計画税の精算金
取得費 以下①②のうち大きい金額
①実額法:購入代金と取得費用の合計 - 減価償却費
②概算法:譲渡収入金額 × 5%
譲渡費用 売却のために直接かかった費用(仲介手数料など)
特別控除 居住用財産の3,000万円特別控除など

取得費は実額法と概算法のどちらか有利な方を選択できます。

また、該当する特別控除がある場合は、必ず適用を検討しましょう。

税率

不動産の譲渡所得に対する税率は、所有期間(長期・短期)と用途によって異なります。長期所有や自己居住用の場合は税率が優遇され、特に10年超の自己居住用物件は軽減が受けられます。

譲渡所得の税率をまとめると、以下のとおりです。

区分 所有期間 所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得 5年以下 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 5年超 15.315% 5% 20.315%
長期譲渡所得

(自己居住用)

10年超(6,000万円以下) 10.21% 4% 14.21%
長期譲渡所得

(自己居住用)

10年超(6,000万円超) 15.315% 5% 20.315%

※10年超所有の軽減税率は、住宅ローン控除との併用はできません。

税率は短期と長期で約2倍の差があります。特に自己居住用で10年超所有の物件は、6,000万円以下の部分に大きな軽減が受けられるため、売却時期の検討材料となります。

取得費と減価償却の4つのケース別のシミュレーション

 

新築・中古物件、古い空き家、そして土地の取得費が不明なケースの4つのパターンについて、取得費と減価償却の計算方法を見ていきましょう。それぞれのケースで減価償却費の計算式や取得費の算出方法が異なるため、具体的な計算例を通じてシミュレーションを行います。

新築のマイホームの取得費の計算方法

新築マイホームの取得費は、土地の購入価額と、減価償却費を控除した建物の価額の合計で計算します。建物は年数の経過とともに価値が下がるため、その減価分(減価償却費)を正確に計算する必要があります。

これにより、売却時点での適切な取得費を算出できます。

基本計算式は、以下のとおりです。

  • 減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
  • 取得費 = 土地購入価額 +(建物購入価額 - 減価償却費)

 

それでは、計算例を挙げて確認してみましょう。

計算例の条件は、以下のとおりです。

  • 物件:鉄筋コンクリート造マンション(償却率0.015)
  • 購入価額:4,500万円(土地1,500万円、建物3,000万円)
  • 経過年数:25年

 

まずは、減価償却費の計算をします。

  • 減価償却費 = 3,000万円 × 0.9 × 0.015 × 25年 = 1,012.5万円

次に、取得費を計算します。

  • 取得費 = 1,500万円 +(3,000万円 - 1,012.5万円) = 3,487.5万円

※経過年数は6ヶ月以上の端数は1年に切り上げ、6ヶ月未満は切り捨てで計算します。

このように、新築マイホームの取得費を計算する際は、建物の経年劣化による価値の低下を必ず考慮する必要があります。取得費は譲渡所得の計算に大きく影響するため、正確な計算が必要です。

中古のマイホームの取得費の計算方法

中古マイホームの取得費計算では、2段階の減価償却計算が必要です。まず購入時の建物価格を算出し、その後売却までの減価償却を計算します。

中古物件は土地と建物の価格内訳が不明確なことが多いため、標準的な建築価額表を用いて建物価格を算出する必要があります。

基本計算式は、以下のとおりです。

  • 新築時の建物価格 = 標準建築単価 × 建物面積
  • 購入時までの減価償却費 = 新築時建物価格 × 0.9 × 償却率 × 築年数
  • 購入時の建物価格 = 新築時建物価格 - 減価償却費
  • 売却時の減価償却費 = 購入時建物価格 × 0.9 × 償却率 × 所有年数
  • 取得費 = 土地価格 +(購入時建物価格 - 売却時の減価償却費)

それでは、計算例を挙げて確認してみましょう。計算例の条件は、以下のとおりです。

  • 物件:鉄筋コンクリート造マンション100㎡(償却率0.015)
  • 築年数:購入時30年
  • 所有期間:10年
  • 購入価格:2,500万円
  • 標準建築単価:150,000円/㎡(1980年)

 

まずは、購入時の建物価格を計算してみましょう。

  • 新築時の建物価格 = 150,000円/㎡ × 100㎡ = 1,500万円
  • 購入時までの減価償却費 = 1,500万円 × 0.9 × 0.015 × 30年 = 607.5万円
  • 購入時の建物価格 = 1,500万円 - 607.5万円 = 892.5万円
  • 土地価格 = 2,500万円 - 892.5万円 = 1,607.5万円

売却時の取得費を計算すると以下のとおりです。

  • 売却時の減価償却費 = 892.5万円 × 0.9 × 0.015 × 10年 = 120.5万円
  • 取得費 = 1,607.5万円 +(892.5万円 - 120.5万円)= 2,379.5万円

このように、中古物件の取得費計算は新築時からの2段階の減価償却計算が必要です。標準建築単価を使用すれば、建物価格が不明でも正確な取得費を算出できます。

築年数が古い空き家の取得費の計算方法

築年数が古い空き家の場合、減価償却費には上限があります。建物価値は際限なく下がるわけではなく、最低でも建物購入価額の5%は残る仕組みになっているからです。

そのため、まず減価償却費を計算し、その後で上限(建物購入価額の95%)と比較する必要があります。

基本計算式は、以下のとおりです。

  • 減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
  • 減価償却費の上限 = 建物購入価額 × 95%
  • 取得費 = 土地購入価額 +(建物購入価額 - 減価償却費)

 

それでは、計算例を挙げて確認してみましょう。計算例の条件は、以下のとおりです。

  • 物件:木造戸建て(償却率0.031)
  • 購入額:6,000万円(土地2,500万円、建物3,500万円)
  • 経過年数:35年

 

まずは、減価償却費を計算してみましょう。

  • 減価償却費 = 3,500万円 × 0.9 × 0.031 × 35年 = 3,422.25万円
  • 減価償却費の上限 = 3,500万円 × 95% = 3,325万円

→ 計算値の3,422.25万円が上限を超えているため、減価償却費は3,325万円となります。

取得費を計算すると以下のとおりです。

  • 取得費 = 2,500万円 +(3,500万円 - 3,325万円)= 2,675万円

このように、築年数が古い空き家の場合は、まず減価償却費が上限を超えていないか確認する必要があります。

土地だけ取得費が不明なときの取得費の計算方法

土地の取得費が不明な場合でも、建物の取得費が分かれば、取得費を算出できます。昔から所有している土地や相続した土地など、取得費が不明な場合は、譲渡価額から建物取得費を控除した金額の5%を土地の取得費として計算できます。

基本計算式は、以下のとおりです。

建物の減価償却費の計算

  • 減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
  • 建物取得費 = 建物購入価額 - 減価償却費

土地取得費の計算

  • 土地取得費 =(譲渡価額 - 建物取得費)× 5%

最終的な取得費の計算

  • 取得費 = 土地取得費 + 建物取得費

それでは、計算例を挙げて確認してみましょう。

計算例の条件は、以下のとおりです。

  • 物件:木造戸建て(償却率0.031)
  • 譲渡価額:5,000万円
  • 建物購入額:4,000万円
  • 土地購入額:不明
  • 経過年数:20年

 

基本計算式に当てはめて計算してみましょう。

建物取得費の計算

  • 減価償却費 = 4,000万円 × 0.9 × 0.031 × 20年 = 2,232万円
  • 建物取得費 = 4,000万円 - 2,232万円 = 1,768万円

土地取得費の計算

  • 土地取得費 =(5,000万円 - 1,768万円)× 5% = 161.6万円

取得費の計算

  • 取得費 = 161.6万円 + 1,768万円 = 1,929.6万円

このように、土地の取得費が不明な場合でも、建物の情報さえあれば概算での取得費計算が可能です。ただし、実際の取得費が判明している場合は、その金額を使用することが望ましいでしょう。

譲渡所得税額のシミュレーション

譲渡所得税額は、所得税・復興特別所得税・住民税の3つの税金を合算して計算します。譲渡所得に対する課税は、国税(所得税・復興特別所得税)と地方税(住民税)の両方が対象となります。

これらの税率は所有期間によって異なるため、段階的に計算することで正確な税額を把握できます。

具体的な計算方法を、長期譲渡所得のケースで見ていきましょう。

  • 譲渡所得:2,500万円
  • 所有期間:7年(長期譲渡所得)

上記の例で計算してみましょう。

まずは、所得税の計算から始めます。

  • 所得税 = 2,500万円 × 15% = 375万円

次に、復興所得税を計算します。

  • 復興特別所得税 = 375万円 × 2.1% = 7.875万円

住民税を計算すると以下のとおりです。

  • 住民税 = 2,500万円 × 5% = 125万円

税額の合計は、以下のとおりです。

  • 譲渡所得税額 = 375万円 + 7.875万円 + 125万円 = 507.875万円

このように、譲渡所得税は3種類の税金を段階的に計算することで求められます。

実際の売却時には、物件の査定額をもとに、この計算方法で税額を試算すると良いでしょう。特に、税率は所有期間や物件の用途によって変わるため、自身の状況に合った税率を適用してください。

マイホームを売却した場合に利用できる税金特例5選

マイホームを売却する際は、さまざまな税金の特例制度を利用すれば税負担を軽減できます。

マイホームの売却は一時的な所得であり、また生活基盤に関わる重要な取引であるため、税制上の優遇措置が設けられています。

主な特例制度は以下の5つです。

  • 3,000万円特別控除
  • 所有期間10年超の軽減税率の特例
  • 譲渡損失の買換え特例
  • 居住用財産の買換え特例
  • 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

 

これらの特例は条件を満たせば併用できるものもあり、適切に活用すれば節税効果が期待できます。それぞれの特例について詳しく解説していきます。

3,000万円特別控除

3,000万円特別控除は、マイホーム売却時の譲渡所得から3,000万円を控除できる特例制度です。

譲渡所得に対する税負担を軽減できる特例で、適用により譲渡所得がゼロ円になるケースもあります。

特例を適用するには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

居住中の物件の場合 現に居住している家屋
その家屋と一緒に譲渡する敷地
転居後の物件の場合 転居から3年後の12月31日までの譲渡
この期間中の貸付や事業利用も適用可能
災害で滅失した物件の場合 災害発生から3年を経過する日の属する年の12月31日までの敷地譲渡
転居後に取り壊した物件の場合 転居から3年後の12月31日まで
または取り壊し後1年以内
いずれか早い日までの譲渡
※取り壊し後の貸付や事業利用は適用外

引用:国税庁「マイホームを売ったときの特例

特例により譲渡所得がゼロ円となる場合でも、適用を受けるためには確定申告が必要です。要件を満たしているかどうか、事前によく確認しましょう。

所有期間10年超の軽減税率の特例

所有期間10年超の軽減税率の特例は、3,000万円特別控除後もなお譲渡所得がある場合に適用できる税率軽減制度です。

長期保有のマイホーム売却を優遇するため、通常の長期譲渡所得より低い税率が適用されます。

軽減税率の特例における税率は、以下のとおりです。

課税譲渡所得金額 所得税 住民税 合計税率
6,000万円以下の部分 10% 4% 14%
6,000万円超の部分 15% 5% 20%

引用:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例

この特例を利用するためには、マイホームの所有期間が10年を超えていることが必要です。なお、住宅ローン控除との併用はできませんので、どちらが有利か比較検討すると良いでしょう。

譲渡損失の買換え特例

譲渡損失の買換え特例は、マイホームの買い替え時に発生した譲渡損失を、給与所得などの他の所得と通算できる制度です。

住み替えで生じた損失を他の所得と相殺できることで、税金の還付を受けられる可能性があります。

損益通算の具体例をまとめると以下のとおりです。

項目 金額 備考
譲渡損失 ▲900万円 マイホーム売却による損失
給与所得 800万円 会社からの給与
損益通算後の所得 ▲100万円 両者を合算
源泉徴収税額 60万円 給与から徴収された税金
還付金額 60万円 全額還付を受けられる

引用:国税庁「マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

特例を使うには、以下のような要件があります。

  • 売却物件の所有期間が5年超
  • 新しい住宅の住宅ローン返済期間が10年以上
  • 譲渡契約した年の前年から翌年末までに買換え物件を取得
  • 買換え物件に実際に居住すること

この特例は、引っ越しを伴う住み替えで損失が出た場合の救済措置として有効です。要件を満たせば最大で3年間の繰越控除も可能なため、計画的な住み替えの際は積極的な活用を検討しましょう。

居住用財産の買換え特例

居住用財産の買換え特例は、住み替え時の譲渡益に対する課税を先送りできる制度です。

住み替えによって生じた譲渡益への課税を一時的に繰り延べることで、新しい住宅購入の負担を軽減できます。

売却した住宅(譲渡価額)と新しく購入した住宅(取得価額)の価格関係によって、課税の有無が以下のように決まります。

金額の関係 課税の扱い
譲渡価額 > 取得価額 差額分が課税対象
譲渡価額 ≦ 取得価額 全額課税繰延

例えば、4,000万円の家を売却して3,000万円の家を購入する場合は差額の1,000万円が課税対象となります。逆に4,000万円の家を売却して5,000万円の家を購入する場合は全額の課税が繰り延べられます。

注意点としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 課税が無くなるわけではなく、将来の売却時まで先送りされる
  • 3,000万円特別控除とは併用できない
  • 3,000万円特別控除は譲渡益を完全に課税対象外にできるため、通常はそちらが有利

この特例は課税の繰延べであって免除ではありません。

同じ住み替えでも3,000万円特別控除の方が税負担を完全に減らせるため、まずは3,000万円特別控除の適用を検討しましょう。

要件を満たさない場合の代替策として本特例の利用を考えることをおすすめします。

参照:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例

居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

いわゆる「オーバーローンの特例」は、住宅ローンの残債が売却額を上回る状況で家を売却する場合に、税金の還付を受けられる制度です。

マイホームを売却する際、住宅価格の下落によって売却額よりもローン残債が多い「オーバーローン」状態になることがあります。このような場合の経済的負担を軽減するために、この特例制度が設けられています。

具体的に、オーバーローンとはどのような状態なのか、例を見てみましょう。

住宅価格が下落し、以下のような状況になった場合

売却額:2,000万円

ローン残債:2,500万円

オーバーローン額 = ローン残債 - 売却額 = 2,500万円 - 2,000万円 = 500万円

この場合、売却しても500万円の借金が残ることになります。

この差額(オーバーローン額)について、税金の還付を受けることが可能です。

似たような制度に「譲渡損失の買換え特例」がありますが、以下の点で異なります。

項目 オーバーローンの特例 譲渡損失の買換え特例
買換えの要件 不要 必要
繰越控除限度額 オーバーローン額まで 譲渡損失額全額
適用判断 ローン残債>売却額の場合 買換えが確定している場合

もし買換えを予定している場合は、一般的に繰越控除限度額が大きい「譲渡損失の買換え特例」の方が有利です。一方、買換えの予定がない場合は、このオーバーローンの特例を活用することで、税負担を軽減できます。

特例の選択は、自身の状況に応じて判断しましょう。

まとめ

この記事では、不動産の譲渡所得税の計算方法と、マイホーム売却時に利用できる税金の特例制度について解説しました。

記事内でお伝えした通り、不動産売却時の譲渡所得税は、取得費の計算方法や適用できる特例制度によって変わってきます。誤った計算や特例の見落としは、余計な税負担につながる可能性があります。

しかし、基本的な計算方法を押さえ、自身の状況に合った特例制度を選択すれば、適切な税額計算が可能です。

特に重要なのは以下の3点です。

  • 取得費の正確な把握(土地・建物別の計算)
  • 所有期間による税率の確認(短期・長期の区分)
  • 適用可能な特例制度の検討(3,000万円特別控除など)

 

さらに、売却のタイミングや方法を工夫すれば、税負担を適切に抑えられます。

例えば、所有期間を10年超にすることで軽減税率が適用されたり、買換え時の特例を利用したりが可能です。

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