土地区画整理工事中に一時的に使用できる土地、仮換地(かりかんち)。
「仮換地を譲り受けたけど、どう扱えばいいの?」と悩んでいませんか?
- 仮換地と保留地の違いは?
- 権利移行のタイミングは?
- 税金への影響は?
- 売却のベストなタイミングは?
土地に関する手続きは複雑で、不安を感じる方も多いでしょう。
この記事を読めば、仮換地の基本から売却の注意点までを理解していただけます!
それでは、詳しく見ていきましょう。
目次
仮換地(かりかんち)とは
仮換地とは、区画整理の工事が終わるまでの間に使える仮の土地のことです。
これに対して、従前地(もともと持っていた土地)は使えなくなります。
最終的に、換地(正式に割り当てられた新しい土地)に権利が移ることで仮換地も役割を終えます。
通常、換地処分は区画整理事業が完了した後に行われます。
しかし、工事の完了までには長い時間がかかり、事業の開始からすべての手続きが終わるまで10年以上かかることもあります。
そこで、多くの場合、工事が完了した地区から順に仮換地を指定し、地権者がその土地を利用できるようにするのです。
これは、土地の所有者が長期間土地を利用できなくなることを防ぐための重要な措置です。
一般的に、仮換地は、最終的に正式な換地として確定します。
そのため、そこに建物を建てることも可能です。
たとえば、マイホームとして利用したり、不動産投資のための賃貸住宅を建設したりすることができます。
土地区画整理事業の9つの流れ
土地区画整理事業は、施行者によって具体的な手順が異なりますが、自治体や土地整理組合が実施する場合、おおまかな流れは以下のようになります。
ステップ | 内容 |
原案の作成・調査 | まちづくり協議会を通じて地権者や住民と協議し、測量や地質調査を実施したうえで事業の原案を作成。 |
都市計画の決定 | 施行地区を都市計画として定め、内容を公開し、公聴会を開催するなどして意見を募る。組合施行の場合、この手続きは任意。 |
事業計画の作成 | 資金計画、設計概要、スケジュールを含む具体的な事業計画を作成し、地権者に公開して意見を受け付ける。 |
換地設計 | 施行地区の土地評価を行い、整理後の土地の位置や形状を設計し、地権者に提示する。 |
仮換地の指定 | 換地設計に基づき仮換地を指定し、地権者へ通知する。 |
建築物の移転・除却 | 施行者が建築物の移転・除却のスケジュールを地権者に通知し、必要に応じて施行者が直接対応する。 |
換地処分 | 所有権移転や清算金の計画を定めたうえで換地処分を行い、地権者へ公開する。 |
登記 | 換地処分後に、施行者が土地区画整理登記の手続きを行う。 |
清算 | 換地処分による不均衡を調整するため、金銭の徴収や交付を行って清算する。 |
このようなプロセスを経ることで、区画整理事業は円滑に進められ、地域の整備が進行します。
保留地(ほりゅうち)との違い
保留地とは、区画整理によって新たに生まれた土地のうち、換地として割り当てられなかった部分を指します。
項目 | 仮換地 | 保留地 |
定義 | 区画整理事業中に一時的に指定される土地 | 換地として割り当てられなかった土地 |
目的 | 地権者が工事期間中も土地を利用できるようにする | 施行者が売却し、事業資金を調達するため |
地権者の権利 | 使用・収益が可能 | 施行者が管理・売却 |
減歩との関係 | 減歩後に指定される仮の土地 | 減歩によって生じた土地 |
区画整理事業では、地権者が元の土地(従前地)の一部を提供する「減歩(げんぶ)」という手法を用います。
その結果、新たに割り当てられる換地の面積は、従前地よりも小さくなるのが一般的です。
この減少した割合は「減歩率」と呼ばれます。
減歩は、道路や公園などの公共施設用地の確保だけでなく、保留地の確保のためにも行われます。
施行者は、保留地を売却することで区画整理事業の資金を調達し、地権者には清算金以外の金銭を請求しません。
このように、仮換地と保留地は異なる目的で扱われ、それぞれの役割を持っています。
仮換地・従前地の権利は段階的に移行する
仮換地の権利は、いくつかのステップを経て徐々に移行していきます。
土地には「所有権」と「使用収益権」の2種類があり、区画整理事業の進行によって、それぞれ異なるタイミングで移行する仕組みです。
事業が完了するまで、所有権は従前地(元の土地)に留まります。
そのため、仮換地が割り当てられても、その土地の所有権を持っているわけではないという点には注意が必要です。
一方で、使用収益権は事業の開始と同時に仮換地へ移るため、地権者は建物を建てるなどの活用が可能になります。
権利の種類 | 従前地(元の土地) | 仮換地 | 本換地 |
所有権 | 事業完了まで維持 | なし | 換地処分後に移行 |
使用収益権 | 事業開始時まで維持 | 事業開始と同時に移行 | 換地処分後に継続 |
この仕組みによって、工事中でも土地を利用できるメリットがありますが、権利の移行を正しく理解しておかないと、売却や税金の際に思わぬトラブルにつながるかもしれません。
仮換地が提供されると税金が高くなる可能性がある
土地区画整理事業が行われて仮換地の指定を受けると、道路や区画が整備され、土地の価値が上昇することがあります。
その結果、固定資産税や相続税などの税負担が増える可能性があるため、事前に把握しておくことが重要です。
実際に仮換地を持っている人の中には、「固定資産税が急に上がって驚いた!」という声もあります。
詳しくみていきましょう。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・建物を所有している人に課される地方税です。
税額は、市町村(東京23区は東京都)が決定した固定資産税評価額に基づいて計算されます。
自治体ごとに税率や特例措置が異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
仮換地に対する固定資産税は、多くの場合「みなし課税」が適用されます。
これは、仮換地の使用が認められている場合、登記の有無に関係なく課税される仕組みです。
税目 | 課税対象 | 税率 |
固定資産税 | 仮換地(みなし課税適用) | 1.4%(標準税率) |
都市計画税 | 仮換地 | 0.3%(上限) |
相続税
相続税は、亡くなった方の財産を相続した際に発生する税金で、相続財産の評価額が高いほど税額も増加します。
土地区画整理事業の進行状況によって、仮換地の評価方法が変わるため注意が必要です。
進捗状況 | 評価方法 |
仮換地指定なし | 従前地の価額を基準に評価 |
仮換地指定あり | 仮換地の価額を基準に評価 |
仮換地造成工事未実施 | 従前地の価額を基準に評価 |
仮換地造成工事中(完了まで1年以上) | 仮換地の価額 × 95% で評価 |
換地処分後 | 換地の価額を基準に評価 |
また、相続時に清算金の受け渡しが発生すると、税額にも影響するため、どのような計算方法になるのか把握しておくと安心です。
たとえば、相続する仮換地の評価額が 3,000万円 だったとします。
・もし 200万円の清算金を支払う(徴収される) 場合
→ 評価額は 3,000万円 − 200万円 = 2,800万円 になり、相続税の計算基準が下がる。
・もし 200万円の清算金を受け取る(交付される) 場合
→ 評価額は 3,000万円 + 200万円 = 3,200万円 になり、相続税の計算基準が上がる。
このように、清算金の受け渡しが土地の評価額に影響を与え、結果的に相続税額にも関係してくるということです。
【タイミング別】仮換地を売却する際の注意点4選
仮換地には所有権が発生しませんが、使用収益権を基に売却することは可能です。
一方で、売買契約書には従前地の情報を記載する必要があるため、契約内容をよく理解しておきましょう。
また、仮換地の売却価格は、土地区画整理事業の進行状況によって変動するため、最適なタイミングを見極めることが重要になります。
以下の4つの段階ごとに注意点を解説します。
進捗状況 | 売却時の注意点 |
都市計画決定前 | 通常の土地売買と同様に可能だが、区画整理計画の有無を確認する必要がある。 |
仮換地指定前 | 売却価格が低くなる傾向があり、買主もつきにくい。指定を待つのが得策。 |
仮換地指定後 | 売却活動がしやすくなるが、契約上は従前地の売却となる。清算金の有無を明確にすること。 |
換地処分後 | 土地評価額が最も高まり、売却に適した時期。ただし、用途制限の確認が必要。 |
区画整理事業の決定前
都市計画がまだ正式に決定していない段階では、通常の土地売却と同様に取引可能です。
ただし、区画整理事業の計画が進んでいる可能性があるため、重要事項説明書にその情報を記載する必要がある場合もあります。
いざ売却を考えても、「どこに相談すればいいの?」と悩む方も多いでしょう。
判断に迷った際は、不動産会社や専門家に相談すると良いでしょう。
仮換地に指定される前
仮換地が指定される前の段階では、売却価格が低くなる傾向があります。
この時点では、将来の換地面積が確定しておらず、土地の用途も制限されるため、評価額が上がりにくいのが要因です。
同じように仮換地を持っている方がどうしているのか、気になりますよね。
購入希望者も少ないため、可能であれば仮換地の指定を待つのが賢明です。
仮換地に指定された後
仮換地が正式に指定されると、売却がしやすくなります。
区画整理事業によるインフラ整備が進むことで、土地の価値が向上する可能性をアピールできます。
ただし、契約上は従前地の売却として扱われるため、登記手続きや換地処分後の清算金の有無についても買主に説明が必要です。
売却をスムーズに進めるために、自治体の窓口で発行される「仮換地指定証明書」を活用し、買主に土地の形状や面積に関する情報を提示すると良いでしょう。
換地処分が実施された後
換地処分が完了すると、土地の評価額が最も高くなり、買主も住宅建設の計画を立てやすくなります。
売却を急がない場合は、換地処分完了まで待つのが有利です。
ただし、新たな換地には用途制限が設けられる場合があるため、売却前に用途地域や制限事項を確認し、買主とのトラブルを避けるために十分な説明を行うことが重要です。
まとめ
- 仮換地は、土地区画整理工事中に一時的に使用できる土地のこと。
- 保留地は、一部の土地を換地として割り当てず、施行者が売却して事業資金に充てるための土地のこと。
- 権利は段階的に移行し、「使用収益権」は事業開始時に仮換地へ、「所有権」は換地処分完了後に移る。
- 仮換地には「みなし課税」が適用され、固定資産税や相続税の負担が増える可能性がある。
- 売却タイミングは慎重に判断し、可能なら換地処分完了まで待つのが有利。
仮換地は、区画整理事業の進行によって価値が変動するため、慎重に判断することが大切です。
「せっかくの土地を、できるだけ有利に売却したい」と考える方も多いでしょう。
「このまま持ち続けるべきか、今すぐ売るべきか...…」と決断に迷うのはよくあることです。
この記事を参考に、最適なタイミングを見極め、不動産会社や専門家に相談してみてください!