不動産を所有している人の中には、増改築を検討している人もいると思います。
増改築をする際に「建ぺい率」や「容積率」などという言葉を耳にしたことはないでしょうか。
建物を建てる場合、この建蔽率と容積率が重要になってきます。
これらの割合は「用途地域」によって異なるので、どのような地域があるのかについてもしっかりと理解しておく必要があります。
今回は、建ぺい率、容積率などといった建築の基礎知識や計算方法などを紹介します。
増築など検討している方は、当記事を参考にしてみてください。
目次
建ぺい率とは土地面積に対する建物面積の割合
建ぺい率とは、「不動産が建っている土地の面積」に対する「建物自体の面積」の割合のことです。
100㎡の土地に80㎡の建物が建っているとすると、建ぺい率は80%となります。
建ぺい率は行政によって決められ、地域ごとに制限されています。
その地域ごとで、建ぺい率を超える建物は建てられないというルールになっています。
例えば、その地区の建ぺい率が50%の場合は、土地に対して建物の面積が50%を超えるような建物は建築できません。
建ぺい率は用途地域によって決められており、大体30%〜80%の割合で決められています。
大体の場合は60%ほどの割合で建ぺい率が設定されていることが多いです。
用途地域別の建ぺい率の制限
「用途地域」とは、計画的に市街地にするべく「都市計画法」で定められている地域のことです。
13のエリアで設定されており、それぞれの地域が計画的に都市開発を行えるように区分けされているのです。
各用途地域と建ぺい率について解説していきます。
用途地域 | 用途内容 | 建ぺい率 |
第一種低層住居専用地域 | 低層住宅専用(高さ10~12m程度) | 30・40・50・60% |
第二種低層住居専用地域 | 低層住宅専用(小型店舗含む) | 30・40・50・60% |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅専用 | 30・40・50・60% |
第二種中高層住居専用地域 | 中高層住宅専用(店舗・事務所含む) | 30・40・50・60% |
第一種住居地域 | 住宅(小型店舗含む) | 60% |
第二種住居地域 | 住宅(店舗・事務所含まない) | 60% |
田園住居地域 | 住宅(農業の利便性を重視) | 30・40・50・60% |
準住居地域 | 住宅(道路や自動車関連施設の利便性を重視) | 60% |
近隣商業地域 | 商業施設(近隣住民の利便性を重視) | 80% |
商業地域 | ほぼすべての種類の建物(大型工場は含まない) | 80% |
準工業地域 | 工業施設(住宅や小型店舗含む) | 60% |
工業地域 | 工業施設(環境破壊の出る工場含む) | 60% |
工業専用地域 | 工業施設(住宅含まない) | 30・40・50・60% |
「用途地域」は上記のような13の地域となっており、それぞれで建ぺい率が異なります。
そのため、自分が住んでいるエリアはどの用途地域になるのかを知る必要があるのです。
全ての用途地域を把握する必要はありませんが、自分の住んでいるエリアの用途地域についてはしっかりと把握しておくようにしましょう。
容積率とは土地面積に対する延床面積の割合
容積率とは、建物が建っている「土地面積」に対する「延床面積」の割合のことです。
延床面積は、1階と2階の床面積の合計で算出されます。
例えば、土地面積が100㎡あったとします。
そこに1階が40㎡、2階が60㎡の延床面積の建物があった時、「容積率」は100%になるのです。
このように、「土地面積に対する延床面積」が「容積率」になります。
容積率は用途地域別に決められており、各地域で決められた範囲の建物しか建てることができません。
50%〜1000%の範囲で決められており、広い範囲で設定されています。
用途地域別の容積率の制限
各用途地域別の容積率の制限は以下のようになります。
用途地域 | 用途内容 | 建ぺい率 |
第一種低層住居専用地域 | 低層住宅専用(高さ10~12m程度) | 50・60・80・100・150・200% |
第二種低層住居専用地域 | 低層住宅専用(小型店舗含む) | 50・60・80・100・150・200% |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅専用 | 100・150・200・300% |
第二種中高層住居専用地域 | 中高層住宅専用(店舗・事務所含む) | 100・150・200・300% |
第一種住居地域 | 住宅(小型店舗含む) | 200・300・400% |
第二種住居地域 | 住宅(店舗・事務所含まない) | 200・300・400% |
田園住居地域 | 住宅(農業の利便性を重視) | 50・60・80・100・150・200% |
準住居地域 | 住宅(道路や自動車関連施設の利便性を重視) | 200・300・400% |
近隣商業地域 | 商業施設(近隣住民の利便性を重視) | 200・300・400% |
商業地域 | ほぼすべての種類の建物(大型工場は含まない) | 200・300・400・500・600・700・800・900・1000% |
準工業地域 | 工業施設(住宅や小型店舗含む) | 200・300・400% |
工業地域 | 工業施設(環境破壊の出る工場含む) | 200・300・400% |
工業専用地域 | 工業施設(住宅含まない) | 200・300・400% |
上記の13のエリアで容積率が決められています。
建ぺい率と同じく、エリアごとに割合が異なるので注意しましょう。
自分の所有している不動産がどの場所にあるのか、今一度確認してから増改築を検討してみてはいかがでしょうか。
建ぺい率・容積率を調べる方法
では、実際に建ぺい率と容積率を調べる方法はどのようなものがあるのでしょうか。
建ぺい率と容積率の調べ方を紹介していきます。
建ぺい率と容積率を調べる方法は、大きく分けて以下の2つです。
- 各自治体の「建築指導課」「都市計画課」に問い合わせる
- 建築業者・不動産業者・工務店などに問い合わせる
建ぺい率と容積率を調べる方法としてまず考えられるのは、各自治体の「建築指導課」「都市計画課」に問い合わせるという方法です。
建ぺい率と容積率は「13の用途地域」によって決められています。
各自治体で用途地域ごとの「建ぺい率」と「容積率」を取りまとめているため、担当の「建築指導課」または「都市計画課」に問い合わせると割合を調べることができます。
建ぺい率と容積率を調べるもう1つの方法は、建築業者・不動産業者・工務店などに問い合わせるということです。
不動産を取り扱っている業者なら建ぺい率や容積率のことは把握しているので、分からない場合は聞くと良いでしょう。
建築業者、不動産業者、工務店などの他にも、ハウスメーカーなども詳しい情報を持っていると思うので、不動産関連の事業を行っているところには質問してみるときっと教えてくれるはずです。
建ぺい率・容積率の計算方法
建ぺい率と容積率の計算方法は、以下の通りです。
【建ぺい率の計算方法】
建物面積 ÷ 土地面積 × 100
【容積率の計算方法】
延床面積 ÷ 土地面積 × 100
建物面積と延床面積が分かれば、あとは式にあてはめて計算するだけなので簡単に求めることができます。
例えば、土地面積が100㎡、建物面積が合計90㎡(1階部分60㎡、2階部分30㎡)の場合は以下のような計算方法です。
【建ぺい率】
60㎡ ÷ 100㎡ × 100 = 60%
【容積率】
90㎡ ÷ 100㎡ × 100 = 90%
このように、建ぺい率と容積率は難しいと感じるかもしれませんが、やってみると意外と簡単に求めることができます。
建ぺい率・容積率には緩和条件がある
建ぺい率・容積率には緩和条件があり、条件を満たすことで緩和される場合があります。
緩和条件としては、以下のような内容があります。
- 「防火地域」「準防火地域」に耐火性能に優れた建物を建てる場合は10%の緩和
- 一定条件を満たす「角地」に建物を建てる場合は10%の緩和
- 「防火地域」「準防火地域」に位置する一定の条件を満たす角地に、耐火性能に優れた建物を建てる場合は20%の緩和
- 建ぺい率の制限が80%の用途地域内に指定された「防火地域」に、耐火性能に優れた建物を建てる場合は建ぺい率の制限無し
上記4つの条件に当てはまる場合、建ぺい率が緩和されます。
この4つの条件に共通する要素として、「防火地域内の耐火建築物」があります。
条件を満たしたうえで耐火性能に優れた建物を建てる場合は、建ぺい率が緩和されるので理解しておきましょう。
自治体によっては、規定が異なる場合もあるので注意してください。
建ぺい率・容積率オーバーになる3つのリスク
建ぺい率・容積率オーバーになると、3つのリスクがありますので注意してください。
3つのリスクについては以下のような内容になります。
- 違反建築物になる
- 是正措置を命じられる
- 住宅ローンが利用できない
建ぺい率と容積率が規定よりもオーバーしてしまうと、「違反建築物」となってしまいます。
違反建築物の他にも、「既存不適格建築物」という言葉がありますが、この2つの言葉の違いは建築時点で「合法」だったかどうかです。
今から建ぺい率・容積率オーバーとなる工事をする場合は、「違反建築」に該当するので注意しましょう。
それでは、3つのリスクについて詳しく解説していきます。
違反建築物になる
建ぺい率と容積率が持つ役割は、街並みの景観の維持にも役立っています。
いろいろな人が何でもいいから建物を建ててしまっては、街の景観がどんどん変化していくので「制限」が必要になるのです。
日本では、その制限が「建ぺい率」と「容積率」になっています。
もし違反すれば違反建築物となり、処罰の対象となってしまうのです。
是正措置を命じられる
違法建築物であることが判明した場合、行政庁からの「是正措置」を命じられます。
是正措置を命じられるタイミングとして、建築段階の場合と建築後の完成した場合の2通りです。
建築段階での是正措置は工事停止命令、建築後の是正措置は建物自体の使用禁止・制限・移転・撤去などのような対応が求められます。
住宅ローンが利用できない
違反建築物は住宅ローンを組むことが難しくなります。
ローンが組めないため、増改築の資金が調達できません。
自己資金で増改築できても、将来売却するときに買主がローンを組めないので売れにくくなるというデメリットもあります。
建ぺい率・容積率の制限内で住宅を広くする5つの方法
それでは、建ぺい率・容積率の制限内でも住宅を広くする工夫はあるのでしょうか。
今回は、建ぺい率・容積率の制限があった場合でも住宅を広くする方法を5つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
具体的な5つの方法は、以下のようになります。
- 吹き抜けをつくる
- 地下室をつくる
- バルコニー・ベランダをつくる
- 屋根裏・ロフトをつくる
- ガレージ・車庫をつくる
それでは、詳しく解説していきます。
吹き抜けをつくる
吹き抜けは床面積としてカウントされません。床面積は、1階と2階の延べ床面積が含まれます。
しかし、吹き抜けの場合は1階から天井までが空洞となるため、2階部分の床面積としてカウントされないのです。
ですので建ぺい率・容積率の制限があった場合でも、広い空間として活用することができます。
地下室をつくる
地下室を作ることも、建ぺい率と容積率の制限があった場合でも住宅を広く活用できる方法の1つです。
地下室を作る場合、住宅の1/3以内であれば建ぺい率と容積率の計算に含めなくてもよいことになっています。
100㎡の物件の場合30㎡までの地下室であれば作ることができます。
バルコニー・ベランダをつくる
バルコニーやベランダも部屋を広く活用する方法の1つです。
バルコニーやベランダは、外壁からはみ出している部分が1m以内であれば、建ぺい率と容積率に関係なく作ることができます。
バルコニー・ベランダ以外にも、庇や出窓も建ぺい率・容積率に関係なく作成が可能です。
ですが、条件があるので注意しましょう。
具体的な条件は以下のような内容です。
- 床面から出窓の端までの高さが30cm以上ある
- 外壁から突き出している部分が50cm以内である
- 出窓部分が1/2窓であること
屋根裏・ロフトをつくる
屋根裏・ロフトを作る場合も、同じフロアの1/2以内の床面積であれば建ぺい率と容積率を気にせずに作ることができます。
同じフロアの床面積に対して1/2の面積ですので、間違わないようにしましょう。
ガレージ・車庫をつくる
ガレージ・車庫をつくる場合は、1/5以内の面積であれば建ぺい率と容積率の計算に含まずに作ることができます。
上手にガレージと車庫を活用すれば、荷物などの保管スペースも増えるため広く活用することが可能です。
まとめ
増改築を検討する場合は、「建ぺい率」と「容積率」の制限があることを理解しておきましょう。
建ぺい率は、「不動産が建っている土地の面積」に対する「建物自体の面積」の割合のことです。
容積率とは、建物が建っている「土地面積」に対する「延床面積」の割合のことです。
どちらも「用途地域」と呼ばれる13のエリアで制限されており、自分が所有している物件がどこのエリアなのかをしっかりと把握しておきましょう。
今後、増改築を検討している場合は、「建ぺい率」「容積率」の制限を考えながら間取りなども工夫すると部屋を広く活用することができます。
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