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不動産業で上場している企業のビジネスモデルを考察してみた

投稿日:2019年6月1日 更新日:

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現在、不動産業関連の上場企業数は130社以上に上りますが、今回は上場不動産会社のビジネスモデルについて考察してみたいと思います。

そこで、まず、他業種のビジネスモデルと、不動産会社のビジネスモデルの最大の相違点について指摘する必要があります。

その上で上場不動産会社のビジネスモデルを考察し、特に、特徴のあるビジネスモデルを持つ上場不動産会社については、ビジネスモデルの将来の可能性についても考えていきたいと思います。

他業種のビジネスモデルと上場不動産会社のビジネスモデルの最大の相違点とは?

上場不動産会社のビジネスモデルを考える

現在の上場不動産会社のビジネスモデルを大別しますと、

  • 不動産売買仲介のビジネスモデル
  • 不動産賃貸仲介のビジネスモデル
  • 不動産投資のビジネスモデル
  • その他のビジネスモデル

に大別することができます。

まず、「不動産売買仲介のビジネスモデル」は、売主と買主を結びつけることで契約を締結させ仲介手数料という形で報酬を得ます。

ここ数年は東京オリンピックを控え東京の再開発が進む中で、中国人富裕層や海外投資家が高層マンションやビルの一棟買いを進め、東京の不動産市場の上昇に弾みを付けました。

同様に「不動産賃貸仲介のビジネスモデル」は自社で顧客を決めることで、貸主と借主の両方から仲介手数料として報酬を受け取ることができるビジネスです。

東京への人口流入が続く中で賃貸仲介のビジネスも好調を維持しています。

加えて、地価上昇と歴史的な低金利の影響を受けて、「不動産投資のビジネスモデル」も好調を維持しています。

特に、サラリーマンの副業解禁の流れも後押しして、昨今ではサラリーマン不動産投資家が増加傾向にあります。

マンションデベロッパーを中心とした不動産業者側も、サラリーマン向けの投資物件の宣伝を拡大しています。

また、マンションデベロッパーは、それらの物件を管理することで管理費や賃料の回収代行などで利益を上げています。

そして、もう1つは上場不動産会社の「その他のビジネスモデル」になりますが、「その他のビジネスモデル」については後の項で詳しく述べたいと思います。

上記の様な上場不動産会社のビジネスモデルで最も特徴的なことは、上場することや会社の規模が大きくなることによるスケールメリットが効き難いことです。

もともと、不動産会社の販売価格は基本的にコストオン方式と言われますが、掛かったコストに自社の利益を上乗せして販売価格を決めるというやり方です。

つまり、不動産会社が上場することで会社の規模が大きくなったとしても、仕入れの地価の価格がコストダウンできる訳ではありません。

もちろん、系列の建設会社を使うことで大手は多少のコストダウンができるとしても、不動産ビジネスでコストが何割も下がることは有り得ません。

賃貸市場においても同様のことが言える筈です。

他業種のビジネスモデル

一方で他業種のビジネスモデルに於いては、上場することや会社の規模が大きくなることにより大きなスケールメリットが効く場合が多いと言えます。

最も解り易い例としてユニクロでお馴染のファーストリテイリングと比較してみます。

もともと、山口県の衣料品店から始まったファーストリテイリングですが、製品開発から販売までを一元化したビジネスモデルで今や世界3位のSPAとして、ユニクロとジーユーブランドで売上2兆4,000億円を超える規模に成長しています。

その結果として、スケールメリットにより1つのデザインで大量の洋服を作ることができるので、コストを大幅にダウンして安くて良い物が作れるようになっています。

このファーストリテイリングのビジネスモデルの様に、特に、メーカーに於いては上場することや会社の規模が大きくなることで大きなスケールメリットを得ることができます

一方で上場不動産会社のビジネスモデルは、大きなスケールメリットを得ることが難しい構造になっていると言えます。

つまり、地価上昇や金利低下の初期段階においては、大手不動産会社の知名度で有利にビジネスを進めることができるかもしれませんが、現在の様な成熟段階の不動産市場に於いては上場企業であることや会社の規模が大きくなることによるスケールメリットは効き難いのです。

しかしながら、不動産会社のビジネスモデルの中で、将来に期待が持てそうなビジネスモデルが全く無い訳ではありません。

それは、「その他のビジネスモデル」の中にあるのです。

上場不動産会社の「その他のビジネスモデル」とは?

ここまでの説明でお解りの様に上場不動産業関連会社が130社としますと、その中で大手と呼ばれる様な不動産会社の殆どは上記の3つのビジネスモデルを持つ不動産会社です。

一方で中堅や中小と言われる上場不動産会社は、本当に様々なビジネスモデルを持っているものです。

例えば、不動産テックと言われる上場不動産会社が増えています。

不動産テックとは不動産でテクノロジーを駆使するという意味の造語で、各社が競い合いながら最新のサービスを提供するべく日々進化しています。

また、インターネットの発達により売買も賃貸も、物件の問い合わせはインターネットを介して行われています。

さらに、インターネットの発達により取り引きや重要事項のオンライン化についても、開発が進められており将来は契約もインターネットで行われる時代が来るかもしれません。

その様なネットに関連したビジネスモデルを持つ上場不動産会社も増えています。

加えて、上場不動産会社の「その他のビジネスモデル」で最も期待できそうなのが、ここまで述べていないニッチなビジネスモデルの上場企業です。

このニッチなビジネスモデルについては個別に紹介した方が解り易いので、以下で上場不動産会社の中からニッチなビジネスモデルを持つ20社のビジネスモデルを紹介いたします。

ニッチ・ユニークな上場不動産会社のビジネスモデル

1.銘柄 2975スターマイカホールディングス 東証1部(6/1より)
時価総額 249億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 355 25 17 96.0 32.0
ビジネスモデル 中古区分マンションに投資し賃貸、オーナーチェンジ物件が退去したら改装し実需層に市場価格で売却。
2.銘柄 3237イントランス 東証マザーズ
時価総額 48億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 33 3 1.2 3.2 0
ビジネスモデル 東京都内を中心に中古不動産を付加価値化して売却する再生事業を手掛ける。
3.銘柄 3252日本商業開発 東証1部 
時価総額 274億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 500 50 27 149.7  55
ビジネスモデル スーパーなどテナントの商業施設建設を前提に底地を取得後売却益狙う。米国進出、私募REIT運用も行う
4.銘柄 3261グランディーズ 東証マザーズ
時価総額 16.7億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 30 4 2.76 71.9 14
ビジネスモデル 大分地盤で格安の建売住宅展開を軸に簡易宿泊所など投資用不動産も手掛ける。
5.銘柄 3264アスコット 東証ジャスダック
時価総額 104億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 174 1.44 1.26 2.1 0
ビジネスモデル 東京都心を軸に40歳前後の単身女性向けのマンション開発。
6.銘柄 3277サンセイランディック 東証1部
時価総額 63億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 182 15 10 122.2 23
ビジネスモデル 不動産オーナーと店子が揉めているなど権利関係が複雑な不動産を買い取り、関係調整したうえで再販するビジネスモデル。
扱う物件の多くがボロアパートなどで利益率も高い。
7.銘柄 3288オープンハウス 東証1部
時価総額 2,305億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 5,100 515 370 657.7 121
ビジネスモデル 首都圏の狭小土地を高値買取し建売営業展開、不動産好調な福岡進出。
8.銘柄 3452ビーロット 東証1部
時価総額 120億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 37.38 33.60 23.57 296.3 50
ビジネスモデル 中古のオフィスビルやマンションの収益力を高めて売却、カプセルホテル開発も手掛ける。
9.銘柄 3457ハウスドゥ 東証1部
時価総額 293億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 274.99 30.00 19.83 102.1 31
ビジネスモデル 「不動産×IT×金融」という独自のビジネスモデルで急成長中の企業。フランチャイズ事業で全国に不動産仲介のFC加盟店網を構築し加盟店から手数料を取るビジネスモデルと、自宅に住みながら売却できるハウスリースバック事業が2本柱。
10.銘柄 3482ロードスターキャピタル 東証マザーズ
時価総額 191億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 134.87 27.77 16.59 78.0 11.5
ビジネスモデル 都内のオフィスを取得し付加価値を高めて売却する事業が主体。クラウドファンディングも展開。
11.銘柄 3489フェイスネットワーク 東証マザーズ
時価総額 67億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 160 10 7.2 144.6 30
ビジネスモデル 投資家向けRC賃貸物件の1棟売りが柱。土地仕入れから施工・管理まで行う。
12.銘柄 3494マリオン 東証ジャスダック
時価総額 18億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 28.48 3.71 2.59 165.4 30
ビジネスモデル 保有する不動産の賃料を証券化して投資家に提供。
不動産証券化サービスが中高年サラリーマンに人気。
13.銘柄 3497リーガル不 東証マザーズ
時価総額 29億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 252.53 9.43 6.55 227.0 0
ビジネスモデル 駅近の中古マンションなどを権利調整後に収益物件化し販売。
14.銘柄 6083ERIホールディングス 東証1部
時価総額 63億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 149.16 7.57 7.65 64.4 30
ビジネスモデル 建築基準法上の建造物の建築検査。民間では唯一全国展開し首位。
15.銘柄 6093エスクローAJ 東証1部
時価総額 111億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 38.20 5.89 3.85 9.2 3.5
ビジネスモデル 不動産オークションと不動産関連業務の第三者委託が両輪。
16.銘柄 6192ハイアスアンドカンパニー 東証マザーズ 
時価総額 72億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 63.00 4.74 2.68 11.7 3.4
ビジネスモデル 住宅関連に特化したコンサルタント会社で高性能デザイナーズ住宅を提案。また、地場工務店や不動産会社を会員に事業展開や経営改善を支援。
17.銘柄 8912エリアクエスト 東証2部
時価総額 31億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 25 3.40 2 9.9 4
ビジネスモデル 首都圏の駅前商業地を中心にテナント誘致事業を主力とする不動産業を展開。
18.銘柄 8914エリアリンク 東証マザーズ
時価総額 144億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 279 25.00 14.50 114.8 40
ビジネスモデル 賃借不動産を利用した収納トランクやコンテナの運用。
19.銘柄 8919カチタス 東証1部 
時価総額 1,429億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 898.72 100.94 68.05 178.7 54
ビジネスモデル 地方圏を主体に中古戸建住宅を再生・販売する事業を全国展開。家具のニトリと2017年に業務資本提携。
20.銘柄 9423フォーバル・リアルストレート 東証ジャスダック
時価総額 19億円
決算期(億円) 売上高 経常益 最終益 1株益(円) 1株配(円)
予 2020.11 15.17 7.5 6.0 2.6 1.4
ビジネスモデル 不動産仲介・オフィス移転支援サービスを手掛ける。

上場不動産会社ビジネスモデルの将来の可能性について

前項の「ニッチ・ユニークな上場不動産会社のビジネスモデル」20社について、まず、言えることは東証1部上場会社は半分に満たない9社であることです。

他の11社はいわゆる新興市場と言われる市場に上場している非常に若い企業であるということです。

2つ目に言えることは、1つとして全く同じビジネスモデルは無いということで、確かに中には類似するビジネスモデルの会社もありますが、大部分はニッチでユニークなビジネスモデルを持っています。

3つ目はそれらのニッチでユニークなビジネスモデルを持った上場不動産会社は、業績も良く株価も人気となっている会社が少なくありません。

つまり、ビジネスモデルが若いために株式市場で人気となるだけではなく、不動産市場に於いても将来性のあるビジネスモデルと評価されている場合が多いと言えます。

特に、「3252日本商業開発」はスーパーなどテナントの商業施設建設を前提に底地を取得後売却益を狙うビジネスモデルで、国内でも評価されていますが米国進出も果たし今後の展開が期待されます。

「3277サンセイランディック」は不動産オーナーと店子が揉めているなど権利関係が複雑な不動産を買い取り、関係調整したうえで再販するビジネスモデルが受けています。

また、扱う物件の多くがボロアパートなどで利益率も高いことも特徴です。

「3288オープンハウス」は首都圏の狭小土地を高値買取し建売営業を展開中ですが、人口流入増で不動産好調な福岡市に進出したことで今後の展開が期待されます。

さらに「6192ハイアスアンドカンパニー」は住宅関連に特化したコンサルタント会社で、高性能デザイナーズ住宅の提案が受けていますが、地場工務店や不動産会社を会員に事業展開や経営改善を支援している事業も今後の展開が期待できそうです。

最後に「8919カチタス」ですが、地方圏を主体に中古戸建住宅を再生・販売する事業を全国展開しているビジネスモデルがおもしろそうですが、家具のニトリと2017年に業務資本提携したことで今後はシナジー効果が得られると考えられます。

これらの「ニッチ・ユニークな上場不動産会社のビジネスモデル」は、たとえ不動産市場がハッキリとした調整局面に入ったとしても、それほど成長の勢いが止まらない企業群と言えるのではないでしょうか?

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もりお@不動産投資の森編集部

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