仮換地の売買は可能?権利関係や税金、段階別の注意点を紹介

土地の売却を検討しているときに、「自分の土地が仮換地に指定され、仮換地でも売却できるのだろうか?」と分からなくなる場合があります。
たとえば、土地区画整理事業の途中で転勤が決まった場合や、仮換地に指定された土地を相続で取得したものの、手放したい場合など、仮換地の売買が問題となるケースはいくつかあります。
ただし、仮換地は通常の土地と異なり、所有権が従前地に残るなど、権利関係や取引に特有のルールが存在します。
本記事では、仮換地の売買が可能かどうか、また事業の進行段階ごとに注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
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目次
仮換地とは?
仮換地とは、土地区画整理事業において、一時的に割り当てられる土地のことです。

この制度は、道路や公園などの整備を進めるために、「従前地(もとの土地)」を移動する必要がある地権者が、工事期間中も生活や事業を続けられるようにするための措置として設けられています。
たとえば、区画整理で道路の拡幅が行われる場合、もとの土地の一部を提供しなければならないことがあります。
その際、代わりに使える土地として仮換地が指定され、建物を建てたり、貸したりといった利用が可能になります。
仮換地は一時的な土地ではありますが、事業が完了するとそのまま「本換地(正式な土地)」となることが一般的です。
したがって、仮換地の位置や形状は将来の資産価値や建築計画にも大きく影響します。仮換地が指定された段階で、「どの土地をどのように使えるのか」を正確に理解しておくことが重要です。
土地区画整理事業における仮換地が指定される流れ
地方公共団体などが主体となって行われる土地区画整理事業は、地域を再整備し、住みやすい街をつくるために実施されます。
以下がその主な流れです。
| 1 原案の作成・調査 | 地権者や住民と話し合い、測量・地質調査などを実施し事業原案を作成します。 |
| 2 都市計画の決定 | 土地区画整理事業の施行地区を都市計画として定め、公開します。公聴会で意見の聴取も行われます。 |
| 3 事業計画の作成 | 具体的な事業計画の作成。 資金計画・設計概要・スケジュールを地権者などに公開します。 |
| 4 換地設計 | 施行地区における土地を評価し、区画整理後の土地の位置・形状などを設計案としてまとめます。 |
| 5 仮換地の指定 | 換地設計に基づいて仮換地を指定し、地権者へ通知します。 |
| 6 建築物の移転・除却 | 施行者から地権者へ建築物の移転・除却に関するスケジュールを通知、実施。 ※(地権者の協力を得られず)期日までに移転・除却が行なわれなかった場合、施行者が代わりに移転・除却することが可能です。 |
| 7 換地処分 | 所有権移転や清算金に関する換地計画を定め、地権者などに公開、意見書を受け付けます。 |
| 8 登記 | 換地処分後、施行者が登記手続き(土地区画整理登記)を行います。 |
| 9 清算 | 換地処分により生じた不均衡を是正するため、金銭の徴収・交付を行います。 |
仮換地を指定する目的
仮換地は、地権者の権利を守りつつ、長期間にわたる事業を円滑に進めるための制度です。
通常、区画整理事業の完了には、10年以上かかることもあるため、完成した区域から順に仮換地を指定し、使用・収益を認めることで地権者の生活を守ります。
仮換地は、そのまま本換地となるのが一般的で、マイホームだけでなく不動産投資のための賃貸住宅の建設も可能です。
保留地との違い
仮換地と保留地は、いずれも土地区画整理事業によって生じる土地ですが、その性質は異なります。
保留地は、土地区画整理事業前にはなかった土地で、区画整理によって新たに発生した余剰地です。
一方、仮換地は、従前地の土地を区画整理して整えられた土地です。
| 仮換地 | 保留地 | |
| 成立の経緯 | 地権者の従前地を整理して割り当て | 事業で生じた余剰地 |
| 所有者 | 地権者 | 施行者(自治体・組合など) |
| 目的 | 地権者の生活維持・権利移行 | 事業資金の確保 |
| 売却の可否 | 可(条件付き) | 施行者が資金調達のために売却 |
仮換地は売却可能
仮換地は、土地区画整理事業において一時的に指定される土地ですが、条件付きで売却が可能です。
ただし、通常の土地売買と異なり、権利関係や契約内容の扱いに注意が必要です。
ここでは、仮換地の売買におけるポイントを解説します。
仮換地の権利関係
仮換地には所有権はなく、使用収益権のみが認められます。
これは、換地処分が完了するまでは所有権は従前地(元の土地)に留まるため、仮換地では土地を使用・収益する権利のみが認められるためです。
そのため、売買契約では従前地の情報を記載し、仮換地の権利状況やリスクを明確に説明する必要があります。
また、売買が可能となるのは、使用収益が開始できる日以降となる点にも注意しましょう。
換地前後で面積に差異が生じる
区画整理により道路や公園が整備されると、土地は「減歩(げんぶ)」によって面積が減ることがあります。
契約時と換地後で、面積や形状が異なる可能性があるため、清算金の発生や負担方法を契約書に明記しておくことが重要です。
また、造成費用の超過や地価変動による清算金が発生するケースもあるため、あらかじめリスクを織り込んで取引条件を設定しましょう。
換地処分があるまでは所有権を登記できない
仮換地は、換地処分が完了するまでは所有権の登記ができません。
このため、住所が確定しなかったり、第三者に所有権を主張できなかったりする不便が生じます。
このため、購入者がリスクを懸念し、契約締結まで時間がかかるケースもあります。
売主としてこれらのリスクを説明し、買主との信頼関係を構築することが重要です。
仮換地を売却する際における段階別の注意点
仮換地の売却は、土地区画整理事業の進捗に応じて慎重に進める必要があります。
ここでは、それぞれの段階別の注意点について解説していきます。
都市計画決定前
都市計画が決定する前であれば、通常の土地と同様に売却が可能です。
ただし、正式な事業決定前でも、すでに区画整理計画が進行中の場合は、重要事項説明書に記載すべきケースもあるため、不動産会社に確認しましょう。
仮換地に指定される前
仮換地が指定される前の段階では、土地区画整理事業が計画地域の地権者に同意を求める手続きが行われます。
この段階で売却を検討する際には、事業計画の内容を十分に把握しておくことが重要です。
具体的には、換地として割り当てられる予定の土地の位置や面積を確認し、将来的な価値を予測する必要があります。
もし仮換地の価値が、事業完了後に上昇する見通しがあれば、売却を急ぐ必要はないでしょう。
一方で、予定地が希望する用途に適さない場合や早期売却が必要な場合は、この段階での売却を検討しましょう。
仮換地に指定された後
仮換地が指定されると、区画整理事業の内容が具体化し、土地の売却を進めやすくなります。
ただし、契約上は従前地の売買として扱われるため、買主にはその点を説明し、換地の位置や面積に関する詳細な情報提供が大切です。
また、契約時には、清算金の取り扱いや位置変更に伴うリスクなど、仮換地特有の取引条件を説明し、合意を得ることが求められます。
さらに、買主には仮換地の使用開始条件や工事期間中の制約なども、特約に記載しておくと安心です。
換地処分が行われた後
土地区画整理事業が完了し換地処分が行われた後は、土地の評価額が上がりやすく、買主も購入を検討しやすいタイミングです。
ただし、地域のまちづくり計画や建築制限が適用される場合があるため、以下のような制限が課されないかを事前に確認しましょう。
- 建築可能な建物の用途や高さ
- 壁面の位置
- 敷地面積の最低限度 など
市場の地価動向を見極め、もっとも有利なタイミングで売却することがポイントです。
仮換地に課される税金が高くなる可能性
仮換地になると、土地の評価額が上昇することで税金の負担が増加する可能性があります。
これは、土地区画整理事業によって道路・公園・上下水道などのインフラが整備されると、地域全体の利便性が高まり、土地の市場価値や評価額が見直されるためです。
たとえば、固定資産税は、毎年1月1日時点の土地所有者に課税される地方税で、評価額に税率(標準1.4%)を乗じて算出されます。
仮換地の場合、まだ登記上は従前地のままですが、実際には仮換地を使用・収益しているため、「みなし課税」(地方税法第343条第7項)により課税されるケースがあります。
「みなし課税」とは、換地処分前でも、実際に使用・収益が認められた土地については、登記の有無にかかわらず固定資産税および都市計画税を課す制度です。
仮換地の評価額は、従前地よりも上昇する傾向があるため、固定資産税・都市計画税の負担も増える可能性がある点に注意が必要です。
また、都市計画税(税率上限0.3%)は市街化区域内の土地に課される税金ですが、区画整理によって市街化区域に編入された場合は新たに課税対象となります。
固定資産税評価額を調べる方法に関しては、以下の記事も参考にしてみてください。

まとめ
仮換地とは、土地区画整理事業に伴い一時的に利用される土地のことです。
仮換地の目的は、長期間にわたることもある区画整理事業の間、地権者の生活を守りつつ、街づくりを円滑に進めることにあります。
仮換地の売買は可能ですが、通常の土地取引とは異なり、以下のようなリスクがあります。
- 所有権は従前地に認められ使用収益権のみ認められる
- 換地後に土地面積が変わる可能性があり清算金などの取り決めが必要
- 換地処分が完了するまで所有権の登記ができない
これらのリスクについて、事業の進捗状況を確認しつつ慎重に判断することが大切です。
また、土地評価額の上昇によって税負担が増えることもあるため、税理士や不動産の専門家に早めに相談し、リスクとコストを把握しておくことをおすすめします。
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