土地を相続する際、その形状によって評価額が大きく変わることをご存じでしょうか。一般的に、正方形や長方形などの整った形状の土地は「整形地」と呼ばれ、評価額が高くなる傾向があります。一方、三角形や台形、L字型など、いびつな形状の土地は「不整形地」と呼ばれ、整形地に比べて評価額が低くなるのが特徴です。
不整形地は、形状の悪さから利用価値が低いと判断され、相続税評価額が減額される可能性があります。しかし、不整形地の評価は複雑で、専門的な知識が必要です。
本記事では、不整形地の定義や種類、評価方法、売却・相続する際のポイントなどを詳しく解説します。不整形地の売却・相続を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
不整形地とは?
不整形地とは、一般的に正方形や長方形などの整形地に比べて、いびつな形状の土地のことを指します。具体的には、以下のような形状の土地が不整形地に該当します。
- 三角形
- 台形
- L字型
- 旗竿地
- 傾斜地
- 高低差のある土地
これらの土地は、形状の悪さから建物の配置や設計に制約が生じやすく、利用価値が低いと判断されます。そのため、整形地に比べて不動産としての評価額が低くなる傾向があります。
整形地との違い
整形地とは、正方形や長方形など、整った形状の土地のことを指します。整形地は、建物の配置や設計がしやすく、土地の有効活用がしやすいという特徴があります。そのため、不整形地に比べて不動産としての評価額が高くなる傾向があります。
一般的に、整形地と不整形地の違いは、以下の点が挙げられます。
整形地と不整形地の違い
整形地 | 不整形地 | |
形状 | 正方形・長方形 | いびつな形状 |
利用価値 | 高い | 低い |
評価額 | 高い | 低い |
不整形地の種類
不整形地とは、一般的な整形地(正方形や長方形)とは異なる、いびつな形状の土地のことです。不整形地は、形状によって利用価値が低くなる場合があり、不動産評価額にも影響を与えることがあります。
不整形地には、様々な種類
三角形地
三角形地は、三つの辺と三つの角を持つ土地です。三角形地は、建物の配置や設計が難しく、特に鋭角な角がある場合は、利用価値が著しく低下する可能性があります。
特徴 | 注意点 |
・三つの辺と三つの角を持つ土地。 | ・デッドスペースが生じやすく、有効活用が難しい。 |
・鋭角な角を持つ場合、空間の有効活用が難しい。 | ・建物の設計によっては、建築コストが高くなる可能性がある。 |
・建物の配置や設計に制約が多い。 | ・土地の形状によっては、風水上の問題が生じる場合がある。 |
台形地
台形地は、四つの辺のうち二つの辺が平行な土地です。台形地は、三角形地に比べて建物の配置や設計がしやすいですが、それでも整形地に比べると制約があります。
特徴 | 注意点 |
・四つの辺のうち二つの辺が平行な土地。 | ・平行でない辺の角度によっては、デッドスペースが生じる。 |
・三角形地に比べると、建物の配置や設計の自由度が高い。 | ・建物の設計によっては、採光や通風に影響が出る可能。 |
・平行な辺の長さによって、利用価値が変わる。 |
L字型地
L字型地は、L字型の形状をした土地です。L字型地は、建物の配置や設計が難しく、特に奥まった部分がある場合は、利用価値が低下する可能性があります。
特徴 | 注意点 |
・L字型の形状をした土地。 | ・奥まった部分の利用が難しい場合がある。 |
・奥まった部分がある場合、プライバシーを確保しやすい。 | ・建物の設計によっては、採光や通風が悪くなる可能性がある。 |
・建物の配置や設計に工夫が必要。 | ・防犯上の考慮も必要となる。 |
旗竿地
旗竿地は、道路に接する間口が狭く、奥に広い土地です。旗竿地は、通路部分が細長く、建物の配置や設計が制限されるため、利用価値が低いと判断されます。
特徴 | 注意点 |
・道路に接する間口が狭く、奥に広い土地。 | ・通路部分の幅や長さによっては、車の出し入れが困難になる。 |
・通路部分が細長く、プライバシーを確保しやすい。 | ・奥まった部分の採光や通風が悪くなる可能性がある。 |
・奥まった部分の利用に工夫が必要。 | ・災害時の避難経路の確認が必要となる。 |
傾斜地
傾斜地は、地面に傾斜がある土地です。傾斜地は、建物の建築に特別な工事が必要になる場合があり、建築コストが高くなる可能性があります。
特徴 | 注意点 |
・地面に傾斜がある土地。 | ・建物の建築に特別な工事が必要になり、建築コストが高くなる。 |
・高台に位置する場合、眺望が良い。 | ・土砂災害のリスクがある場合がある。 |
・傾斜を利用した建物の設計が可能。 | ・高齢者には不向きな場合がある。 |
高低差のある土地
高低差のある土地は、敷地内に高低差がある土地です。高低差のある土地は、建物の建築に擁壁などの特別な工事が必要になる場合があり、建築コストが高くなる可能性があります。
特徴 | 注意点 |
・敷地内に高低差がある土地。 | ・建物の建築に擁壁などの特別な工事が必要になり、建築コストが高くなる。 |
・高低差を利用した建物の設計が可能。 | ・高低差によっては、利用しにくいスペースが生じる。 |
・高低差によって、眺望や採光が変わる。 | ・高低差の度合いにより、建築基準法上の制限を受ける場合がある。 |
これらの不整形地は、それぞれ特有のメリット・デメリットを持っています。土地の形状をよく理解し、専門家と相談しながら、最適な活用方法を検討することが重要です。
不整形地のメリット・デメリット
不整形地には、整形地にはないメリットとデメリットがあります。
メリット
不整形地は、整形地に比べて一般的に価格が安く設定されています。そのため、予算を抑えて土地を購入したい場合には、不整形地を検討するのも一つの選択肢です。
また、不整形地は、形状の制約がある分、設計の工夫次第で個性的な建物を建てることができます。建築家の腕の見せ所とも言えるでしょう。
相続税評価額が低いのも特徴です。 整形地に比べて相続税評価額が低くなる可能性があり、相続税を計算する上で大きなメリットとなります。
デメリット
不整形地は、形状の制約から建物の配置や設計が難しく、土地の利用効率が悪い場合があります。
また、建築コストが高いのもデメリットかもしれません。 不整形地は、建物の建築に特別な工事が必要になる場合があり、建築コストが高くなる可能性があります。
売却しにくい点も注意しましょう。 不整形地は、整形地に比べて一般的に売却しにくい傾向があります。
不整形地にはそれぞれメリット・デメリットがあります。特徴を加味した上で最適な活用を考えていきましょう。売却や建築の際に迷った際は、不動産・土地の専門家に相談してみるのもおすすめです。
不整形地の4つの評価方法
不整形地の評価方法は、主に以下の4つがあります。
整形地と分けて算出する方法
不整形地を整形地と不整形地に分け、それぞれ評価額を算出する方法です。整形地部分は通常の評価方法で評価し、不整形地部分は奥行価格補正率や不整形地補正率などを適用して評価額を減額します。
引用:国税庁:不整形地の評価
整形地部分・通常の評価方法(路線価方式または倍率方式)を用いて評価額を算出します。
不整形地部分・奥行価格補正率や不整形地補正率などを適用し、評価額を減額します。
・不整形地補正率は、土地の形状や利用状況に応じて定められています。
この方法は、不整形地を整形地と不整形地に区分し、それぞれの評価額を算出するものです。
奥行距離を使用して算出する方法
不整形地の奥行距離を測り、奥行価格補正率を適用して評価額を算出する方法です。奥行距離が短いほど、評価額が低くなります。
引用:国税庁:不整形地の評価
計算上の奥行距離は、不整形地の全域を囲む、正面路線に面するく形又は正方形の土地の奥行距離を限度とします。
この方法は、奥行きの短い不整形地の評価に適しています。
近似する整形地を使用して算出する方法
不整形地に近似する整形地を想定し、その整形地の評価額を基に不整形地の評価額を算出する方法です。近似整形地を求める際には、不整形地の形状や利用状況を考慮します。
求めた近似整形地の評価額に、不整形地補正率を適用して不整形地の評価額を算出します。
近似整形地は、近似整形地からはみ出す不整形地の部分の地積と近似整形地に含まれる不整形地以外の部分の地積がおおむね等しく、かつ、その合計地積ができるだけ小さくなるように求めます。
引用:国税庁:不整形地の評価
・近似整形地の屈折角は90度とします。
・近似整形地と想定整形地の地積は必ずしも同一ではありません。
この方法は、複雑な形状の不整形地の評価に適しています。
近似整形地を差し引いて算出する方法
不整形地から整形地部分を差し引き、残った部分を評価する方法です。
不整形地の中に整形地部分が存在する場合に、その整形地部分を差し引いて評価額を算出します。
不整形地に近似する整形地を求め、隣接する整形地と合わせて全体の整形地の価額の計算をしてから隣接する整形地の価額を差し引いた価額を基として計算した価額に、不整形地補正率を乗じて評価します。
引用:国税庁:不整形地の評価
この方法は、一部に整形地部分を含む不整形地の評価に適しています。
これらの評価方法は、それぞれ適用条件や計算方法が異なるため、専門家(税理士など)のアドバイスを受けながら適切な方法を選択することが重要です。
実際の評価においては、土地の形状や利用状況だけでなく、周辺の環境や法令上の制限なども考慮する必要があります
不整形地を相続する際のポイント
不整形地を相続する際には、以下のポイントに注意する必要があります。
相続税申告書に評価明細書を添付する
不整形地の評価額を計算する際には、評価明細書を作成し、相続税申告書に添付する必要があります。評価明細書には、土地の形状や面積、評価額の計算過程などを詳細に記載する必要があります。
評価明細書は、税務署が評価額の妥当性を判断するための重要な資料となります。正確かつ詳細に作成することで、税務署とのトラブルを避けることができます。
同じ土地でも計算方法によって税金が異なる
不整形地の評価額は、計算方法によって大きく異なる場合があります。そのため、複数の評価方法を検討し、最も有利な方法を選択することが重要です。
複数の評価方法を検討する場合は、それぞれの評価方法のメリット・デメリットを比較検討し、土地の形状や利用状況に最も適した方法を選択します。
不明点がある場合は、税理士や不動産鑑定士などの専門家に相談し、適切な評価方法や評価額についてアドバイスを受けるのをおすすめします。
適切な評価方法を選択することで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。
活用できない場合は売却も検討する
不整形地を相続しても、活用方法が見つからない場合は、売却を検討するのも一つの選択肢です。不整形地は、整形地に比べて売却価格が安くなる傾向がありますが、相続税の納税資金を確保するためには、売却も視野に入れる必要があります。
売却のメリット | 売却のデメリット |
・相続税の納税資金を確保できる。 | ・整形地に比べて売却価格が安くなる傾向がある。 |
・維持管理費や固定資産税などの負担を軽減できる。 | ・売却までに時間がかかる場合がある。 |
・不要な不動産を処分し、有効活用できる。 |
その他、売却にかかる費用(仲介手数料、税金など)も事前に確認しておきましょう。
売却を検討する際には、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に判断することが重要です。
まとめ
不整形地は、形状の悪さから利用価値が低いと判断され、相続税評価額が減額される可能性があります。しかし、不整形地の評価は複雑で、専門的な知識が必要です。
不整形地の売却・相続などを検討している方は、本記事で解説した評価方法や相続のポイントを参考に、専門家のアドバイスを受けながら適切な対策を講じるようにしましょう。
早期からの準備と専門家との連携により、売却・相続に関する不安を解消し、円滑な売却・相続を実現しましょう。