家が傾いている。
そんなことはあるのでしょうか?
外観で傾いているように見えたら一大事ですが、外見ではわからないレベルで少しずつ家が傾いてしまう場合があります。
家の傾きは、建物や住む人にさまざまな良くない影響をおよぼします。
この記事では、家が傾いている場合の原因とさまざまなリスク、実際どれくらい傾いているか調べる方法や、どこまでなら大丈夫かという許容範囲について解説します。
目次
家の傾きについて
家が傾くとどんなことが起こるのでしょうか?
たとえば、戸がよく閉まらない、引き戸を閉めても少し開いてしまう、
家の中で何か落とすと、同じ方向に転がっていく、
中には、家の中にいるだけでめまいや頭痛がするという深刻なケースもあります。
もし、上記のようなことに心当たりがあったら、家が傾いているのかもしれません。
家が傾く原因
家が傾いてしまう主な原因は、以下の5つです。
・地盤沈下
・地震
・施工不良
・シロアリ
・経年劣化
地盤沈下
家が建っている土地そのものが沈んできたために、建物の基礎部分がずれて家が傾いてしまうケースです。
盛り土や埋め立てなど、宅地造成に問題がある場合に起こります。
たとえば、盛り土の転圧不足や、土砂に廃材などを混ぜて埋め立てた場合などに地盤沈下が起こることがあります。
また、粘度質の土壌で水気が多い土地の場合、経年により建物の重さで土壌中の水分が排出されて土壌の体積が減り、その結果地盤沈下が起こります。
このような地盤沈下を圧密沈下といいます。
沼や水田などの水気の多い土地を埋め立てた場所に地盤改良を十分に行わず宅地を造成した場合、圧密沈下が起こるケースがあります。
地震
大地震が起こった場合、地盤がずれてしまうことによって家が傾くことがあります。
水気と砂の多い地盤では、地震の振動で液状化現象が起こり、地盤が建物を支えきれずに家が傾いてしまいます。
液状化現象は地下水の多い砂地の土壌で発生しやすいといわれています。
このような土壌では、通常水気のある砂の粒子同士が摩擦力で密着し、土壌を形成しています。
ところが地震の振動で密着していた砂の粒子がばらばらになると、水と砂が分離してしまい、重い砂の粒子が水の下に沈んでしまうので、土壌はまるで泥水のような状態になります。
液状化した地盤では、重い建物は支えきれないので、家は傾いてしまいます。
施工不良
基礎工事が不十分だったり、構造体の補強の不足や省略、あるいは施工方法の誤りによって家が傾く場合です。
これらは、いわゆる手抜き施工、欠陥住宅です。
シロアリ
建物を支える柱や構造体の木材がシロアリの被害に遭うことでも家が傾きます。
シロアリは風通しが悪く、湿気の多い場所を好みます。
また、シロアリは自然にいなくなることはないので、放置すると建物への被害が進行します。
シロアリの被害にあうと木材は脆くなり、家を支えきれずに折れてしまう場合があります。
経年劣化
経年劣化で建物の構造体の柱や床材が傷んで建物が傾く場合もあります。
ただし、根太などの床材を支える木材が老朽化して床が歪んでしまった場合などは、建物自体が傾いているわけではありません。
そのような場合は床材の張り替えだけで、床の傾きは直るでしょう。
家の傾きの許容範囲
購入した住宅が傾いていたら、それを承知して購入した場合以外、契約不適合責任で売主に責任を問うことが可能です。
ですが、特に生活に特に支障がなく、売主は傾いていることに気づいていなかったケースもあるでしょう。
どの程度から「家が傾いている」と主張できるのでしょうか。
実は法律上で、家の傾きの許容範囲は以下のように定められています。
新築住宅 | 3/1,000以内(0.17度以内) |
中古住宅 | 6/1,000以内(0.34度以内) |
参照:住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)
国土交通省告示第七二一号 住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準
たとえば、3/1,000とは、1mにつき3mm傾いているということです。
個人差もありますが、6/1,000を超えると体調不良を訴える人が増えるといわれています。
家の傾きはどの程度であれば気にしなくていい?
品確法の基準から、新築中古を問わず、3/1,000以内であれば、気にしなくても構わないでしょう。
ですが、売却後に契約不適合責任を問われないためにも、売却予定の家の傾きが不安な場合は家の傾きを計測してみましょう。
そして、買主に傾きの数字を伝えた上で売却することをおすすめします。
家の傾きを調べる方法
家の傾きは自分で調べられます。
用意するものは以下の4つです。
・5円硬貨か、50円硬貨(真ん中が空いていて、ある程度の重さがあるもの。おはじきやビーズでは軽すぎます)
・タコ糸など(1mより少し長めに切っておく)
・メジャー
・セロハンテープ
手順は以下の通りです。
1. 5円硬貨か、50円硬貨に糸を通して長さが1mになるように結ぶ
2. 家の柱や壁の上部に1で作ったものの糸の先をセロハンテープで貼り付ける
3. 垂れ下がった硬貨の、柱や壁からの距離を測る
3で測った距離が3mmなら、1mにつき3mm、つまり家の傾きは3/1,000であることがわかります。
柱や壁からの距離の計測が難しい場合は、厚みのある箱などをあらかじめ壁や柱に固定して貼り付け、その上から計測するとよいでしょう。
その場合、計測値から箱の厚みを差し引くと傾きの値がわかります。
家の傾きによる人への影響
個人差もありますが、家が傾いていると、さまざまな身体の不調が出やすいといわれています。
ひどくなると自律神経を乱し、体調を崩すこともあります。
以下に軽い症状から深刻な健康被害の順に挙げてみます。
・日常生活に違和感を感じる
・家の中でふらつき、つまずくことがある
・ときどき原因不明の頭痛やめまいが起こる
・ときどき原因不明の肩こりや腰痛が起こる
・なんとなく体調が悪い
・慢性的な原因不明の頭痛やめまいがある
・吐き気や睡眠障害、食欲不振が起こる
・平衡感覚に障害が起こり、平らなところでも転ぶ
そのほかにも、家が傾いていることがわかってストレスを感じ、不安感やうつ症状を発症するケースもあります。
家の傾きによる建物への影響
家の傾きは、構造体に不自然な力がかかり続けるので、家自体の劣化が進み、以下のような現象が起こります。
・ドアや窓が閉まりにくい、引き戸が勝手に開く
・鍵が閉めにくくなる
・壁に隙間ができて機密性が損なわれ、エアコンの効きが悪くなる
・屋根材がずれて雨漏りがする
・排水の流れが悪くなる
・外壁にヒビがはいる
以上のように、家の傾きは生活の質の低下、建物の劣化を早めてしまう恐れがあります。
まとめ
家が傾く原因は、地盤沈下や地震など家が建っている地盤の問題もありますが、シロアリ被害や経年劣化、また時には施工不良の欠陥住宅である場合もあります。
古い家は、見た目で判断できないレベルで傾いていることがあります。
家が傾いていると、健康被害が起こるばかりでなく、建物自体に深刻なダメージを与えます。
また、売却後に家の傾きを指摘され、契約不適合責任を問われる可能性もあるでしょう。
家が傾いているかもしれないと心配な場合は、簡単に自分で調べることができるので試してみましょう。
品確法の基準では、新築3/1000以内、中古6/1000以内ならば、合格です。
ドアが閉まりにくい、引き戸が勝手に開くことが続く場合、そのまま放置せず、一度傾きを調べてみることをおすすめします。