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不動産投資で避けられない地震リスク
不動産投資にはいくつものリスクが存在しますが、「地震リスク」は実際に発生した場合の被害の甚大さにおいて、最も深刻なリスクに挙げられるでしょう。
巨大地震に襲われれば、アパートやマンションなどの収益不動産が破壊され、一瞬にして収益性が失われる恐れがあります。
あるいは、地盤の弱い場所なら地滑りや地割れ、液状化などによって居住が困難になったり、居住できても大規模な補修・改修工事が必要になったりする場合があります。
また、海に近いエリアなら地震に伴う津波によって、収益不動産が根こそぎ持っていかれる場合もあるでしょう。
しかも、このような地震被害が一度でも発生したエリアでは、不動産価値が下がる上、借り手に敬遠される恐れも出てくるので、オーナーさんには大きな痛手になってしまうわけです。
残念ながら、地震などの天災を回避する方法はありません。
免震装置を入れるなど被害を最小化する方法はありますが、当然コストと収益性とのバランスの問題が出てきます。
しかし“地震リスクを考えたら、不動産投資は避けた方が無難なのか”というと、そうとは言えません。
そもそも、アパートやマンションなどの収益不動産に被害が出るような大地震(マグニチュード6.8以上の地震)の発生頻度は日本全国で年に平均1~2回程度。それが保有する収益不動産を“直撃”する可能性は「極めて低い」のが現実です。
しかも、建築基準法の耐震基準が強化された現在では、大地震でも倒壊しない建物が増えているほか、地盤改良などの技術も向上しています。
自治体によっては「地震ハザードマップ」などを公開しており、地盤を確認してから不動産を購入することが簡単にできるようになっています。
地震は決して軽視すべきではありませんが、恐れているだけではチャンスもつかめません。地震のリスクをきちんと理解した上で「正しく恐れて、正しく準備する」ことが不動産投資家の心得と言えるでしょう。
地震で収益不動産が倒壊するとどうなるか
地震でアパートやマンションなどの収益不動産が倒壊・損壊して人が住めなくなった場合、当然賃貸契約は無効となり、家賃収入は得られなくなります。この時、もしもローンが残っていれば、家賃が入らない中、ローンだけを返済する事態になるわけです。
また、建て替えや改修を行おうとしても、そのための費用の調達も困難を極めるでしょう。他に担保価値のある資産でも持っていない限り、ローンの残債がある上に新たな融資が受けられる可能性は低いはず。
倒壊・損壊によって不動産価値も大幅に失われているのですから、なおさらです。そうなると、家計が破たんするのは時間の問題と言わざるを得ません。
もしも運良く融資が認められ、再建が可能になったとしても、完工して再び入居者が入るまでは数か月から1年以上も家賃収入が途絶えることになるのです。オーナーさんにとって地震は「破たん」に直結しかねないほどのリスクを内包しているわけです。
大家の賠償責任
ただし、地震などの天災によって賃貸住宅が倒壊し、入居者が死亡したり財産が失われたりした場合、大家さんに賠償責任が問われることは基本的にありません。
必要な耐震基準が満たされていないなど、重大な過失がある場合は責任を問われることもありますが、天災は免責となるのが原則です。
つまり、入居者に対する賠償などの心配はありませんが、それでも家賃収入が失われ、莫大な補修費用などが発生するわけですから、オーナーさんにとっては極めて深刻な問題なのは間違いありません。
地震保険の基礎知識
地震による倒壊や損壊によって家賃収入が途絶え、莫大な補修費用等が発生する事態に備えるため、オーナーは「地震保険」に加入するのが鉄則です。
ところが、現実には地震保険に加入しているオーナーはまだまだ少なく、ネット上では「地震保険への加入は必要ない」という趣旨の解説記事さえ数多く見られます。
しかし、ひとたび地震によって収益不動産に深刻な被害が出た場合、オーナーさんの損害は甚大であり、その損害を直接的に低減できる唯一の方法が地震保険なのです。
地震により損害が生じる確率は極めて低いのは事実ですが、ゼロではない以上地震保険は必ず加入すべきです。地震保険料は必要な経費として収支計画に織り込むのが大原則と言えるでしょう。
地震保険で補償される内容
地震保険は単独では加入できず、火災保険にセットして加入する仕組みとなっています。融資を受ける際には火災保険に加入させられるはずですが、その際に必ず地震保険もセットしましょう。
火災保険は、火災で焼失しても金融機関が保険料で融資を回収するためのもの。つまり、ほとんどの場合火災に遭ってもオーナーには保険料が残らないのに対し、地震保険は建物の小半損程度ならオーナーの手元に保険料が残る場合が少なくありません。それが再建資金として大きな意味を持ってくるのです。
<地震保険の補償割合>
地震保険の場合、以下のように建物の損害に応じて保険金が支払われる仕組みになっています。
地震に伴う液状化の場合でも同様に保険金が支払われますので、液状化の恐れがある場所なら必ず加入しておくべきでしょう。
地震保険に加入していても破たんするケース
地震保険で注意したいのは、火災保険の半分までしか保険金を設定できないこと。つまり、4000万円の火災保険なら、地震保険は2000万円が上限になるということです。
従って、4000万円のアパートが地震で倒壊した場合、保険金は2000万円しか下りないため、ローン残高によっては破たんしてしまうことになるのです。
また、築古木造のような物件では、保険料が高くなるという問題もあります。築古木造アパートでは家賃にも限界があるため、収入に占める保険料が大きくなり、地震以前にわずかな空室でも赤字転落という事態もあり得るのです。
地震保険が高すぎて入れないケース
地震保険はそもそも、地震で被害を受けた建物などの「再建」を目的にした保険ではありません。一種の「お見舞い金」という性格の保険制度で、これが火災保険とセットで、しかも火災保険の半額までしかかけられない設計になっている理由なのでしょう。
中には“地震の損害を全額カバーできる”タイプの地震保険もあるようですが、こちらは保険料が高額なため、収益を求める不動産投資には向きません。
地震リスクの解決策
不動産投資家にとって地震は、経営の致命傷にもなりかねない脅威です。地震大国日本において、地震から逃れることは不可能ですが、リスクを減らす方法はいくつかあります。
地震に強い物件を選ぶ
地震によって建物が倒壊・損壊した場合、オーナーには賠償責任は及ばないものの、家賃収入が失われ、多額のローンだけが残る事態に陥りかねません。従って、少々の地震でも倒壊せず軽微な損壊でとどまるような物件を選ぶことが鉄則となります。
そのためには、まず地盤がしっかりしている場所を選ぶことが重要です。気に入った物件があったら、自治体などで地盤の状態を確認し、地滑りや液状化などの心配がないかをチェックすることが第一歩となります。
また、以前田んぼや沼だった場所は軟弱な地盤なので避けた方が良いでしょう。
建物については建築基準法の耐震基準が引き上げられた1981年(昭和56年)以降に建築された物件であることが鉄則です。今から40年近く前ですから流通しているほとんどの物件は新耐震基準で建てられているはずです。
ただし、結露などによって構造体が傷んでいる物件も多いので、慎重にチェックする必要があるのは言うまでもありません。
<旧耐震基準と新耐震基準>
1978年の宮城県沖地震を教訓に建築基準法の耐震基準が見直され、1981年に改正されたのが「新耐震基準」です。簡単に言えば
- 震度6強から7に達する大規模地震で倒壊・崩壊しないこと
- 震度5強程度の中規模地震ではほとんど損傷しないこと
を前提に、部材や構造の基準を厳しく引き上げたものです。この結果、先の熊本地震では次のような明らかな差が現れました。
- 旧耐震基準による建物702棟のうち225棟が倒壊(約32%)
- 新耐震基準による建物1042棟のうち80棟が倒壊(約7.6%)
場合によっては耐震補強工事も
地震によって建物が倒壊したり、住めなくなったりした場合、オーナーの経済的損失は甚大なので、物件を手に入れたら貸し出す前に耐震診断を受け、必要なら耐震補強工事を行うのも有効です。
それほど大きな出費ではないので、投資する価値は大きいと言えるでしょう。もちろん、経費に計上できます。
地震リスクのある場所の物件を避ける
たとえ魅力的な物件だったとしても、地盤が弱い場所や傾斜地のような地滑りの危険性があるような場所は避けた方が無難です。また、津波の恐れがあるような海沿いのエリアも慎重に判断しましょう。
住民に話を聞いても「ここは津波なんか来ない」と答えることが多いので、必ず自治体のハザードマップなどで確認し、少しでも懸念があるのなら諦めるべきです。
返済期間を短縮する
オーナーにとって地震のダメージはローンの残高が大きいほど大きくなると言って良いでしょう。
つまり、たとえ倒壊したとても、ローンが終わっていれば家賃収入が途絶えても赤字には転落しません。また、ローンを完済していれば、アパートなどを再建する際にも融資を受けやすくなるはずです。
つまり、ローン残高が少なければ少ないほど、地震被害から立ち直りやすいわけであり、可能な限り短期間に完済してしまうことが、地震リスクに対する自衛策になると言えるわけです。
そのためには、めいっぱい融資を引き出すのではなく、できる限り自己資金の割合を厚くすることがポイント。さらに、キャッシュフローはできるだけ繰り上げ返済に回すようにするなど、1日でも早い完済を目指すことが地震大国日本の不動産投資家に求められるスタンスと言えるでしょう。
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