不動産投資手法 特集

不動産投資の指値交渉の目安と通すためのコツ

投稿日:2018年9月26日 更新日:

投資に対するリターンを上げるためには、良い物件を安く購入することが重要です。

安く購入するには購入時の価格交渉も必要となります。

そこでこの記事では、不動産投資における指値交渉の目安と、指値を通すためのコツについてご紹介します。

指値の目安は1割

中古マンション売買など、不動産取引では、売出価格と成約価格が異なることが一般的です。

俗説として、交渉で指値ができる減額幅は、1割程度と言われています。

投資物件で売出価格と成約価格との統計資料はありませんが、参考までに東日本不動産流通機構による過去10年間における土地の登録価格(売出価格のこと)と成約価格を示します。

首都圏不動産流通市場の動向(2017年)

グラフ内のパーセント値は成約価格の登録価格に対する割合を示します。

成約価格の登録価格に対する割合は、2008年から2017年間の10年で平均すると89.9%となります。

指値の目安が1割という俗説も、あながち嘘ではありません

ただし、指値ができる幅は、時代背景や物件によっても異なります。

例えば、2008年は登録価格と成約価格が大きく乖離していますが、これはリーマンショックによって不動産価格が急落したことが原因です。

一方で、景気が上昇局面に入ると、登録価格と成約価格との間は狭くなります。

ここ数年は、平均では1割ダウンできない状況が続いています。

また、良い物件であれば、時代に関わらず登録価格と成約価格の差はほとんどありません。

良い物件、または好景気ほど値引きしにくく、一方で悪い物件、または不景気ほど値引きしやすい傾向にあります。

指値しやすい取引条件

不動産取引では指値をしやすい取引条件が存在します。

この章では、どのような物件が指値をしやすいかについて解説します。

相対取引を行う

投資物件を安く購入するには、相対取引を行うことが基本です。

相対取引とは、売主側と買主側の関係が1対1の関係のことを指します。

不動産は工業製品ではないため、基本的に同じ物件が2つと存在しません。

そのため、売主1人に対して買主が多数となる関係に陥りやすくなります。

買主が他に1人でも現れると、買主間で競合が発生します。

最初は売主Aに対して買主Bしかいなくても、たった1人の買主Cが現れるだけで状況が一変します。

例えば売主Aの1億円のマンション物件に対し、売主Bが9千万円で買取を希望していたとしても、もし1億円でマンション購入希望者となる買主Cが現れたら、9千万円の売主Bは、購入が難しくなります。

不動産を安く購入するには、相対取引で取引を行うことが必須です。

指値交渉を成功させるためには、なるべく他の買主を参入させない状況で買付証明書(購入申込書)を素早く発行し、取引することがポイントになります。

地主が持っている物件を狙う

不動産は売主が誰かによっても値引きのしやすさが異なってきます。

理想的な売主としては、元々の地主が持っているような物件です。

逆に避けたい物件は、会社員などの投資家が保有しているような物件になります。

投資家はある程度の相場観を持っており、また出口価格に対しても強いこだわりを持っているため、簡単には値引きに応じてくれません。

一方で、元々の地主は、売り出し価格に対する強いこだわりを持っていることは少なく、「とりあえず適正価格で売れれば良い」程度の感覚で売却している人が多いです。

地主は、土地を相続していることも多く、土地をタダで入手しています。

そのため、投資家と比較すると価格に対するこだわりが圧倒的に低いです。

投資家物件か、地主物件については、登記簿謄本を見るとわかります。

数年前に購入された物件で、地方銀行の高金利の抵当権が付いているような物件は、投資家物件です。

地主物件は、所有権移転の原因が相続となっている場合や、住宅ローンの借入も少ないことなどから判断することができます。

大幅値下げが狙える物件

指値の目安は1割ですが、中にはもっと大幅値下げができる物件もあります。

この章では大幅値下げが狙える物件についてもご紹介します。

販売期間が1年を過ぎている物件

販売開始から1年を過ぎても売れ残っているような物件は、大幅に値引き交渉ができます。

そもそもこのような物件は売出価格の設定が高過ぎるため、買主が適正と思う購入価格を要求すべきです。

このような物件でも、売主が価格に固執している場合にはなかなか価格は下がりません。

価格が適正とは思えない物件は、無理に購入せずに見送るようにしてください。

売主が疲弊している物件

売買契約後、何らかの事情で契約が解除になり、売主が疲弊しているような物件が回ってくることがあります。

不動産会社と十分なコネクションがある人であれば、このような物件情報も得られる場合があります。

売主が残金決済を焦っているようなケースでは、このタイミングで購入を決断してあげると、大幅に指値をすることも可能です。

売り急ぎの物件

任意売却物件など、売主が売り急いでいる物件も、大幅指値が可能です。

任意売却物件は市場価格の8割程度となることが一般的です。

スピードが求められる物件は、買主側も十分に調査をすることができないため、相応のリスクがあります。

目利き力が十分に備わってきたら、売り急ぎ物件もチャレンジしてみるのも一つです。

指値のコツ

指値をするためにはコツも必要です。

この章では、誰でもできる特に簡単な指値のコツについて2つの方法を紹介します。

上3桁目を切り捨てる

不動産価格は、上3桁で表示されます。

例えば、186,000,000円とか、55,200,000円という価格です。

186,231,553円とか、55,283,441円のように1円単位とはなりません。

初心者でもできる値切り方法としては、まずこの上3桁目を切り捨てるという単純な交渉方法があります。

具体的には、186,000,000円だとしたら、「180,000,000円なら買います」という指値です。

上3桁目切り捨て作戦は、売主も比較的呑み込みやすいため、成功確率は高いです。

ただし、上3桁目の切り捨ては、減額幅は小さいため、最終カードとして使うという方法もあります。

色々交渉を行ってみて、相手が手強かった場合には、最終妥結案として、上3桁目の切り捨て買付申込書を提示しましょう。

切りの良い利回りに上げる

収益物件の場合、切りの良い数字の利回りを相手に要求し、物件価格を下げる交渉方法もあります。

例えば、表面利回り9.7%と書かれているような物件であれば、「表面利回り10%なら買います」という指値です。

満室賃料が年間100万円の物件であれば、9.7%だと約1億3百万円ですが、10.0%なら1億円となります。

元々、利回りは収益性とリスクを反映したものです。

投資家としては、立地条件の悪い物件や、古い物件などは賃貸経営としては、リスクが高いため、求める利回りを上げることは当然です。

利回り感が頭の中にある投資家であれば、物件と利回りを眺めてなんとなく高いか安いかを判断することができます。

投資物件には、築年数が古い、修繕やリフォームを全く行っていない、駅から遠い、空室が多い等々のマイナスポイントがあります。

本来なら、値交渉をする前に、物件のマイナスポイントをしっかり把握し、「この物件なら利回り10%以上ないと買わない」というような判断が形成されていることが望ましいです。

自分が要求したい利回りを満たしているようであれば購入し、満たしていないようであれば指値交渉をします。

指値をしても自分の要求利回りに届かないようであれば、冷静に購入を見送ることも検討してください。

指値交渉の前に、「こんな物件なら○○%以上ないと当然買わない」という基準を持っておきましょう。

指値の交渉材料

指値交渉といっても、交渉材料がないと指値の要求も響きません。

この章では、どのような部分が交渉材料になりやすいかについて解説します。

修繕履歴を確認する

多くの売主は、大規模修繕が発生する前に売ってしまいたいという心理があります。

かなりの売物件が以下のような状態となっています。

1.適切な時期に適切な修繕が行われていない

2.もうすぐ大規模修繕の時期であるが未了である

修繕に関しては最も指摘しやすい交渉材料となります。

売主が個人の場合、修繕履歴を要求しても、まとまった資料はまず出てきません。

修繕した当時の請負契約書や領収書などがバラバラと出てくるだけであり、ろくな管理がなされていないのが大半です。

プロの機関投資家の場合、修繕履歴を要求すると、工事をした時期や内容、金額等の履歴が一覧表となって出てきます。

個人が売主の場合は、管理会社に委託しておらず、修繕の履歴管理がずさんのため、「修繕が不十分」をという理由で値下げ要求しやすいです。

また、まれにきちんと修繕されている物件もありますが、物件購入後、大規模修繕がすぐに控えているような物件であれば、「修繕がすぐに必要となる」という理由で値下げ要求をすることができる可能性が高いでしょう。

アパートであれば外壁塗装や給湯器の入替、マンションであれば屋上防水やタイル補修、エレベーターの修繕などが指摘しやすいポイントです。

すぐに「修繕が発生するリスクがある」物件は、要求利回りを上げるようにしましょう。

銀行の融資可能額を理由にする

交渉材料として、銀行の融資可能額を持ち出すという方法もあります。

中古物件の場合、銀行は担保価値を機械的に低く評価しますので、売出価格と融資可能額に大きく差が出ることが多いです。

例えば売出価格が8,000万円の物件に対して、融資が6,000万円しか出ない場合、「予想外に融資条件が厳しかったので7,000万円にして欲しい」というような交渉です。

銀行のローンに対する厳しい回答は、投資家としてはつらいですが、逆に言えば交渉材料にもなります。

銀行という第三者を理由にして交渉できるため、融資担当者からの事前審査の連絡を受けた後の方が、比較的交渉しやすいといえます。

入居者の現状を確認する

投資物件を購入する際は、

  • 「退去予定の入居者はいないか」
  • 「家賃の減額交渉を受けている入居者はいないか」

の2点は必ず確認するようにしてください。

この2点に関しては、買主から問われると、仲介業者の営業マンに道義的に説明しなければいけない義務が発生します。

何も聞かないと特に説明されません。

もし、退去予定や家賃の減額交渉を受けている入居者がいる場合には、それを理由に価格交渉ができます。

購入申し込み後すぐに収入が減るリスクがあるため、しっかりと減額を要求するようにしてください。

まとめ

以上、不動産投資の指値交渉の目安と通すためのコツについて解説してきました。

価格判定ノウハウを抑え、指値をしやすい取引条件を整え、リスクもしっかり指摘して値交渉をしましょう。

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竹内英二

1998年:大阪大学・2000年:大阪大学大学院卒。 日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定や開発用地の仕入れ担当を11年間に渡り従事。オフィスビル・賃貸マンション等の開発も行っていたことから、土地活用・不動産投資の分野に強い。 不動産鑑定士、中小企業診断士、宅建士、公認 不動産コンサルティングマスター、賃貸不動産経営管理士、相続対策専門士、不動産キャリアパーソンなどの肩書を持つ。

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