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西武信用金庫に何があったのか?行政処分までの経緯

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「信金の雄」として金融庁から褒められていた西武信用金庫が、一転、5月24日に行政処分と業務改善命令を受け落合寛司理事長が辞任を発表しました。

一体、西武信用金庫に何があったのか?行政処分までの経緯を深堀します。

経営データと沿革

西武信用金庫の詳細

所在地 〒164-8688東京都中野区中野2-29-10  
URL http://www.seibushinkin.jp/
電話番号 03-3384-6111
代表者 落合寛司理事長→高橋一朗理事長(5/24発表)
資本金 240億円(2017年度)
設立 1969年(昭和44年)6月 

西武信用金庫の経営データ

経常利益 122億(2017年度)
純利益 89億(2017年度)
純資産 1,439億1(2017年度)
従業員数 1,175人(2018年3月現在)
支店舗数 75店(2019年5月現在)
貸出金残高 1兆6,618億円(2017年度)
預金残高 1兆9,351億円(2017年度)
主要子会社 西武コミュニティセンター・西武しんきんキャピタル㈱

沿革

  • 1969年6月    協立信用金庫と武陽信用金庫が合併し西武信用金庫が発足。
  • 2002年9月    平成信用金庫(渋谷信用金庫と東邦信用金庫が合併し設立)を合併。
  • 2007年4月    窓口の営業時間が午後5時までに拡大される。
  • 2018年10月31日  金融庁が投資用不動産向け融資に関連し立ち入り検査する方針を固める。
  • 2019年4月5日      反社会的勢力の構成員が経営する関係企業を認識しながら融資を行ったとして金融庁が西武信用金庫に立ち入り検査する方針を固める。
  • 2019年4月6日  同信金が指定暴力団の関連企業に対し数年間にわたり融資を行っていた 可能性が報じられる。
  • 2019年5月24日  西武信用金庫に対する行政処分・落合寛司理事長の引責辞任発表

西武信用金庫とは?

もともと、西武信用金庫は東京都区部の西側・都心部・多摩地域と、そこに隣接する神奈川県相模原市・埼玉県の所沢市・入間市を地盤に75店舗を展開する中堅信用金庫でした。

西武信用金庫の名前や所沢市が地盤であることから西武鉄道などの西武グループや、旧セゾングループとの関連というイメージを持つ人も多いですが西武鉄道などの西武グループとの資本的関係は全くありません。

ただ、営業エリアに重なる部分が多いという地縁から、クレディセゾンと共同運営するクレジットカードを発行している程度です。

西武信用金庫の現在の規模は資本金240億円・純利益89億(2017年度)・預金残高1兆9,351億円(2017年度)と、いずれも信用金庫としては全国的に上位にランクされます。 

特に、2016年の全国信用金庫預金ランキングの10位が2兆2,534億円ですから、西武信用金庫はランキングで15位前後に位置する上位の信用金庫となります。

また、動産投資ローンにおいては西武信用金庫は非常に積極的な信用金庫というイメージが定着していました。

つまり、もともとの西武信用金庫は地味な中堅の信用金庫でしたが、2010年に落合寛司理事長が就任し店舗網の拡大や、個人向けを中心とした不動産融資獲得によって事業規模を広げてきました。

その結果、2017年度の西武信用金庫の貸出金残高1兆6,618億円(2017年度)・預金残高1兆9,351億円(2017年度)・純利益89億(2017年度)は、全国信用金庫の上位にランクしています。

行政処分までの経緯

西武信用金庫が行政処分を受けるまでの経緯を時系列で以下にまとめました。

行政処分の内容については「行政処分の内容」で詳しく説明します。

  • 2019年4月9日
「西武信金が反社会勢力に融資の疑いで金融庁が検査・管理体制など焦点に」


信用金庫大手の西武信用金庫が暴力団など反社会的勢力と関わりのある企業に融資していた疑いのあることが8日分かった。

金融庁は同金庫の融資審査や管理体制に不備がなかったか立ち入り検査を含めて詳しく調べ、組織的に不適切な融資をしていたおそれもあるとみて行政処分に踏み切るかを検討する。

関係者によると融資先の一部に暴力団と関わりのある企業が含まれていたとみられる。

また、金融庁は投資用不動産で不適切な融資が発覚したスルガ銀行の問題を受け、昨秋から西武信用金庫を含めた地域金融機関の不動産融資の実態を調べていた。

その過程で反社会的勢力と疑われる相手との取引が発覚したようだ。

同金庫では不動産販売業者が借り入れ希望者の預金残高を改ざんしたことも見つかっている。

金融機関と反社を巡っては、2013年にみずほ銀行が提携先の信販会社を通じて暴力団員らに融資していたことが判明。

問題が発覚しても2年以上にわたり取引を解消しないなど対応を怠っていたことが問題視され、一部業務の停止命令が出た。

最近では2018年にスルガ銀行が顧客を反社と認識した後もカードローンを使わせていた事例が表面化した。

  • 2019年5月24日
「西武信金が不適切融資・金融庁業務改善命令へ」


金融庁は23日、反社会的勢力との関係が疑われる企業に不適切な融資をしたとして、
用金庫大手の西武信用金庫に対し信用金庫法に基づき業務改善命令を出す方針を固めた

また、投資用不動産向け融資の一部でも改ざんされた書類をもとに資金を貸し出す事例が発覚した。

融資審査や管理体制の改善を求める。

西武信用金庫は反社勢力との関係が疑われる人物の家族が経営する企業に融資をしていた。

ただ、金融庁の検査では融資先の企業が指定暴力団とは認定できず、融資した資金が反社勢力に流れた形跡は見つからなかったもようだ。

結果的に疑わしい相手との取引を防げなかった点について管理体制などが甘かったと判断し処分に踏み切る。

  • 2019年5月24日
「西武信用金庫の落合理事長、辞任へ」


西武信用金庫の落合寛司理事長が辞任する見通しになり、後任に高橋一朗常務理事が昇格する人事を発表。

金融庁は近く業務改善命令を出す方針を固めており経営責任を取るもようだ。

落合氏は2010年に理事長に就任し店舗網の拡大や個人向けを中心とした融資獲得によって事業規模を広げてきた。

  • 2019年5月24日
「金融庁、西武信金に業務改善命令 審査体制の不備で」


金融庁は投資用不動産向け融資について関係資料に偽装や改ざんがあったのを見過ごすなど審査体制に不備があったとして、西武信用金庫に対し業務改善命令を出した。

反社会的勢力との取引排除に向けた取り組みが不十分で、反社会的勢力との関係が疑われる対象に融資もしていた。

6月28日までに責任の明確化と内部統制の強化などを盛り込んだ業務改善計画を提出するよう求めた。

行政処分の内容

関東財務局は5月24日、西武信用金庫に対して行政処分を行いました。

また、行政処分に伴い金融庁が西武信用金庫に業務改善命令を出しました。それらの要旨は以下の通りです。

  1. 責任の所在の明確化
    西武信用金庫が業績を優先し管理態勢を怠っていたことや、強い発言力を有する理事長に対して十分なけん制機能が発揮されず内部統制が機能していないと断定しました。
  2. 信用リスク管理態勢の強化
    西武信用金庫の職員が融資審査の書類の偽造を看過したことや偽造された融資資料を見過ごしたと指摘、特に、投資用不動産向けの融資に当たり融資資料の偽装や改ざんの疑いのあったのは127件で、実際に偽装や改ざんがあったのは73件と指摘しました。
    また、投資目的の賃貸用不動産向け融資では耐用年数を検証する外部専門家に対して、職員が耐用年数などの調整を指示したのは258件だったということです。
  3. 反社会的勢力等の排除に向けた管理態勢の抜本的な見直し
    反社会的勢力との関係が疑われる企業と個人への融資などが判明しましたが、「監事(監査)から反社会的勢力等の関係を指摘されたが十分に確認しなかった」ことなどを処分理由にあげました。
    また、反社会的勢力の取引排除などの担当は1人だったことから組織的な対応が不十分だったとの見解を示しました。
    加えて、一部支店長が準暴力団の幹部といわれる親族との取引が確認され、反社会的勢力等の管理区分が限定的に運用されていたと指摘しました。
    監事から反社会的勢力等の関係が疑われるなどの情報提供を受けた際に、落合前理事長は調査の要請を拒否するなど内部統制が機能していなかったと指摘しました。

そして、①~③に対する改善計画を6月28日までに提出する様に求めました。

今後の西武信用金庫はどうなる?

2010年に落合寛司前理事長が就任する前の西武信用金庫は、地味で目立たない中堅上位の信用金庫に過ぎませんでした。

ところが、理事長に就任した落合氏は独自の経営スタイルで“信金界の麒麟児”と持て囃されてきました。

例えば、定年制を撤廃し人事異動も自己申告に変えるなど信用金庫の「働き方改革」を断行、年収400万円の若手が支店長になり一気に年収1,300万円になったケースもあり、落合氏自身の年収も8,000万円前後とメガバンクのトップ並みでした。

その結果、落合氏が理事長に就任してからの8年間で、貸出金残高は2017年度の1兆6,618億円と2009年度の2倍近くに急増しました。

信金界の平均預貸率(預金に占める貸出の割合)は50%程度にとどまる中で西武信用金庫のそれは驚異の85%超でした。

その落合氏の後ろ盾だったのがスルガ銀のことも「地銀の優等生」と持ち上げてきた森信親前金融庁長官で、森氏は拡大路線を取ってきた西武信金を「信金の雄」と呼び褒め称え続けていました。

ところが、西武信用金庫の驚異的な業績の中身は、投資用不動産向けの融資に当たり融資資料の偽装や改ざんでした

また、投資目的の賃貸用不動産向け融資では耐用年数を検証する外部専門家に対して、職員が耐用年数などの調整を指示したのは258件だったということです。

つまり、落合氏は営業成績をもとに若手を支店長に登用するといった成果主義を強化しましたが、績を優先するあまり融資審査や内部管理体制の整備を怠りました

そればかりか、融資資料の偽装や改ざん・耐用年数などの調整・反社会的勢力との関係が疑われる企業と個人への融資などに暴走しました。

この様な西武信用金庫の転落の構図はスルガ銀行の不正融資事件と酷似しており、早くも「第二のスルガ銀行」と取り沙汰され始めています。

しかも、これらの暴走を食い止めるべき金融庁の森信親前長官は、スルガ銀を「地銀の優等生」・西武信金を「信金の雄」と呼び褒め称え続けていました。

西武信用金庫とスルガ銀行の前経営陣が責任を取るのは当たり前ですが、金融庁の森信親前長官にも問題があったと言わざるを得ません。

今後、資本市場において西武信用金庫とスルガ銀行の将来が判断されることになります。

また、顧客離れも相当、進むことが考えられます。

したがって、両社ともに単独での生き残りは難しいそうというのが正直な感想です。

ただ、今後、上場企業であるスルガ銀行にはより厳しい資本市場からの制裁が考えられますが、非上場の地域金融機関である西武信用金庫の場合は事情が多少異なります。

現実的には他の信用金庫との合併などが具体策の1つと考えられます。

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もりお@不動産投資の森編集部

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