「相続した不動産の共有持分を売却したいけど、他の共有者から反対されて困っている…」
「共有持分を売却しようとしたら、予想以上に安い査定額を提示されてしまった…」
共有持分は、他の共有者の同意がなくても、法律上自由に売却できます。適切な方法を選べば、トラブルを避けながら売却可能です。
なぜなら、共有持分は民法で保障された所有権の一つであり、持分の処分は共有者が単独で決定できるためです。
例えば、
- 他の共有者への売却
- 共有者全員での不動産売却
- 専門の買取業者への売却
など、状況に応じた選択肢があります。
ただし、誤った方法で売却を進めてしまうと、共有物分割請求訴訟を起こされたり、他の共有者との関係が悪化したりするリスクがあります。また、市場価格よりも安い金額での売却を強いられる可能性もあります。
この記事では、以下の内容について詳しく解説します。
- 共有持分における基本的な権利
- 売却時に起こりやすいトラブルとその対策
- 具体的な売却方法と手順
- 売却時に発生する費用と税金
この記事を読めば、共有持分を適正価格で売却する方法と、トラブルを未然に防ぐためのポイントがわかります。
なお、弊社AlbaLinkは共有不動産の扱いに強い買取業者です。共有名義となっている不動産でも問題なく買取できますので、「遺産分割協議の前に共有不動産の価値を知っておきたい」とお考えなら、気軽にご相談ください。
目次
共有持分のみの売却は可能
共有持分は、他の共有者の同意がなくても、自分の意思だけで自由に売却できます。
なぜなら、民法第206条で「所有者は法令の制限内において、自由に所有物を使用、収益、処分する権利を有する」と定められているためです。
そのため、相続で取得した不動産の共有持分であっても、持分の売却は共有者の単独判断で可能です。
実務上は以下のような制限や注意点があるため、慎重に進める必要があります。
- 他の共有者に優先して売却の機会を与える必要がある
- 売却後も建物の使用には共有者全員の同意が必要
- 共有物分割請求される可能性がある
- 買主が見つかりにくく、市場価格より安くなりがち
このように、共有持分は法律上自由に売却できますが、トラブルを避けるためには適切な手順で進める必要があります。
共有持分とは
共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有する場合の、各所有者の権利の割合のことです。
共有持分には、さまざまな権利や制限が定められています。
主に以下の内容について理解しておく必要があります。
- 共有名義になる主なケース
- 共有持分における基本的な権利
- 各共有者が単独でできること
- 共有者全員の同意が必要なこと
- 共有者の過半数の同意が必要なこと
これらの内容を正しく理解すれば、共有持分の売却時のトラブルを防げるでしょう。
それぞれの項目について具体的に説明していきます。
共有名義になる主なケース
不動産が共有名義になるのは、主に以下のようなケースがあります。
- 相続で複数人が権利を引き継ぐ場合
- 夫婦で住宅ローンを組んで購入する場合
- 親子で購入資金を出し合って取得する場合
- 兄弟姉妹で実家を引き継ぐ場合
- 投資用不動産を複数人で共同購入する場合
実際に最も多いのは相続による共有です。親から不動産を相続する際、法定相続分に応じて兄弟姉妹で共有名義になるケースが多いです。
また、夫婦での購入も増えています。近年は共働き世帯が増加し、住宅ローンの審査を有利にするため、あえて夫婦で共有名義にするケースも珍しくありません。
共有持分における権利
共有持分における権利は、民法第249条から第264条に定められており、大きく以下の2つに分けられます。
- 単独で行使できる権利(民法第206条)
- 共有者の同意が必要な権利(民法第251条)
この区分は、建物の維持や改善に関する判断の重要度によって分けられています。
例えば、自分の持分を売却する権利は「所有権」として民法第206条で保障されているため単独で行使できます。
一方、建物を取り壊すような行為は「共有物の変更」にあたるため、民法第251条により共有者全員の同意が必要です。
また、建物の管理に関する事項は、民法第252条に基づき共有持分の過半数の同意で決められます。
各共有者が単独でできること
共有者は、自分の持分に関する権利を単独で行使できます。
具体的には、不動産の持分を自由に売却したり賃貸したりできる他、持分を担保にした融資や遺言での相続も可能です。
補修目的の工事でも、自分の専有部分の壁紙の張り替えや床の修理など、他の共有者に影響を与えない範囲の工事なら単独で実施できます。
ただし、共用部分の補修や建物全体の利用方法を変更する場合は、他の共有者の同意が必要です。
共有者全員の同意が必要なこと
建物の性質を変更するような事項には、共有者全員の同意が必要です。
具体的には、不動産全体の売却や建物の取り壊し、大規模な増改築などが該当します。
これらは共有物に大きな影響を与える行為のため、一部の共有者だけで決められません。
ただし、自分の持分だけの売却については、他の共有者の同意は不要です。
共有者の過半数の同意が必要なこと
建物の管理や利用に関する事項は、共有持分の過半数の同意があれば実施できます。
具体的には、増改築などのリフォームや共用部分の改修工事が該当します。
これらは建物の性質を大きく変更するものではないため、全員の同意までは必要ありませんが、一定数の共有者の賛成が必要です。
なお、過半数の同意を得て決定した事項は、反対した共有者に対しても効力が及びます。
共有持分における売却で起こるトラブル7選
共有持分を売却する際には、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
具体的には、以下のようなトラブルが考えられます。
- 共有物分割請求訴訟を起こされる
- 家賃を請求される
- 買取業者から強引な営業をされる
- 共有者との関係が悪化する
- 離婚時にトラブルになる
- 売却相場よりも安く買い取られる
- 買取業者からの営業がしつこくなる
それぞれのトラブル内容を確認していきましょう。
共有物分割請求訴訟を起こされる
共有持分を第三者に売却すると、他の共有者から共有物分割請求訴訟を起こされることがあります。
共有物分割請求訴訟とは、共有関係を解消するために裁判所に共有物の分割を求める訴訟のことです。
他の共有者にとって望まない第三者が共有者になることを避けるため、このような訴訟を提起するケースが増えています。
なお、共有物分割請求は共有者の権利として民法で認められているため、正当な理由がない限り拒むことはできません。
家賃を請求される
第三者が共有持分を購入した場合、他の共有者から家賃を請求されるケースがあります。
これは第三者が共有持分を取得することで、建物の一部を使用する権利も得ることになるためです。
しかし、実際には他の共有者が建物全体を使用しているため、その分の家賃を支払うように要求されることがあります。
ただし、このような家賃請求が認められるかどうかは、具体的な状況によって異なります。
買取業者から強引な営業をされる
共有持分の買取業者は、購入した不動産を活用して利益を上げることが目的のため、強引な営業をしてくるケースがあります。
例えば、市場価格を大きく下回る金額を提示しながら「このような物件は他で買い手がつかない」と不安をあおったり、「期間限定の特別価格」と称して強引に契約を迫ったりするケースも見られます。
このような強引な営業は、売主にとって不利な条件での売却につながる可能性があるため注意が必要です。
共有者との関係が悪化する
事前に共有者に相談しないまま持分を売却してしまうと、共有者との関係が大きく悪化するケースがあります。
例えば、親族間での共有不動産の場合、突然見知らぬ第三者が共有者になることで、家族関係にまで影響が及ぶ可能性も考えられます。また、このような関係悪化は、その後の建物の管理や処分の話し合いも難しくしてしまうでしょう。
そのため、売却を考える際は事前に共有者との十分な話し合いが大切です。
離婚時にトラブルになる
財産分与の割合は基本的に2分の1ずつとされているため、離婚時に共有持分の売却をめぐってトラブルになることがあります。
例えば、一方が他の共有者に無断で持分を売却してしまうと、他方の財産分与請求権が侵害される可能性があります。また、売却代金の分配方法をめぐって対立するケースも少なくありません。
そのため、離婚に際して共有持分を売却する場合は、必ず弁護士に相談するなど、慎重に進めるようにしましょう。
売却相場よりも安く買い取られる
他の共有者の持分を買取業者が買い取っている場合、自分の持分も相場より安い金額で買い取られてしまうケースがあります。
これは、買取業者が他の共有者の持分をすでに取得していることを理由に「この物件の買い手は当社しかいない」などと説明し、買取価格を低く抑えようとするためです。実際には、他の買取業者に相談すれば、より高値で売却できる可能性もあります。
そのため、一社の査定額をうのみにせず、複数の買取業者に相談するようにしましょう。
買取業者からの営業がしつこくなる
共有持分の売却を相談した場合、買取業者からしつこく営業を受けることがあります。
一度連絡先を伝えてしまうと「今なら高く買い取れます」「期間限定のキャンペーン中です」など、頻繁に電話やメールが届くようになります。中には、直接自宅を訪問してくる業者もいるため注意してください。
あまりにも営業がひどい場合やトラブルに発展した場合は、都道府県宅建協会の不動産無料相談所を利用しましょう。
共有持分の売却方法3選
共有持分を売却する方法は、主に3つあります。
具体的には、以下の3つの売却方法が考えられます。
- 他の共有者に売却する
- 他の共有者と協力して不動産全体を売却する
- 買取業者に直接売却する
それぞれの売却方法を詳しく説明します。
他の共有者に売却する
共有者が親族である場合など、他の共有者に持分を売却するのも方法の一つです。
これは、見知らぬ第三者を共有者に加えることなく、家族間で不動産を引き継ぐことができるからです。
また、共有物分割請求訴訟や家賃請求などのトラブルを避けられるでしょう。
ただし、他の共有者に購入する資金的な余裕がない場合は、別の売却方法を検討する必要があります。
他の共有者と協力して不動産全体を売却する
他の共有者と話し合って不動産全体を売却する方法は、売却相場で売れる可能性が高くなります。
なぜなら、不動産全体での売却は一般の買主も検討しやすく、持分のみの売却と比べて買手がつきやすいからです。また、仲介業者を通じて売り出せるため、より高値での売却が期待できます。
ただし、この方法は全ての共有者の合意が必要となるため、話し合いには時間がかかる可能性があります。
買取業者に直接売却する
買取業者への直接売却は、買取価格が安くなる傾向にあります。
買取業者が転売時のリスクや手間を考慮して査定額を算出するからです。特に共有持分の場合、他の共有者との調整や権利関係の整理が必要となるため、さらに価格が低くなりやすくなります。
ただし、早期の資金化が必要な場合や、他の売却方法が難しい場合は、買取業者への売却も選択肢の一つとなります。
共有持分を売却する時に発生する費用と税金
共有持分の売却では、通常の不動産売却と同様にいくつかの費用と税金が発生します。
具体的には、以下のような費用が必要です。
- 登記費用
- 仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税
それぞれの費用について具体的な金額や計算方法を詳しく説明します。
登記費用
持分移転登記にかかる費用は、売却する持分の価格に応じて決まります。
登記費用には、司法書士への報酬と法務局に納める登録免許税が含まれます。司法書士報酬は5〜10万円程度、登録免許税は持分の売却価格の2%が費用の相場です。
なお、これらの費用は売主と買主のどちらが負担するかを、事前に契約書で取り決めておく必要があります。
仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼する場合、売却価格に応じて手数料が発生します。
手数料の計算式は、以下のとおりです。
売却価格 | 計算式 |
200万円以下 | 売買価格×5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 売買価格×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売買価格×3%+6万円+消費税 |
例えば、300万円の物件を仲介売却する場合、「300万円×4%+2万円+消費税」となり、約14万円が手数料となります。
なお、この金額は宅建業法で定められた上限であり、不動産会社によって実際の料率は異なるため、購入前に確認しましょう。
印紙税
印紙税とは、契約書を作成する際にかかる税金のことで、売買価格に応じて税額が異なります。
2027年3月31日までは軽減税率が適用され、税額は以下のとおりです。
売却価格 | 収入印紙の金額 |
1,000万円以下5,000円 | 5,000円 |
5,000万円超~1億円以下 | 3万円 |
1億円超~5億円以下 | 6万円 |
参照:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
例えば、800万円の物件を売却する場合は、契約書に5,000円分の収入印紙を貼付する必要があります。
なお、この印紙税は売主と買主で折半する場合が大半です。
譲渡所得税
共有持分の売却で利益が出た場合、不動産売却と同様に譲渡所得税が課税されます。税率は保有期間によって以下のように分かれます。
5年超(長期譲渡所得) | 20.315% |
5年以内(短期譲渡所得) | 39.63% |
※復興特別所得税を含む
また、居住用財産を売却する場合は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の特例が適用できます。この控除は共有者それぞれが最大3,000万円まで受けられるため、共有持分の売却でも大きな節税効果が期待できるでしょう。
なお、この特例を受けるには一定の要件を満たす必要があります。
共有持分の売却におけるトラブルを未然に防ぐ方法
共有持分の売却トラブルは、適切な対策を取ることで防ぐことが可能です。
方法には、以下のような方法が考えられます。
- 不動産は共有名義で所有しない
- 共有物分割請求を行う
それぞれの予防法を詳しく説明します。
不動産は共有名義で所有しない
不動産を購入する際は、できるだけ共有名義を避けることが大切です。
例えば、夫婦で購入する場合も、住宅ローンの審査に問題がなければ、どちらか一方の単独名義にすることをおすすめします。将来的な売却や相続を考えると、共有名義で生じる複雑な権利関係を避けられるからです。
ただし、相続で共有名義になってしまった場合は、次に説明する共有物分割請求を検討しましょう。
共有物分割請求を行う
すでに共有状態になっている場合は、共有物分割請求を行って単独所有にするのも一つの方法です。
共有物分割請求とは、共有関係を解消して単独所有とするための法的手続きです。
話し合いで分割方法が決まれば調停で、合意が得られない場合は裁判で解決を図ることになります。
分割の方法としては、現物分割、競売分割、価格賠償分割などがあります。
なお、この手続きを進める場合は弁護士へ相談するようにしましょう。
まとめ
この記事では、共有持分の売却方法とトラブルの防ぎ方についてご説明しました。
記事内でお伝えした通り、共有持分の売却では、共有物分割請求訴訟を起こされたり、他の共有者との関係が悪化したりするなど、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
しかし、適切な売却方法を選択すれば、このようなトラブルを避けられます。
具体的には、他の共有者への売却や、共有者と協力して不動産全体を売却する方法が有効です。
また、売却時のトラブルを根本的に防ぐためには、そもそも不動産を共有名義にしないことや、共有状態になった場合は早めに共有物分割請求を行うことも大切です。
これにより、将来的な売却の際の問題を未然に防げるでしょう。
弊社AlbaLinkは、共有不動産の扱いに強い買取業者です。
共有名義となっている不動産でも問題なく買取できますので、「遺産分割協議の前に共有不動産の価値を知っておきたい」とお考えなら、お気軽にご相談ください。
rui kiryu
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