ゲリラ豪雨や地震などの天災によって崖、山林や宅地が崩壊すると、甚大な被害を受けることになります。
地盤改良や擁壁の新設などを講じなければ危険な地形である宅地エリアは、全国各地に数多くあります。
宅地造成を行う際は一定の制限、許可が必要になります。
宅地造成等規制区域での建物建築をするにあたっての注意事項をまとめました。
目次
宅地造成工事規制区域とは
宅地造成工事規制区域とは、宅地造成工事を行うことによって、崖くずれや土砂災害が発生する可能性がある区域のことをいいます。
そもそも宅地とは何かというと、農地、採草放牧地及び森林並びに道路、公園、河川、その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられている土地以外の土地であると定められています。
ここでいう宅地には、建築物を伴わない駐車場、テニスコート、墓地等も含まれます。
造成とは宅地造成規制法(宅造法)という法律に基づいて実施される申請を伴う工事行為です。
そして、宅地造成とは宅地以外の土地を宅地にするため、又は宅地において行う土地の形質の変更をいいます。
つまり、宅地を農地にすることは宅地造成ではありません。
畑、山林などを宅地にすることを目的として造成することを宅地造成と言います。
下記は国土交通省のHPで掲載している宅地造成工事規制区域の概要です。
都道府県知事等(※)は、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地又は市街地となろうとする土地の区域であって、宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものを、宅地造成工事規制区域として指定することができます。
※『都道府県知事等』とは、
- 都道府県知事(但し、以下の2及び3の場合を除く。)
- 政令市・中核市・特例市においては、それぞれの長
- 地方自治法に基づいて都道府県知事から許可等の権限を移譲された市町(事務処理市町村)の長を言います。
この区域に指定された土地は、次の規制がかかり、都道府県知事の許可が必要になります。
- 盛り土により高さ1m超えの崖ができる
- 切土により高さ2m超えの崖ができる
- 切土と盛り土より高さ2m超えの崖ができる
- 切土、盛り土する土地の面積が500m2以上
宅地造成工事規制区域のデメリット
建築費の割高、工期の長期化
宅地造成工事規制区域は、切り盛り土を行い、擁壁を造るため、通常の土地と比べて 建築費が割高になります。
また、許可を受けて工事を行い、検査済が下りなければ確認申請が通りません。
造成工事は想定以上に工事費がかかる場合があるので要注意です。
個人的には宅地造成工事規制区域において、宅地造成が必要な土地での賃貸住宅用、マイホームの建築はオススメしません。
不動産投資効率が通常の土地と比べて低いため、事業計画が成り立たない可能性があります。
収益物件として住宅購入し、増築、改築を行う場合も上記と同じように、追加での調査費用や設計費用がかかるリスクがあります。
住宅購入ノウハウがある人であれば、リスクが高い土地売買は行わないのが普通です。
古い擁壁の場合は要注意
市街化区域内では技術的基準に適合する擁壁、排水施設を設置して、宅地造成に伴う災害を防止するための措置を講じなければなりません。
中古住宅や擁壁自体が古い場合、許可や検査を受けていないことがあります。
そういった場合、新築の際は行政から擁壁の新設を指示されることもあります。
特に擁壁は基準不適合、また売却の場合は、査定価格が下がる可能性があります。
法令の許可を得るには
擁壁の設置
宅地造成工事規制区域において宅地造成を行う場合、崖崩れなどの災害が生じないように安全な状態を維持するために擁壁を新設することになると思います。
- 高さが5mを超える擁壁の設置
- 切土又は盛土をする土地の面積が1500㎡を超える土地における排水施設の設置
を行う場合、開発行為になりますから、次のいずれかに該当する者の設計による必要があります。
こちらは長いので有資格者による設計が必要とだけ覚えておいてください。
1.大学において、正規の土木又は建築に関する課程を修めて卒業した後、土木又は建築の技術に関して2年以上の実務の経験を有する者 |
2.短期大学において、正規の土木又は建築に関する修業年限3年の課程(夜間において授業を行うものを除く。)を修めて卒業した後、土木又は建築の技術に関して3年以上の実務の経験を有する者 |
3.短期大学又は高等専門学校において、正規の土木又は建築に関する課程を修めて卒業した後、土木又は建築に関する課程を修めて卒業した後、土木又は建築の技術に関して4年以上の実務の経験を有する者 |
4.高等学校又は中等教育学校において、正規の土木又は建築に関する課程を修めて卒業した後、土木又は建築の技術に関して7年以上の実務の経験を有する者 |
5.大学院に1年以上在学して土木又は建築に関する事項を専攻した後、土木又は建築の技術に関して1年以上の実務の経験を有する者 |
6.技術士法による第二次試験のうち技術部門を建設部門とするものに合格した者 |
7.建築士法による一級建築士の資格を有する者 |
8.土木又は建築の技術に関して10年以上の実務の経験を有する者で、都市計画法施行規則第19条第1号トに規定する講習を修了した者 |
擁壁工事にかかる費用
擁壁には様々な種類があり、底板のない擁壁や、コンクリート造擁壁となるL字型擁壁、間知ブロック擁壁などがありますが、高低差や、傾斜地や山林など特殊条件によって、擁壁の費用は大きく変わります。
また、行政ごとに検査を受ける際の指導内容も変わるので、建築場所の行政で宅地造成工事を多数行っている業者に見積もりや不動産相談を依頼した方が良いでしょう。
下記は宅地造成工事の主な工事内容です。
整地費用 | 凸凹のある地面をフラットにするための工事費用 |
採掘・抜根費用 | 草木を抜いたり除草したりする費用 |
地盤改良費用 | 軟弱地盤の地域において建物の重さの耐えれるよう、地盤の補強をする費用 |
盛り土費用 | 土地と接する土地より低い場所を、土砂で盛り上げて高くする工事費用。 |
土止め費用 | 土手や掘削面などが崩れるのを防ぐための工事費用。擁壁の設置など。 |
擁壁の安全性を見分ける
擁壁を作り直す場合には
擁壁を作り直すと、数百万円単位、最悪一千万円以上かかる場合がありますので、擁壁を作り直す前に、現状の擁壁に安全性があるものかしっかり調べましょう。
高さが2mを超える擁壁をつくる場合は、建築基準法によると役所への確認申請が必要となっています。
しかし、
- 法律が制定される前につくられた古い擁壁
- 確認申請をせずに勝手につくられた擁壁
上記のように、基準不適格擁壁となる、安全性が疑わしい擁壁が数多く存在しています。
そのため、どうしても宅地造成工事規制区域内の物件を購入する場合には、必ず擁壁の検査済み証を確認してください。
各行政で取得できます。
検査済み証が見つからなかった場合は、擁壁の新設時に確認申請がされているかを確認しましょう。
都市計画法の許可、検査を受けている既存擁壁の場合は、各行政の開発登録簿を閲覧することで確認することができます。
また、高さが2mを超えない擁壁の場合は擁壁を作るにあたって確認申請の義務がないため、どの程度の強度があるかわかりません。
そのため、専門家へ耐久性を調べてもらうと別途費用がかかります。
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