土地活用や不動産投資として人気が高い、アパート経営や賃貸マンション系ですが、アパート経営の賃貸経営を行っていると、収入は下がっていないのにもかかわらず、修繕費がかさみ手残りが少ないと感じることはないでしょうか。
減価償却の終了、金利の上昇以外も収支を圧迫しますが、修繕費の上昇もオーナーにとって大きな痛手です。
修繕費を把握し、必要になるタイミングまでにしっかりと積み立てを行いましょう。
どのタイミングで行うかという賃貸管理によって、アパートの寿命や長期間の入居につながります。
今回の記事では修繕費の種類、相場や修繕費の負担割合について解説していきます。
目次
アパートにかかる修繕費
大規模修繕の場合
アパートの大規模修繕は外壁の塗装、補修や屋上・バルコニーの防水工事、鉄製部品の防錆工事が主になります。
クロス、フローリングなどの内装は退去時の原状回復工事で行っているので、外部がメインになります。
外壁等外側の修繕
外壁は紫外線にどれくらい当たっているか、サイディング、タイル、左官といった外壁材によっても劣化具合が大きく変わります。
最近の外壁材は雨で汚れが落ちるコーティングを施してあるものが多いので、15年に一回程度が一般的です。
外壁塗装工事は階数によって足場をかける面積が変わってくるので大きく変わってきます。
だいたい10,000円〜30,000円/㎡といったところでしょうか。
屋根やバルコニー
新築時に防水加工はされているとは思いますが、雨漏りは入居者のクレームだけでなく建物の劣化スピードも上がってしまいます。
劣化状況を見ながら10年〜15年程度で修繕した方が良いかもしれません。
だいたい9,000円/㎡です。
給水ポンプ
断水してしまうとアパート経営が成り立たなくなってしまうので早急に直すしか方法はないのですが給水ポンプの修理はとても高額です。
1,500,000円ほどかかったという話も聞きます。
新築のマンションは心配ありませんが、中古で築古のアパートを購入した場合、施工状況の把握ができないので給水ポンプの故障リスクは高いと言えるでしょう。
鉄部の錆びを防止する修繕
鉄製部品は雨水に晒されると錆びてしまい、美観が悪く、入居率の低下を招き空室が目立つようになります。
概ね5年に一度防錆工事を行った方が良いでしょう。
相場は4,000円/㎡となっています。
給湯器やエアコンなどの設備修繕
給湯器の交換費用は追い炊き機能やエコジョーズの有無によって大きく変わります。
給湯器は入居者の使い方によって、どのくらい持つか大きく変わってくるように感じます。
20年交換せずに使える場合もあれば10年で壊れてしまう場合もあります。
賃貸物件での使用の場合は経験上、10年ほどで壊れてしまうことが多いです。
給湯器は10年経つと部品が流通しなくなることが多い為、軽微な修理でも交換対応になってしまい、修理ではなく交換するというケースが多いです。
部品がないから交換というのはオーナー側からすると納得いかないところではありますが、どのメーカーも同じのようですね。
エアコンも10年程度での交換が目安になるでしょう。
設計上の標準使用期間10年と表記されたシールが貼られているものもあります。
もちろんそれ以上長く使えることもありますが、賃貸の場合、定期的な掃除を入居者が行わないと10年も経たずに壊れてしまうことがあります。
エアコンも部品がないという理由で修理できず交換ということも結構あるみたいですね。
また、夏の修理は、交換は工事業者も繁忙期のため、なかなか手配がつかないので注意が必要です。
エアコンの交換はリフォーム業者に依頼するよりも家電量販店で自分で買った方が安く済むこともありますので、ご自身で店頭やチラシをチェックしてみてください。
原状回復修繕の場合
クロス張替
クロスの張替えは耐用年数の10年が目安ですが、入居者がタバコを吸って黄ばんでいる、壁・天井にヒビができた、クロスの継ぎ目に汚れがたまってきたといった場合は変えたほうが良いでしょう。
相場として1,000円/㎡です。
注意して頂きたいのは㎡は居室の面積ではなくクロスの張替え面積です。
洋室6帖の場合は40㎡ほどです。もっと安い業者はたくさんあると思いますが、賃貸住宅ではこのくらいが目安となると思います。
ちなみに私が職人さんから聞いた話ですが、優秀な職人でも1日に1人で行うクロスの張替えは50㎡が限界のようです。
ファミリータイプの物件は数日かかることが予想されますので、特に3月などの繁忙期は日程には余裕を持った方が良さそうですね。
クッションフロア張替
クッションフロアとは塩化ビニールを用いた長尺シート状の床材のことです。
表面にクッション材が裏打ちされていて弾力性があります。
フローリングと比べるとチープに感じてしまいます。
耐水性に優れ、汚れにも強く、手入れが簡単なので賃貸向きの床材といえるでしょう。
相場は2,500~3,500円くらいです。
安価ではありますが、クッションフロアは1〜2年の入居でもほとんどの割合で張替えを行います。
弾力性が強いため、クッションフロアは家具を置いたら凹んでしまいます。
家具を置いて凹んだ場合等は入居者の過失でないので、費用負担する義務はありませんが、カビなどの汚れは過失になりますので、償却年数に応じて請求することができます。
網戸や障子の張替
網戸の張替えは1枚あたり3,000円から4,000円が相場です。
網戸は屋外に出ていて紫外線が当たっているため、3年程度で劣化してきます。
基本的に借主の故意過失によって損傷するということはないので、張替えの際はオーナー負担になることがほとんどだと思います。
障子は1帖3,000円程度が相場です。
障子は網戸と違って消耗品の扱いになるので、退去時のリフォームで破れていたり、汚れや日焼けしている場合も張替えを入居者に負担してもらう事ができます。
※賃貸契約書の原状回復の特約の項目を確認してください。
入居率を上げるための修繕
最近はLDKが広い部屋が人気がありますので、2DKなどの物件は洋室とLDKを合わせて1LDKの間取りにリノベーションするといったケースが増えています。
また、キッチン、浴室などの住宅設備を新しくすると、入居率は上がると思いますし、家賃を上げる事も可能です。
資産価値を上げる資本的支出の場合、一括で経費に乗せる事はできませんから注意しましょう。
単身者用の間取りの場合
キッチン…600,000円~900,000円万前後
浴室…600,000円~900,000円前後
トイレ…300,000円前後
アパート修繕に多いトラブルとは
アパートの原状回復時のハウスクリーニング費用は、大家と借主での負担割合をめぐって非常にトラブルが多いので、東京都では、いわゆる東京ルールと言われている原状回復をめぐるトラブルと原状回復ガイドラインを国土交通省が発表しています。
このルールを元に修繕費の負担割合を決めます。
ただし、賃貸借契約書の原状回復の負担割合について特約に記載されている場合は同意があるとみなされるので、特約に従い、敷金から支払われるケースが多いようです。
修繕を管理会社や不動産会社に委託することもできます。
主なポイントとしては、
- 通常の生活での劣化については借主が負担する必要がなく、原状回復とはいえど入居開始前の状態に戻す原状回復義務はないこと。
- 入居契約時に負担分担について明確にする。
- 入居時の物件チェックは詳細お互いにに行うこと。
- 経年劣化は貸主負担、故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損は借主負担
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインはこちら
賃貸借契約書の特約でよくある項目は下記になります。
- ハウスクリーニング代を負担する
- 畳の表替えの費用を負担する
- クロスの張替費用を負担する
- フローリングが損傷した場合、張替え費用を負担する
- ペットを飼育した場合、消臭費用を負担する
このような特約があった場合、借主にとって非常に不利な契約になってしまうため、特約が有効であるためには一定の要件が必要であると判示しており、下記のような契約は消費者契約法により無効となる借主の保護がなされています。
- 退去時の清掃費用は全額借主負担
- 通常損耗も含めて借主負担
- 給湯器、住宅設備の故障等も含めて借主負担
もりお@不動産投資の森編集部
最新記事 by もりお@不動産投資の森編集部 (全て見る)
- 広島県呉市で共有持分不動産の買取査定依頼を頂きました - 2021年11月22日
- 不動産業で上場している企業のビジネスモデルを考察してみた - 2019年6月1日
- 西武信用金庫に何があったのか?行政処分までの経緯 - 2019年5月30日