不動産投資初心者

RC造、軽量鉄骨造、木造、それぞれの耐用年数と考え方

投稿日:2018年11月22日 更新日:

不動産投資を始めると「耐用年数」という言葉を耳にします。

銀行でローンを組もうとすると、「ローン期間は耐用年数以内で」と制限されることもあります。

住宅ローンなら35年も組めるのに、なぜ不動産投資の建築費や建築物だと耐用年数以内でしかローンが組めないのか腑に落ちない人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、RC造、軽量鉄骨造、木造、それぞれの物件に対する耐用年数と考え方について解説いたします。

この記事をお読みいただくことで、耐用年数や減価償却、キャッシュフロー、ローンは耐用年数以内組むべき理由等が分かるようになります。

ぜひ最後までご一読ください。

耐用年数とは

 耐用年数とは、家や建物、設備などの有形固定資産について、使用に耐えうる年数、もしくは税務上の減価償却の基礎となる年数のことを指します。

柱や床、梁など、実際に使用に耐えうる年数という意味の耐用年数は、「経済的耐用年数」と呼ばれています。

現在の建築技術は非常に優れており、オフィスビルなどは断熱性や防音性は高く、100年使えるとも言われています。

実際に100年の使用に耐えうるオフィスビルであれば、その経済的耐用年数は100年ということになります。

一方で、実際に使用に耐えうる年数とは別に、税法上の減価償却という手続きのためだけに存在する耐用年数を「法定耐用年数」と呼びます。

法定耐用年数は、木造や鉄筋コンクリート造(RC造)等の構造によって法律で一律に年数が定められています。

不動産投資においては、キャッシュフローや借入期間の観点から「法定耐用年数」の方が重要です。

構造別の耐用年数

法定耐用年数は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、建物の躯体構造の種類によって年数が定められています。

頑丈な壁や躯体の方が建築コストは多くかかりますが、遮音性が高く、耐久性、耐震性、耐火性、気密性も優れているため、法定耐用年数は長くなります。

以下に住宅用建物の耐用年数を示します。

住宅用建物

建物の構造 耐用年数(事業用) 耐用年数(非事業用)
木造 22年 33年
鉄骨造(厚さ3mm以下) 19年 28年
鉄骨造(厚さ3~4mm以下) 27年 40年
鉄骨造(厚さ4mm超) 34年 51年
鉄筋コンクリート造
鉄骨鉄筋コンクリート造
47年 70年

鉄骨造の特徴に関しては、一般的に鉄骨の厚さが6mm以下のものを軽量鉄骨、6mm超のものを重量鉄骨と呼ぶことが多いです。

軽量鉄骨は、ハウスメーカーが建築するアパートなどで良く使われる躯体構造です。

鉄骨の厚みに関しては、ハウスメーカーにより規格が異なります。

厚さ3mm以下で軽量鉄骨と謳っている場合には耐用年数は19年となり、厚さ3~4mm以下で軽量鉄骨と謳っている場合には耐用年数は27年となります。

軽量鉄骨工法の場合には、鉄骨厚と耐用年数を直接ハウスメーカーに確認すると良いでしょう。

また、耐用年数には事業用と非事業用によって年数が分かれます。

非事業用の耐用年数は事業用の1.5倍で定められています

事業用とはアパート経営や賃貸マンション等の不動産投資の賃貸物件が該当します。

賃貸住宅が事業用となるのに対して非事業用とはマイホームやセカンドハウス等の自宅の建物が該当します。

減価償却費とは

減価償却とは、建物の取得原価を耐用年数内にあらかじめ定められた一定の計画に基づいて、計画的・規則的に費用として配分する会計上の手続きを指します。

減価償却の手続き上、発生する形式的な費用になります。

減価償却費を理解するために、資産と費用の関係を解説します。

ここで仕入れた商品が腐らないガソリンスタンドを例に資産と費用の関係を見ていきます。

あるガソリンスタンドA社が10万リットルのガソリンを1,000万円(1リットル100円)で仕入れたとします。

この仕入れたガソリンの在庫は棚卸資産と呼ばれる資産として計上されます。

A社は毎年1万リットルずつのガソリンを10年間かけて売るとします。

1年目の売上は1万リットル売って、売上が150万円だとします。

この際、1万リットル分の売上原価は100万円(=100円×1万リットル)ですので、1年目の利益は50万円と計算されます。

10万リットルの1,000万円の資産のうち、1万リットルの100万円が売上原価の費用として計上されました。

A社はまだ9万リットルのガソリンが棚卸資産で残っています。

2年目も1万リットル売って、売上は120万円だとします。

1万リットルの売上原価はやはり100万円ですので、2年目の利益は20万円と計算されます。

9万リットルの900万円の資産のうち、1万リットルの100万円が売上原価の費用として計上され、8万リットルの800万円の資産が残ることになります。

このように、毎年1万リットルの100万円ずつ売上原価として費用として落ちると、資産が100万円ずつ減ります。

「費用が発生すると資産が減る」という関係があることがポイントです。

次に建物という資産を考えます。

例えば、築3年目の木造アパートと築20年目の木造アパートを比較したら、資産価値は築3年目の木造アパートの方が高いということは想像つくと思います。

建物という資産は、建物も部屋も老朽化するため、年々価値が落ちていくものと考えるのが合理的です。

そこで、建物という資産は会計上、資産価値を毎年減らしていくものとされています。

上述のガソリンの例では、「費用が発生すると資産が減る」という関係がありました。

逆に「資産を減らすには費用を発生させる必要がある」という「つじつま合わせ」の関係もあるのです。

建物資産の価値を減らすには、会計上、それに相当する費用が必要となります。

この建物の資産価値を減らすために、便宜上発生しているのが減価償却費なのです。

減価償却費は、「建物の資産をちょっとずつ減らす」という会計上の「つじつま合わせ」のために存在する形式的な費用です。

減価償却費は建物の資産価値を計算上減らすためだけに発生する費用であり、実際に支出されるお金ではありませんから、家賃設定などには関係ありません。

しかしながら、費用として計上される以上、減価償却費の分だけ利益が小さくなります。

税金は利益に対してかかるため、利益が小さくなると税金も少なくなります。

つまり、減価償却費は実際にお金が支出されないにもかかわらず、税金を少なくしてくれる効果があることから、節税効果があります。

この減価償却費は計上できる減価償却期間が決まっています。

減価償却費が計上できる期間のことを、「法定耐用年数」と呼んでいます。

例えば木造アパートの法定耐用年数は22年です。

木造アパートの場合、22年間かけて建物価値を1円まで下げていきます。

新築時から木造アパートを持っていると、22年目までは減価償却費が計上できますが、23年目以降は計上できないこととなるのです。

減価償却費は、経済的耐用年数ではなく、法定耐用年数を元に期間が定められています。

経済的耐用年数を元に期間を定めてしまうと、自由度が高くなってしまい、減価償却費を多めに計上する企業が出てきてしまうという面があるため、法定耐用年数を基準として考えられているのです。

耐用年数とキャッシュフロー

次にキャッシュフローについて考えます。

キャッシュフローとは、実際の「手残り現金」のことを指します。

キャッシュフローを考える場合、キーワードは「税引後利益」と「減価償却費」、「借入金の元本返済」の3つです。

まず「手残り現金は税引後利益ではない」という点がポイントです。

減価償却費は、費用ですが実際には支出されないお金です。

支出されず手元に残っているお金なので、借入金を用いていない場合には、キャッシュフローは以下のようになります。

借入金の無い場合のキャッシュフロー

キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費

減価償却費は、利益を圧縮してくれる経費ですが、実際には出て行かない手元に残ったお金であるため、税引後利益に減価償却費を加えたものがキャッシュフローとなります。

次に、借入金の元本返済について考えます。

借入金の元本返済は、利益を計算する上での費用ではないという点がポイントです。

まず、お金は借りても売上にはなりません。

もしお金を借りて売上になってしまったら、利益が大きくなり大きな課税を受けることになります。

不動産投資でお金を借りて、多額の税金が課税されたという話は聞いたことがないと思います。

お金を借りることは課税を生む売上ではないのです。

逆にお金は返しても費用にもなりません。

もしお金を返して費用になったら、利益が小さくなり節税できることになってしまいます。

借りても課税されなかったのですから、返しても節税できないというのが基本となる論理です。

つまり、借入金の元本返済額は、費用にはならないということになります。

お金の貸し借りは、売上でも費用でもないため、利益には全く関係ないという点がポイントです。

しかしながら、借入金の元本返済は、実際に出ていくお金です。

借入金の元本返済は、実際に出ていくお金であることから、手残り現金を表すキャッシュフローには影響します。

借入金がある場合のキャッシュフローの式は、以下のようになります。

借入金の有る場合のキャッシュフロー

キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費 - 借入金の元本返済

耐用年数以内でローンを組むと良い理由

多くの銀行は、不動産投資ローンの借入期間を耐用年数以内としています。

その理由はキャッシュフローにあります。

耐用年数以内であれば、減価償却費が発生します。

よって、耐用年数以内のキャッシュフローは以下のようになります。

耐用年数以内のキャッシュフロー

キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費 - 借入金の元本返済

しかしながら、耐用年数を満了すると、減価償却費は計上されません。

仮に、耐用年数満了後に借入金の元本返済が残っていると、キャッシュフローは以下の式で表されることになります。

耐用年数を超えたキャッシュフロー

キャッシュフロー = 税引後利益 - 借入金の元本返済

耐用年数を超えてしまうと、減価償却費のプラス部分が無くなります。

耐用年数を超えた期間でローンを組んだ場合、耐用年数満了後のキャッシュフローが急激に悪くなってしまうのです。

銀行によっては、耐用年数を超えた期間でローンを組める銀行もありますが、実はキャッシュフローの観点からは、耐用年数を超えた長期ローンを組むことはおススメしません。

耐用年数以内でローンを組むメリットとしては、耐用年数満了以降の急激なキャッシュフローの悪化を防ぐことにあります。

不動産投資をする際は、耐用年数以内でローンを組むことが重要となるのです。

まとめ

以上、耐用年数と考え方について見てきました。

耐用年数とは、減価償却費という節税効果のある費用を計上できる期間です。

減価償却費が存在することでキャッシュフローは良くなります。

耐用年数満了後に借入金の元本返済が残っていると、キャッシュフローが急激に悪くなってしまいます。

不動産投資でローンを組む際は、借入期間を耐用年数以内で借りるように物件の情報収集をしっかりと行いましょう。

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竹内英二

1998年:大阪大学・2000年:大阪大学大学院卒。 日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定や開発用地の仕入れ担当を11年間に渡り従事。オフィスビル・賃貸マンション等の開発も行っていたことから、土地活用・不動産投資の分野に強い。 不動産鑑定士、中小企業診断士、宅建士、公認 不動産コンサルティングマスター、賃貸不動産経営管理士、相続対策専門士、不動産キャリアパーソンなどの肩書を持つ。

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