こんにちは、エンジニア大家です。前回に引き続き築古アパートの「毎年の利益」の内訳をみていきます。
表面利回り は皆さんが認識されていると思うのでそこからスタートします。
表面利回り=満室時の年間収入÷物件価格×100(家賃設定は正しい前提)
目次
実際の収入について
まずは満室時の収入ではなく、実際の収入を知りましょう。それには以下が必要です。
- 募集期間(平均的な退去から入居まで)
- 入居期間(平均的な入居から退去まで)
- 管理会社や仲介会社に払う費用(ADと仲介手数料の合計)
- フリーレント月数
- 礼金
空室率を求める
地域・間取り・賃料から大雑把に空室率を決めてませんか?以下の式でより正確に求まります。
空室率=募集期間/(募集期間+入居期間)
部屋数が多ければ過去の全部屋の12か月分の表を作り、空室に×を付けてその割合でもいいです。(実績から算出)
募集費用の月数を求める
忘れてはならないのが、入居に至るまでの費用です。ADとフリーレントが主です。
募集費用の月数=管理会社や仲介会社に払う費用(月)+フリーレント月数 - 礼金(月)
国道16号辺りの築古アパートの場合、フリーレント1、AD1の2カ月分くらいです。今まで礼金を貰ったことはありません(笑)
募集費用率を求める
今自分が名付けました。1年の家賃のうち、どれくらいの期間を広告費やフリーレントに費やしているかです。
募集費用率=募集費用の月数/(入居期間+募集期間)
例えば入居期間が2年、募集期間が0カ月で2カ月分のADを払っているとします。その場合、募集費用率が8.3%程度となります。
結構大きいですね。こちらのサイトに入居者属性ごとの平均的な入居期間が書いてあったのでサマリを記載しておきます。
実際の家賃収入を求める
家賃収入=適正家賃 ×{1 - 空室率 - 募集費用率}× 12
=適正家賃 ×{(入居期間 - 募集費用の月数)/(入居期間+募集期間)}× 12
見落としがちな募集費用ですが、結構な割合を占めますので、そこも加味してください。
(ADは税法上売上の相殺でなく広告費になりますが便宜上収益の低下とします){}内を家賃回収率とでも呼びましょうか(特許申請中)
更新料について
表面利回りには更新料が含まれていません。
普通は2年に1カ月分の家賃を更新料として貰えますが、実際はその半分を管理会社が更新手数料みたいな形でもっていきます。
1/24÷2で約2%程度ですが、微々たるもので無視しても良いかと。。(更新料を半月分にする交渉もよくあり、断りにくいのもある)
実際の支出について
購入時は利息ぐらいと思われがちな支出。実際はどんな項目があり、どれくらいかかるのか解説します。
管理費
実際の入居家賃に約5%かかります。4%のところもありますが、その分どこか手抜きの部分があります。やってくれるのは以下のような業務です。
- 退去立ち会い
- 修繕見積の作成
- 写真撮影とポータルサイトへの掲載
- 別業者への募集依頼
- 賃貸契約書の発行と重説
- 入居者の選定(保証会社の審査申請など)
- 更新手続き(上で述べたように別途半額徴収)
- クレーム一次対応
- 未払い家賃の督促(さらに未払いの場合、保証会社へ連絡)
- 物件の掃除(掃き掃除、少量の草抜き)
完璧にやってくれるなら5%の管理費は安すぎるくらいです。優良管理会社だと思います。
でも実際は退去立ち会いと割高な修繕がセットだったり、スーモ・Homesへの掲載がなかったり、退去ぎりぎりまでクレームを握りつぶしたり、持ち主不明の粗大ゴミを放置したり、、と不満を書き出したらキリがありません。
ただ自分でやっても、手が回らなかったり宅建免許がないとできない業務もあるので、良い管理会社と組むことは非常に重要なことだと思います。
固定資産税・都市計画税
物件の評価額によりまずが、私の築古アパートの場合、満室家賃の3.5~4%かかりました。(ほぼ土地評価です)
2000万位の物件で年9万程度です。当たり前ですが入居にかかわらず支払うお金となります。
修繕費
やり方によって大きく変わります。5倍とか違うこともよくあります。
例えば30㎝の換気扇を交換するのに19000+税の見積でしたが自分でホームセンターで買ってやれば比較的いいのを買っても税込4000円くらいです。ドライバー一本で初めてでも30分くらいでした。
別の例では洗面台がちょっと割れて、管理会社の見積は税込15,000円でしたがAmazonで500円で補修材を買って自分で直しました。入居者の話も色々聞けて良かったです。もちろん雑な出来だったのは否めません。
費用は10年以上入居した築古アパートとかだと、ほとんどが借主に請求できず、和室→洋室、CFと畳張り替え、エアコン取付などで20万くらいかかります。それでも長く入居してくれる方には本当に御の字です。(購入してすぐだとガッカリしますが;)
目安として5%くらいを修繕積立金として考え(かなり安め)退去に備えた方がいい気がします。かつ自分でやれるものはやる。
自分はまだやってないですが、外壁塗装・共用部分の修繕なども考えるとさらに5%くらい積み立てた方がいいかもしれません。
共用部分の電気代
安いです。月1000円位です。割合にして0.5%くらいでしょうか。
あと退去後の募集・修繕中の電気代は大家持ちだったりします。日割りでいつでも解約可能ですが、基本料の関係で最小プランでも1部屋800円くらいでした。
通信費
ケーブルテレビで月2400円位/物件。無料インターネットで月9000/物件(4%くらい)
インターネット代、高いです。レントロールに書いとけよ、、、って思います。ただ売主の立場からすると、気持ちはわかります。
千葉・茨城辺りだと〇-COMさんとかが有名ですね。
清掃費
物件によりきりですが、雑多なものをここにまとめました。
草刈代
土地が広かったり、山林部分があったりすると維持費がかかります。自分の場合、半年に一回の草刈り、除草剤散布で1万位でした。
最初の内はお願いしていましたが、キリがないことに気づいて、行ったついでに根から枯らす除草剤を自分でまいてます。
この除草剤がコスパ高いようです。(全部枯らしちゃうタイプで人体への影響は少ないらしい)ホームセンターで400円くらいでした。一本で100㎡くらい散布できます。
木の伐採
一度入居者から「建物の隣(敷地内)に生えてる木(20m級)が倒れそうで怖い」という報告がありました。多分シロアリさんがかじって風化したんだと思いますが、確かにグラついてました。
最初は管理会社の見積では25万くらいといわれましたが、3社くらい業者に見積もってもらい、切って安全な方向に倒すだけで税込9万になりました。(電話連絡だけで結局一度も会っていません;)
シロアリと不動産会社の見積が同じくらい怖いです…
浄化槽の掃除
ある物件では本下水が引いてあるにも関わらず、それを使わず浄化槽を介して道路脇の排水溝に流しています。築古なので建築時には下水が整備されてなかったのかもしれませんが、直すとしたらコンクリの基礎を掘り起こすのでウン百万単位とかかるそうです。
怖いですねぇ。まあそれ自体は今のところ影響ないんですが、浄化槽を定期的に清掃する必要があるらしく、4か月に1回4万くらいかかっています。月換算すると物件家賃の5%くらいです。表面利回りにして、0.5%位だと思いますが、こういうのも次から確認しないとですね。
余談ですがこれを知ったのは決済して半年くらいたってから入金明細を見直した時でした。ちゃんといえよw
旅費交通費
どれくらいの頻度で物件を訪れるかによります。年に1~2回かついでに寄るくらいの物件もありますが、自分で一部修繕する場合は退去から入居までの間3回くらい行ってました。
修繕のところで書いたように、費用対効果はあると思うし、勉強になるのでできる限り行った方がいいのですが、それだけ交通費はかかります。
自宅からの距離によりますが、高速代+ガソリン代+メシ代で3000~5000円/1往復くらいです。ケチ臭いですが、ちゃんと費用認識すべきですし、決算申告しないと税金が高くなるのでメモ程度で残した方がいいと思います。(ETCの履歴を見ればだいたい分かる)
ただ本当に高いコストは自分の時間で、休日が1日潰れるのは家族や本業に影響あると思います。それを補うくらい自分でやるのが好きでないと現地は行けないですね。
利子
最後に利子です。物件に払うというより、借入に払うものですが、結構大きいです。
2%のフルローンで1800万借りているとして、年36万、月3万円になります。これは満室時家賃20万円の15%程度です。当たり前ですが大きいですね。借り換えなどにより利子を1%下げると、残債にもよりますが約7%の費用圧縮になります。
表面利回りと「毎年の利益」の差
合計するとどれくらいの費用が掛かったか、例によって3棟分の平均を以下に示します。(概算)
- 空室費(6%)
- 管理費(5%)
- 修繕費(5%)
- 募集費(4%)
- 固定資産税・都市計画税(4%)
- 通信費(2%)
- 清掃費(1.5%)
- 旅費交通費(1%)
- 共用電気(0.7%)
- 火災保険(0.5%)
満室時家賃(表面利回り)に対する費用率
返済を除く | 30%くらい |
利子は含める(年利2%) | 45%くらい |
元本も含める(20年返済位) | 75%くらい |
購入前も運営費がかかる事は認識しています。ただ家賃設定・指値・融資ばかり気になってしまい、軽視しがちなんですよね。(もちろんそれは重要ですが。。。)ただ買う前に売主や販売業者に聞けば教えてくれる費用もあるので(インターネット代とか)、より正確に所有時をイメージするためにもレントロールと一緒に聞いた方がいいと思います。
修繕費・募集費・通信費は物件によって大きく違うので、家賃設定と同じくらい要確認項目だと思います。(表面利回りに反映されないので隠れてしまいがちですが)
まとめ
今回は収益・費用の内訳を紹介しました。物件によって異なりますが、表面利回りに少しでも近づける普遍的なポイントは以下になると思います。
- 未来の収益を把握するために募集費用・物件の入居期間も調べる(所有後はなるべく長く入居してもらう)
- レントロールの他に毎月掛かっている費用の一覧をもらう
- 修繕見積は鵜呑みにしない。自分で出来る事を増やしていき、自作業とコスパ比較する
すでに所有している場合は参考にならないかもしれませんが、今後のためにもまとめてみました。「これは高すぎる」「自分ではこうして安くした」とかがあれば教えて頂ければ大変助かります。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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