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戸建て投資で融資を使うか使わないか?
そもそも、戸建て投資で融資を使うべきか?使わないべきか?で悩んでいる方もいるかもしれません。
まずは融資を使うメリットとデメリットを把握して、戸建てでの融資戦略について考えてみましょう。
融資を使うメリット
「戸建て投資をしようと思うが、ローンを組んでまで行うべきか?」
上記の質問をこれから不動産賃貸業を始めようとしている人に、筆者は何度も聞かれたことがあります。
一見、現金一括購入できることのほうが金利もかからない為、一番良いようにも思えますが、実はローンを組むことによって次のようなメリットもあります。
住宅ローンに付帯している「団体信用生命保険」が、万が一の際、住宅ローンの債務を「0」にしてくれる
団体信用生命保険が付帯されるローンに限りますが、もし該当している場合は非常にメリットがあります。
また、金融機関によっては、住宅ローンの金利にいくらか上乗せをして支払うことによって、生存していてもガン、心筋梗塞などの病気になった際は、住宅ローンの債務を「0」にしてくれる特約保険を付与することもできます。
※団体信用生命保険の加入には、一定の審査があります。
条件によっては住宅ローン控除が利用できる場合も
これはケースバイケースですが、戸建て投資物件についても、自分自身も居住する「賃貸併用物件」であれば、所得税、住民税が安くなる「住宅ローン控除」が利用できる場合もあります。
※「賃貸併用物件」に住宅ローンが利用できるかどうかは、金融機関によります。
特に、最近の住宅ローンの場合は、歴史的に見ても、稀にみる低金利時代です。
場合によっては、支払いする金利よりも還付される所得税、住民税のほうが多い可能性も充分あり得ます。
投資の拡大スピードが速くなる
最後は、投資スピードについてです。融資を使うことで自分が持っている現金よりも大きな資本を回転させることができるようになり、結果大きなリターンを得ることができるようになります。
現金で進めるメリット
ローンを組まずに現金一括で購入することが可能な場合、以下のメリットがあります。
大幅な値引き交渉が可能
これが、現金一括購入の一番のメリットではないでしょうか?
特に物件をすぐにでも手放して、キャッシュが欲しいという前オーナーについては、即現金引き渡しを条件に、大幅な値引き条件に応じてくれるケースがあります。
筆者が10年前に神奈川県内で一戸建ての投資物件を探していた時のことです。
横浜市内のとある場所で、築25年程度の一戸建て(2階建て、3LDK、延床面積60平方メートル程度)の物件が1500万円で販売されていました。
該当物件の近所にある同程度の築年数、広さの一戸建ての値段を見てみると、全て2000万円以上で販売されていることが分かり、非常にお買い得であることが分かりました。
ここまで安くしているのは、何か理由があるのだろうと思い、不動産会社に問い合わせしたところ、物件のオーナーが、飲食店の経営者であることが判明しました。
今度、飲食店舗の新規出店の為、資金をすぐにでも欲しがっており、今回物件の売却を急いでいるようであるということも、不動産会社の営業マンから聞くことができました。
この情報を聞きつけた後、念の為、現地に行って物件を見学しました。
特に大きな問題も見当たらなかった為、現金一括購入を前提条件として、広告で出している金額よりも200万円安くならないか?という交渉をしてみました。
すると、その場で営業マンからあっさりOKをもらうことができました。
(どうやら、事前に不動産オーナーから、現金即引き渡しの場合は200万円までの値引きなら受けてもいいよと言われていたようです。)
現金一括購入をする際は、是非、このような値引き交渉はするべきです。
また、住宅ローンを組むことができない以下のような物件については、土地、家屋を担保にしてローンを組むことが出来ない為、現金一括購入しか方法がありません。
- 連棟式となっている戸建て
(2棟以上の物件がくっついている状態のこと。いわゆる「長屋」になっている物件です。担保価値無しと見なされることが多く、まずローンを組むことは不可能です。) - 再建築不可建物
(幅2M以上の道路に接していない物件が代表的な例です。この場合は建て替えは不可能です。) - 違法建築物件
(容積率オーバーなど)
このような物件についても、値引きの交渉をするべきです。
実際、筆者は神奈川県鎌倉市内のとある連棟式物件を6年前に購入しましたが、店頭で表示されている価格より200万円安い価格で購入することができました。
少し話が逸れましたが、この部分は現金先出しをしてあとで融資を組むことも可能です。
金利リスクなどと無縁
次のメリットは、金利など借入にかかわってくるリスクと無縁になれることでしょう。
今は低金利の時代が続いていますが、どうしても借金のイメージが悪い方はいますし、現実として金利があがったり、自分がコントロールできない範囲の借り入れをしてしまうこと自体がストレスになるケースもあります。
戸建て投資に使える金融機関
このトピックスでは、主に戸建て投資の融資に使える金融機関についての紹介をしようと思っております。
ちなみに、戸建て融資に関しては、誰にでも必ずお勧めできる金融機関というのは存在しません。
何故なら、金融機関によって審査基準、融資可能額、金利、提供担保の評価の仕方が全く違うからです。
A銀行は審査不可だったが、B信用金庫ではあっさりとOKを貰った等という事例は沢山あります。
実際、筆者が某銀行に勤務していた時、「この金融機関は、1億円の担保価値がある土地・家屋を所有する金持ちに貸すか?それとも年間で1億円稼ぐ優秀な経営者に貸すか?」という言葉があったくらいです。
簡単に言うと、事業資金を融資する審査の際に、担保価値を重視するのか?それとも経営者(事業者)としての稼ぐ力を重視するのか?ということです。
これは、戸建ての賃貸業を営む場合にも、当てはまります。金融機関の融資の申し込みをする場合は、上記の審査に対する考えを理解しておくべきです。
これから、戸建て融資を受けることが可能な金融機関をいくつか紹介させてもらいますが、「担保重視」、「事業力(稼ぐ力)重視」のどちらかを記載しますので、是非、参考にしてください。
日本政策金融公庫
事業力(稼ぐ力)重視で、審査基準は一番緩いかもしれません。
公的な金融機関の代表とも言える「日本政策金融公庫」でも、戸建て投資の融資を受けることは可能です。
日本政策金融公庫は、事業者(法人、個人問わず)向けの貸付制度を多岐にわたって用意しており、中には無担保で貸付をしてくれる場合もあります。
有担保融資についても、容積率オーバーなどの違法物件、再建築不可物件など明らかに担保価値の無い物件で無い限りは、審査をするうえで問題にはならなそうです。
その為、「事業力(稼ぐ力)重視」の金融機関と言えるでしょう。
しかし、後述にもある通り、創業間もない個人事業主でも借入が出来た例もある為、審査基準は、非常に緩くなっていると言えるかもしれません。
ちなみに、戸建て投資の場合は、以下の貸付制度が利用できると思います。
普通貸付
具体的には、設備資金、運転資金を目的とした貸付制度。事業者を営んでいれば、殆どの業種(金融業、投機的事業、遊興娯楽業を除く)が利用できる貸付制度。
新規開業資金
新たに事業をはじめる人向けの貸付制度
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性もしくは35歳未満か55歳以上の方を対象とした事業資金の貸付制度
再挑戦支援資金
事業の廃業歴がある人を対象とした事業融資制度
新事業活動促進資金
経営多角化、事業転換などにより、新たに事業を創業しようとしている人向けの貸付制度
中小企業経営力強化資金
新事業分野を開拓する為に外部の専門家から指導および助言を受けている人向けの貸付制度
企業活力強化資金
不動産賃貸業、サービス業、飲食業、小売、卸売り向けの融資制度
但し、不動産賃貸業を営む場合は、(※注1)の場合を除き、利用使途は運転資金のみに限られるようです。
※注1 空家対策の推進に関する特別措置法第6条に規定する空家対策計画を策定している市町村の区域内において老朽化した賃貸用不動産の改修を行う場合
一通り可能性があるものについて記載をさせてもらいましたが、上記の融資制度以外にも、利用できる制度が存在している可能性もあります。
また、貸付金利、融資可能金額についても、担保の有無、事業所得、代表者(事業者)の信用度、保証人の有無などで大きく変わる為、一概に記載することもできません。
もし、日本政策金融公庫の融資制度を利用するつもりであれば、窓口で自身に合っている融資制度を紹介してもらい、貸付条件(貸付利率、融資可能金額)を相談しながら決定する形になると思います。
ちなみに上記の制度については、個人事業もしくは法人として、不動産賃貸を「業」として営んでいる人が融資の対象となっており、ホームページにも明確に融資対象者を「事業主」と記載しおります。
ですので、サラリーマンが副業的に大家業を営んでいる場合は、日本政策金融公庫から融資を受けるのは難しいと考えてよいでしょう。
実際、筆者の知り合いで、サラリーマンをしながら副業的に家賃収入を得ている「A」が新たに賃貸用の戸建て物件を東京都内で購入する為に「日本政策金融公庫」に相談したことがあります。
すると「事業としての届け出もしくは法人化していないと融資をするのは難しい」と断りを受けたそうです。
その後「A」は、不動産賃貸を業として、個人事業主として届け出をして、開業から6か月後に日本政策金融公庫で融資の申し込みをしたところ、戸建てのリフォーム資金350万円を金利1%後半、貸付期間7年(該当物件の土地を担保として提供する条件付き)で借入できたそうです。
三井住友トラストL&F 担保価値重視
三井住友トラストL&Fの融資制度を利用する場合は、不動産の土地、建物を担保として提供する必要があります。
筆者の知り合いに千葉県、東京都内で大家業を営んでいる「C」がいます。
「C」は、千葉県某市内にある土地、一戸建てを購入する為、三井住友トラストL&Fの融資に申し込みをしたことがあります。
購入予定であった千葉県内にある土地、建物を担保提供して申し込みをしましたが、特に違法物件、再建築不可物件などに該当はしていなかったにも関わらず、担保価値が低いことが理由で、審査落ちしたそうです。
その為、審査については、担保評価額を重視しているようであり、担保価値の無い不動産の場合は審査が厳しくなることが予想されます。
(再建築不可物件、連棟式物件、容積率オーバーなどの違法物件などの担保価値が無い物件については、担保として成立しないと考えていいでしょう)
その為「担保価値重視」の金融機関と言えそうです。
尚、戸建ての融資の場合は以下の融資制度を利用することになると思います。
不動産活用ローン
変動金利型 2017年12月現在金利は2.99%~5.99%となっております。
返済最長期間5年(審査によって返済期間を延長できる可能性あり)
融資金額:300万円~10億円
担保提供:必須(生計を要する自宅用の不動産は対象外)
※別途、連帯保証人を要する可能性あり
※担保については、遊休地、空き家でも対象となっているようです。
ちなみに申し込みしてから最短で1週間程度で融資をしてくれるようです。
前述の日本政策金融公庫については、融資まで申し込みから2週間~1カ月程度かかる為、審査スピードは非常に早いことが分かります。
担保価値の高い物件を所有している人が急ぎで融資を受けたい場合は、お勧めできる金融機関と言えます。
オリックスワイドローン
戸建て物件購入の為に当金融機関を利用する場合は、担保提供が必須となります。
具体的な申込み条件としては、以下の通りです。
- 不動産を所有し、担保提供が可能
- 税込み年収が500万円以上(自営業の場合は所得金額)
- 団体信用生命保険に加入できる
- 融資金額300万円~1000万円
※担保については、自宅でも可能
不動産担保、収入の両者を審査の際に重視している為、「担保評価」、「事業力(稼ぐ力)」の2つを重視している金融機関と言えます。
また、団体信用生命保険に加入できることを条件としており、過去5年以内に大きな病気(ガン、心筋梗塞など)で入院、通院していた人は厳しいでしょう。
審査基準が非常に厳しくなっている金融機関と言えそうです。
そのほかのノンバンク
上記3つ以外にも、戸建て物件の融資を取り扱っている金融機関(預金業務を取り扱わないノンバンクが中心)はあります。
具体例を挙げると、以下の2つの金融機関が該当します。
これから戸建て物件に融資を利用しようとしている人は、是非、参考にしてください。
セゾンファンデックス
ノンバンクで不動産担保ローンを扱っている企業として、一番有名だと思います。
銀行、信用金庫などで断られた案件についても、積極的に拾おうとしているようで、自社ホームページでも「銀行などで対応が難しいケースでも相談に乗ります」と記載しています。
ホームページでも審査を通す担保評価額についても「弊社評価額の80%」と具体的に明示している為、相談した時点で審査の可否が分かるのではないか?と思います。
(金融機関によっては、相談時点では「審査してみないと一切分からない」と言う金融機関もあるので、良心的と言えるかもしれません。)
申込者の収入基準は一切公表しておらず、「安定した収入」としか記載がありません。
その為「担保価値重視」の金融機関と言えそうです。
新生インベストメント&ファイナンス
2017年10月1日に新生プロパティファイナンスと新生インベストメント&ファイナンスが合併してできたノンバンクの金融機関です。
戸建て投資の場合でも、融資を行っており、具体的な内容としては以下の通りです。
個人、事業主向け不動産担保ローン
- 金利2.8%~4.8%(2017年12月20日までは2.7%~4.7%まで引き下げるキャンペーンをおこなっています)
- 融資金額300万円~10億円(1物件あたり3億円が限度)
- 最長返済期間 35年
- 保証人原則不要
- 団体信用生命保険の加入は任意
提供担保については、東京、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城南部のうち、東京都心および近郊地域と、ホームページで明確に限定しています。
担保評価が高くなる都心部と限定している為、「担保価値重視」の金融機関と言えそうです。
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