不動産の売却

不動産投資の出口戦略とは

投稿日:2017年11月25日 更新日:

不動産投資の出口戦略とは

不動産投資が軌道に乗ってくると、1棟の経営では家賃収入に限界があるので複数棟の経営を行うことになってきます。

それぞれの物件のキャッシュフローを確認してみると、購入時には高利回りであったものが、築年数の経過とともに悪化している物件がありませんか?

不動産投資を行う上で重要なのは、高利回りの物件を見つけることが最優先されますが、物件を一番いい状態で手放すことも戦略の1つになります。

不動産投資における出口戦略について見ていきましょう。

 

出口戦略とは物件の売却をどうするか

不動産投資における出口戦略といきなり言われても、一体何のことなのかわかりません。

出口戦略とは、本来は軍事行動などで用いられる言葉であり、軍隊の損害を最小限にとどめながら戦線から撤退する作戦のことを指します。

投資などにおいては、不況や競争激化などが予想される場合に、先手を打って損害の少ないうちに投資の規模を縮小または撤退する方法を指しますが、決して悪い意味で用いられているわけではありません。

出口戦略は、投資を行う上で重要な役割を果たしており、うまく活用することによって安定した利益を確保できるような体制づくりに変えることができます。

不動産投資においては、購入した物件を売却することが出口戦略に該当しますが、本当にその必要があるのでしょうか?

なぜ物件を売る必要があるのか

「高利回りの物件ならいつまでも所有していたらずっと利益を生み続けるのにもったいない」と思う方もいらっしゃると思います。

不動産投資にはいくつかリスクが存在し、そのリスクを回避するため時には出口戦略を行わなければなりません。

不動産投資におけるリスクは以下の通りです。

空き部屋リスク

「空き部屋が増えたからって自身の家賃収入が減るだけでしょ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実際はそれだけでは済みません。

物件を売却したい場合の価格は、築年数や売却時の家賃収入を基準に算出されるため、空き部屋が生じている物件は足元を見られてしまい、二束三文で買いたたかれてしまう可能性があるでしょう。
空室リスク

地震や火災などによる物件消失のリスク

不動産投資の場合は地震や火災などによって収入源である物件が消失してしまう可能性があります。

そのため、投資する物件の数が増えてきた場合には、利回りが落ちてきた物件などから順に万が一に備えて不動産として所有しておくのではなく現金化しておく方がリスクを軽減できるでしょう。
消失リスク

経年劣化によるリスク

築年数が経過している物件は、高利回りのため魅力的に感じますが、年数が経過すればするほど修繕費などが発生しやすくなり家賃収入の大半がランニングコストに回ってしまいます。
劣化のリスク

他にも、不動産賃貸業にはいくつものリスクがあります。

細かくは以下の記事をご参考にしてください。

不動産投資で考えられるリスクとデメリットに対する対策


「高利回りだから」と物件にこだわり続けることによって売却のタイミングを失ってしまわないように、しっかりと出口戦略を立てておいた方が良いでしょう。

不動産投資を行うにあたって、どのタイミングで出口戦略を考えればよいのでしょうか?

出口の想定は購入時から

「物件の利回りが落ちてきてから出口戦略を立てても間に合うんじゃない?」と思った方はいらっしゃいませんか?それは大間違いです。

実際に物件を売却したいと思っても、物件の売却価格は金額的にも大きいものになるため、売りに出したからと言ってすぐに売れるものではありません。

売却したい場合には、常に先手を打って行動しておかないと他の物件に流れていってしまうことになります。

不動産投資を行う上で理想的な投資方法をシミュレーションしてみましょう。

この物件を例にしてみると、まずは築年数が10数年と比較的新しいほうではあるものの入居率が下がっていることを理由に値下げ交渉を行い、現状利回り7.5%の800万円で購入。

購入時

出口戦略を立てる場合

築年数が20年を超えてくると修繕費や建て替えなどが意識され始めるため、値下げ交渉を行われる確率が高いことからなるべく数年のうちに売却を予定。

3年目で入居率が80%を達成でき翌年の上昇を期待したものの下落。しかし、5年目に再度上昇に転じたため6年目が上昇するようであれば売却を検討。

6年目に90%を達成したタイミングで売却を行う(価格は買い手が付きやすいように利回り8%)
出口戦略あり

出口戦略を立てない場合

築年数の経過はあまり気にせず、とにかく入居率が向上している間は売却を予定せず、入居率が連続して下がりだしてから慌てて売却を検討

3年目で入居率が80%を達成でき翌年の上昇を期待したものの下落。しかし、5年目に再度上昇に転じたため売却見送り

6年目に90%を達成したので翌年の持続を期待したものの下落。連続して下落が続いたため9年目に売却を決意(価格は築年数が20年を経過してしまったため買い手がなかなか見つからず10%で泣き寝入り)
出口戦略なし

結果考察

出口戦略を立てた場合と立てていない場合を比較すると、出口戦略を立てていない場合の方の運用期間が長いにもかかわらず、トータルの運用益が少なくなりました。

この結果が生じた最も重要なポイントは、築年数の節目をしっかりと意識していたことと入居率が高い段階で売却を決意できたことにあります。

築年数が20年を超えてくると、経年劣化による修繕や建て替えなどのランニングコストを意識し物件価格を低く抑えようとすることから、10数年で売却できるに越したことがありません。

また、物件価格は満室状態の家賃収入ではなく現状の家賃収入を基準に算定することから、入居率が高いうちに売却を検討するほうが物件を高く売却できることになります。

売りやすい物件売れにくい物件

どのような物件が売りやすくどのような物件が売れにくいのかご存知ですか?

出口戦略を考える上で、必ず押さえておかなければいけないのが購買意欲をそそるような物件かどうかということです。

不動産の売却を行う上で重要視されるポイントを見ていきましょう。ポイントは以下の通りです。

価格の設定

価格の設定は、低ければ低いに越したことがありません。

「この価格でも買い手がいるよ」と強気の価格設定をし、紙面に長期掲載されてしまうと、よくチェックをしている業者や個人からは「まだ売れ残っているということは不良物件だな」とマイナス評価を受けてしまいます。

特に築年数が経過した物件に関しては、後のランニングコストの発生から物件購入を躊躇する人が多くなるため、
「自分が購入した時にこれくらいだったから」という意識は捨てたほうが良いでしょう。

しかし、最初から物件価格を下げすぎてしまっても「この物件入居率が良いのに価格が安いということはまとめて退去するのかな」と怪しまれてしまいます。

最初から下限の価格で提示するのではなく、適切価格を提示して、そこから値段交渉に応じるなど割安感を演出するのがベストでしょう。
価格設定

物件の内容(状況)

利回りが高くても築年数がかなり経過している物件は、建て直しや修繕費によるランニングコストの発生や外観上の問題などによるリスク軽減の観点から回避されやすくなります。

また、駅からのアクセスの良さや周辺環境の良さ(ファミリー向けの物件の場合は病院やスーパー、学校へのアクセス等)は将来の入居率に影響を及ぼすため重要事項になると言えるでしょう。

駅からのアクセスが悪いにもかかわらず駐車場が併設されていない、逆に駅に近いにもかかわらず契約されていない駐車場が多い物件などは後の経営に影響を与える可能性があることから回避されやすくなります。
築年数・立地

その他

敏腕な不動産業者に管理を委託している場合には、好条件の物件を探してきてくれたり好条件の買い手を見つけてきてくれますが、地元の不動産業者などの場合にはエリアが狭い分なかなか取引が進まないでしょう。

最近では不動産の日常管理を行うよりも手数料が大きい物件の売買の仲介を主に行っている業者も多く、売却の話が突然流れ込んでくることもあるので、そうした情報には耳を傾けたほうが良いと言えます。

実際に幹線道路沿いで築20年を超える4F建ての高利回りのアパートを所有していましたが、上記のような業者が突如現れ顧客に物件を探しているとのことで好条件を提示してきました。

以上の点をまとめると売りやすい物件の特徴は以下のようになります。

  • 物件価格が少し安い(利回りが高い)
  • 駅からのアクセスや周辺環境が整っている
  • 築年数が経過しすぎていない
  • 主要道路沿いなどの目立ちやすい場所にある

物件別にみる出口戦略

出口戦略は全ての物件が同じという訳にはいきません。

新築物件なのか中古物件なのか、入居者がいるのか入居者がいないのか、不動産投資家に売却する場合か個人に売却するかなど条件は多岐にわたります。

その戦略は下記のようにいろんなパターンの組み合わせが生まれてくるため、ある程度自分の中でマニュアル化しておくとスムーズに出口戦略を行うことができるでしょう。

少しでも不動産経営のリスクを回避しながら円滑に行うためにも、物件ごとの出口戦略を立てていきましょう。

戸建て物件の出口

戸建て物件の場合は1物件1居住者という関係性であることと、基本的には高利回りであることが多いため保有し続けておくのがベストになります。

入居者が退去した後はリフォームなどの修繕を行い、中古物件として入居希望者に対して売却を行うか、不動産投資家に売却を行うことができるでしょう。

あまりにも築年数が経過しているなど建物の存在が売却を妨げているような場合には、一度取り壊しを行い更地として売却を行うこともできますし、入居者に賃貸ではなく購入を促すという選択肢もあります。
戸建て

地方アパート物件の出口

地方アパート物件の場合は入居者の有無にかかわらず不動産投資家に売却することができます。

アパートの場合は、戸建てと異なり金額が大きくなることから融資を受けて購入する不動産投資家が多くなるので、相手が融資許可を得るまでの期間を考慮に入れる必要があるでしょう。

また、築年数が経過しすぎていたり利回りが下がってしまっている場合には、入居者に退去を申し出て更地にして売却を行うことも出きます。

しかし、賃貸借契約上、入居者を保護する傾向が強いことから全員が退去するまでに期間を要したり、退去後の住居のフォローを要求されるなど一筋縄ではいかないでしょう。
地方アパート

新築物件の出口

新築物件の場合はある程度資金が回収できてから売却を検討するのがベストです。

10年程度は大きな修繕費が発生することも少ないので10年を目途に売却を検討し、入居率が高く売却益が大きくなりそうな段階で不動産投資家に売却するようにしましょう。

不動産会社の新築物件は想定利回りが6%台であることが多いので、入居者が確保できるかわからないなどの理由から減額を申し出て、満室になってからすぐに不動産投資家に売却するという方法もあります。

新築物件の場合は、過去のデータがなく入居率などを予想しづらいことから、中古物件よりもより明確な出口戦略を立てておく必要があるでしょう。
新築物件

区分マンションの出口

区分マンションの場合出口戦略は、新築と中古によって異なります。

新築マンションの場合には、最初の購入価格に大規模修繕工事に備えた修繕費の大半が含まれていることが多いため、すぐに売却しても利益をだすことができません。

新築の場合には、10年程度運用を行ってから不動産投資家か入居希望者に売却を検討するのが良いでしょう。

中古物件の場合には、すぐに売却しても利益を出せることがありますが、少し運用してから不動産投資家に売却を行うか入居者に賃貸ではなく購入を促すという選択肢があります。
区分マンション

目的別にみる出口戦略

不動産投資を行う上で出口戦略を行うのは空き部屋リスクや地震や火災などによる物件消失のリスク、経年劣化による修繕費増大や資産価値の下落リスクなどの回避が主な目的でした。

他にどのような目的があるのか目的別に出口戦略について検討してみましょう。

中長期的に資産を増やしたいなら

中長期的に資産を増やしたい場合には、1棟の物件を運用するだけでなく出口戦略を立てながら売却と購入を繰り返すプランが最適になります。

物件を売却することによって自己資金が大きくなることから、それをベースに融資を受けるなどうまく資金を活用することができるでしょう。

投資の最初の方は比較的高利回りの中古物件を中心に運用し運用効率が良くしていきますが、運用を進めてある程度行く中で築年数が浅いなど資産価値の高い物件を交えていくことによって出口戦略が立てやすくなります。

資産価値の高い物件に切り替えていくことで、不動産投資の安定性を図るだけでなくリスク回避にもつながるので、出口戦略をしっかりと見据えることが大切になってくるでしょう。
中長期

税金対策なら

不動産の家賃収入は総合課税の対象となるため、給与所得などの他の所得と合算して課税が行われます。

不動産売却のような場合には金額が大きくなることから、分離課税が適用される上に最初の購入費用や売却に関する経費を差し引くことができるため、少しは節税につなげることができるでしょう。

具体的な税率は以下の通りです。

長期譲渡所得

(5 年を超える所有)

所得税15.315% 住民税5%
20.315%(復興特別所得税込)
短期譲渡所得

(5年以内の所有)

所得税30.63% 住民税5%
39.63%(復興特別所得税込)

以上のように、5年を超えてから物件を売却した場合には譲渡所得にかかる税金が半分程度で済むことから、複数の物件を運用している場合には、5年を超える古い物件から売却していく方が良いと言えるでしょう。

築年数で見る出口戦略

中古物件で売り出されるもののほとんどは築年数が20年以上のものが多く出ています。

築年数が経過していることと空き部屋が目立ちつつあることから物件の価格が安く売りだされていることが多いのですが、果たしてお買い得な物件と言えるのでしょうか?

不動産投資における出口戦略を成功させるには、適切なタイミングで売却を行えるかどうかにかかっています。

売却するタイミングの1つの目安として、減価償却から割り出される耐用年数で検討してみましょう。

減価償却の耐用年数で考える

減価償却の項目をピックアップすると以下の通りです。

構造・用途 耐用年数
木造・合成樹脂造 22年
木骨モルタル造 20年
鉄筋鉄骨コンクリート造

鉄骨コンクリート造

47年
レンガ造・石造・ブロック造 38年
金属造 34年(4mm超)27年(3mm超4mm以下)19年(3mm以下)
電気設備 6年(蓄電池電源設備)
15年(その他)
給排水・衛生設備、ガス設備 15年

耐用年数を経過したから修繕や建て直しが必要になってくるかと言えば、必ずしもそうとは限りません。

しかし、出口戦略を考える上で耐用年数に近づいている物件は、購入検討者が修繕費などの発生を毛嫌いし価格を下げるよう要求するか購入を見送る可能性が高くなってしまいます。

中古物件を購入する場合でもなるべく築年数が10数年のものを購入し、数年以内で売却を行うほうがうまく資産運用を行うことができていると言えるでしょう。

新築物件の場合には、給排水や衛生設備などの生活に必要不可欠な部分の修繕が必要になってくる可能性が高くなってきます。

そのため、10年程運用した後に売却を検討するほうが無駄な出費を防ぎ、かつある程度高い金額で売却を行うことができるようになるでしょう。

区分マンションなどの場合には、この15年の耐用年数の区切りごとに修繕工事が組み込まれることが多くなっています。

特に30年は大規模修繕工事と言って、必要性の有無にかかわらずマンションの管理会社によって大掛かりな工事が行われるのですが、今までに積み立てた修繕金の範囲内で収まるとは限りません。

修繕工事が近付くにつれて修繕金の積立額の増額を行う管理組合が増えてくるので、できる限りその前には売却を行えるようにしましょう。

耐用年数で考える

実体験に基づく出口戦略

実際に不動産投資を行っていてもいざ出口戦略を立てるとなるとなかなか難しいものです。

数年ほど前に主要路線ではないものの駅から徒歩5分圏内の物件を所持していた時には、何かとトラブル続きの物件(不審火や漏水など)だったことから出口戦略の計画を立てるのに苦労しました。

テナントが2つ併設されており、利回りはテナントが埋まると10%を超える良質の物件でしたがテナントがなかなか埋まりません。

結果的に利回りは7~9%の間で推移していましたが、テナントが埋まれば売値が高くなるということにこだわってしまったことで何度か売却のチャンスを棒に振ってしまい、売るに売れない物件になってしまいました。

駅から近いものの主要道路からは外れており、少し暗い感じの印象だったためデリヘルの待機所にしたいというという問い合わせがありましたが、皆さんならどういうご判断をされたでしょうか?

「テナント収入確保!!」と喜ぶ方もいらっしゃるかもしれませんが、私は結局テナントを断りました。

結果的にすぐにアパートの購入希望者が現れて売却しましたが、もし保有し続けていた場合に入居者の方々がテナントを良しとしなかった場合には退去が続出するのではないかと感じたのがその理由です。

この物件の場合は周辺の道路が狭く土地も狭かったことから、出口戦略に売却の選択肢以外が存在していなかったため、危うく出口戦略を失敗していたかもしれない物件でした。

出口戦略を何パターンも想定できる物件も所有しています。

土地が400坪ほどで利回り10%近くを確保している築年数30年前後の物件の話になりますが、このような物件の場合は土地が広いことからいろんな出口戦略を考えることができるでしょう。

物件が木造であるため建て直しも取り壊しも簡単に行うことができるので、再建築を行うか更地として売却するかを常に考えながら運用を行っています。

個人的に出口戦略を立てやすい物件の条件をピックアップしましょう。

  • 築年数が20年前後
  • 土地が広く、物件価格の大半を土地代が占めている
  • 木造建築

この3つの条件を満たしていれば、最悪の場合は更地として売却することができ、かつ土地の値段で購入価格をほとんどカバーできるので築年数が経過していても比較的リスクを抑えながら投資を行えます。

更地

私自身の経験から不動産投資で成功するには、最終的にその物件をどうするのかという出口戦略をいかに明確に立てることに全てかかっていると言えるでしょう。

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もりお@不動産投資の森編集部

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