不動産投資とローンの関係
不動産投資を行う上で、ローンの活用は大きなファクターになります。
通常、不動産投資の利回りは、ローン金利を大幅に上回るのが普通です。この場合、仮に全額ローンで物件を購入できれば、ローン返済してもなおキャッシュが残ることになります。つまり「借りたお金が利益を生む」という、夢のような仕組みが出来上がるわけです。いわゆる「レバレッジ効果」であり、ここだけ着目すれば、ローンが多ければ多いほど儲かると考えてしまうかもしれません。
しかし、ローンの割合が大きいということは、リスクに弱いという宿命も持ってしまいます。
不動産投資には
「空室リスク」「金利変動リスク」「経年劣化リスク」
などいくつかのリスクがつきもので、これらのリスクへの対応力は「返済比率」で決まってきます。つまり、家賃収入に占めるローン返済の比率が小さければ小さいほど少々家賃が低下したり、金利上昇や修繕費用が発生したりしても赤字に転落することがなくなるのです。
一般に返済比率は50%以下に抑えることが健全経営の目安とされており、ローンを組む場合は、家賃収入の半分以下の返済になるよう融資額を抑えることが鉄則になってきます。もちろん、中古物件の場合は返済期限が短くなり、その結果月々の返済額は大きくなるので、借り入れ可能な融資額は低くなります。
このように築年数や物件の構造等によっても、返済期限が変わり、健全経営のための融資額も変わってくるわけです。収支計画を確認し、万が一返済比率が50%を大幅に超えている場合は、投資を見合わせるのが賢明な判断かもしれません。
一方、ローンは使わず「全額自己資金」で物件購入するのがベターなのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。全額自己資金で購入するには、自己資金を貯めるまでの長い時間がかかってしまいます。不動産投資は30年、40年という時間軸で利益を生み出していくものです。“自己資金を作っていたら50歳になっていたと”いうのでは時間が足りなくなってしまいます。
従って、ローンを上手に活用することで、30代から40代には不動産投資に踏み出すことが、最も賢明な方法と言えるでしょう。
ローンの種類
不動産を購入するためのローンと言えば、まず「住宅ローン」を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、これはあくまでも「本人が住むための住宅」を購入するためのローンです。
投資用マンションやアパート購入のためには使えません。収益不動産購入のためには「アパートローン」や「プロパーローン」などを利用することになるのですが、まずはそのあたりの基礎知識をおさらいしておきましょう。
住宅ローンとは
住宅ローンは、本人が居住するための住宅を購入する場合に利用できるローンで、低利かつ長期返済が可能なのが特徴です。
返済財源は給与収入などになるため、融資期間も定年後長くても10年ぐらいが限度となります。従って、購入者の給与と年齢などで借り入れ限度額と返済期間が決まってくることになります。大企業に勤めているサラリーマンや公務員、医者など高収入で身分が安定している方ほど多くの融資が受けられる傾向にあります。
逆に浮き沈みの激しい芸能人やスポーツ選手などは、現在どれほど高収入でも、多額の融資は受けられないとされます。以前はサラリーマンなら中小零細企業であっても問題なく融資が認められていましたが、近年は審査が非常に厳しくなっているのが現実です。
融資対象
満20歳以上の個人
借り入れ目的
借り入れる本人と家族、または借り入れる本人の家族が住むための住宅とそれに付随する土地の購入
金利・融資期間
最も低利かつ、長期返済が可能
審査対象
年収や勤務先、勤続年数、健康状態、保険加入の有無など
あくまでもそこに居住することを前提としたローンなので、原則としては不動産投資に利用することはできません。ただし、居住用として分譲マンションを住宅ローンで購入し、他人に貸し出すということは不可能ではありません。実際、マンション購入後転勤になって、他人に貸しているという方は多く、他人に貸しているからと言って融資を引き上げられることはありません。
ただしその場合、他に居住用の住宅が必要になるので、実際はそのような方法では、殆ど収益は期待できないのが実態です。
アパートローンとは
アパートローンは、文字通りアパートや投資用マンションなどの不動産投資に利用できるローン。購入資金や建設資金はもちろん、リフォームやアパートローンの借り換えなどにも幅広く利用できます。
住宅ローンよりは金利はやや高いものの、借り手の年収や勤務先などに関係なく、物件の収益性などに基づいて審査されるのが大きな違いです。これは、収益不動産には「家賃」という手堅い収入があるためで、物件に“稼ぐ力”さえあれば借り手の収入はあまり影響しないからです。
融資対象
満20歳以上の個人(実質的に個人ともなすことができる不動産管理会社などが利用できる場合も)
借り入れ目的
アパート・マンション等の投資用不動産
金利・返済期間
住宅ローンよりはやや高い金利設定。返済期間は物件による
審査対象
物件の収益性が中心(借入者の収入などを勘案する場合も)
銀行や信用金庫、ノンバンクなどでも幅広く取り扱っており、金利や条件は様々です。マイナス金利政策によって新たな収益源を探す金融機関にとって、不動産投資向け融資は「新たな金脈」とさえ言われ、融資態度はバブル期を凌ぐほど“極めて積極的”だと言われています。
しかし、金融機関が融資を認めたからと言って、事業としての“お墨付き”が得られたと判断するのは危険です。実際、ここ数年急増した「地主系アパート」では、経営に行き詰る例も出始めています。賃貸経営が成功するかどうかは、返済比率を含めて、あくまでも投資家自身が厳しく目利きすることが大原則なのは言うまでもありません。
プロパーローンとは
プロパーローンとは事業性融資とも言い、事業向けの幅広い融資を指します。住宅ローンもアパートローンも、原則は「個人」への融資で、所定の条件(チェックリスト)を満たせば低金利での融資が受けられます。これに対し、プロパーローンは「企業」などの事業資金として自由な用途に使える半面、金利はやや高めに設定されるのが普通です。
アパマン経営も事業である以上、個人事業であってもプロパーローンを利用することができます。金利や返済期間は、企業の財務内容や購入する不動産の評価額、収益性などを総合的に判断して決められることになります。つまり、アパートローンは個人で、しかも一定の条件を満たすことで利用できるものであり、それ以外はプロパーローンの扱いとなり、若干厳しい条件で融資を受けることになるわけです。
融資対象
企業(個人も含まれる)
借り入れ目的
事業資金全般
金利・返済期間
借り入れ企業等の財務内容と、購入不動産の評価額及び収益性を総合的に判断して決定
住宅ローン、アパートローン、プロパーローンの金利は、住宅ローンが最も低く、次いでアパートローン、プロパーローンの順。融資を受ける難易度は住宅ローンが最もハードルが高く、次いでアパートローン、プロパーローンの順と考えて良いでしょう。不動産投資用のローンとしては、まずはアパートローンの可能性を探るのがセオリーとなります。
ABSとは
近年、「ABS」(アセット・バックド・セキュリテイ)という方法が注目を集めています。これは、資産担保証券とも呼ばれ、将来入ってくるキャッシュフロー(家賃収入)を担保にアパートなどの建設資金を借りる仕組みで、ローンを組む必要も、個人保証の必要もなく、不動産投資を行うことができるとされます。
例えば、所有地に6000万円のアパートを建設する場合、ABSで建設資金を調達し、毎月25万円を20年間にわたり金融機関に返済するといったスキームです。家賃はまず金融機関に入り、そこから毎月の返済分を天引きし、残った収入をオーナーに振り込みます。キャッシュフローが確実に見込まれる優良な不動産を所有する場合は、検討に値する方法と言えるでしょう。
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