こんにちは。仙台で小さなアパートを経営しているhayasakaです。
不動産投資の醍醐味は、ローン完済後にあります。
例えば、月額家賃収入40万円の物件で、月額ローン返済額30万円の物件なら、管理委託費用などのコストを差し引いたローン返済中のキャッシュフローはせいぜい5~6万円程度。
これが、ローン完済後は毎月30数万円、年間では400万円近いキャッシュが入ってくるのです。
不動産経営ではこの「ローン完済後の期間」をいかに長く確保するかが、トータルの収益性を大きく左右することになります。
つまり上の例の場合、ローン完済後5年しか経営できない場合は2000万円なのに対し、10年経営できれば4000万円のキャッシュフローが得られるのです。
5年長く経営できるかどうかで、2000万円も収益性が変わってくるのですから、投資判断する際の非常に重要なポイントと言えます。
そこで必要なのが、設備のチェック。
20年、30年先まで入居者に選んでもらえる設備なのかどうかをシビアに判断することが鉄則となってきます。
特に、人口減少・家余り現象が加速するこれからは、古くて使いにくい設備を備えた物件は真っ先に敬遠される恐れが大です。
どんなに安くても、そのような物件に投資してしまうと、深刻な空室率に見舞われる危険性があります。
そこで今回は、要注意設備のひとつである「バランス釜物件」について学んで行きましょう。
目次
バランス釜物件の基礎知識
バランス釜とは
今から50年前ぐらい前に普及した、浴槽と風呂釜が一体になったようなお風呂の事を呼びます。
風呂釜が浴室内にあり、外から空気を取り込んで燃焼させ、煙突から燃焼ガスを排気するという仕組みです。
浴室内の空気を燃焼に使わないため、一酸化炭素中毒などの危険性が低く、追い炊き機能やシャワーもついていて、お風呂の機能としては遜色がありません。
電気を使わないため、プロパンガス物件なら停電でも使えるといったメリットもあります。
しかし、バランス釜は「和室」「和式トイレ」とともに“3重苦物件”とさえ呼ばれる不人気設備です。
もちろん、風呂なし物件よりは断然優れているのは間違いありませんが、家余り時代が加速するこれからは、敬遠される懸念は否めません。
では、どんなデメリットがあるのか整理してみましょう。
バランス釜のデメリット
- 浴槽が狭い
風呂釜が浴槽の横に設置されているため、その分浴槽が狭くなっています。
いわゆる体育座りをして入浴するような感じになります。 - 燃焼音がうるさい
燃焼部分が浴室内にあるので、屋外給湯器に比べて燃焼音が大きいという欠点があります。 - 給湯力が弱い
バーナーが小さいため、寒い時期などはお湯張りに時間がかかったり、シャワーの水圧が弱くなったりする場合があります。 - 見た目が古臭い
バランス釜自体は現在でも製造されていますが、1990年代以降は殆ど設置されなくなっています。
機器も古くなっており、錆や汚れが目立つ場合が多く、少なくとも釜自体は交換しないと故障などの恐れも否めません(何度も修理するより新しくした方が安上がり)。
さらに、築30年以上の物件が多いため、浴室がタイル張りであるなど、見た目に古く、カビなどで汚れている事も多い傾向にあります。
また、バランス釜物件は、台所に給湯設備がなかったり、あったとしても瞬間湯沸かし器だったりするため、古臭さは否めません。
平成生まれの若者にとっては、見たことも触ったこともない”昭和の設備“。
昭和生まれの方に置き換えれば、大正時代の設備が付いているようなものですから、どんなに機能的には問題なくても、心理的に敬遠されるのは仕方のない事です。
バランス釜物件はアリ?なし?
安く買って安く貸す
バランス釜物件は、東京などの人気エリア以外ではすでに敬遠ぎみにあり、家賃も相場よりも安く設定されているはず。
従って、収益還元法(家賃収益をもとに不動産価格を試算する方法)などから、バランス釜物件は、相場よりも安価に売り出されることが多いと思われます。
取得費用が抑えられれば、それだけ家賃を抑えることが可能なため、安さを武器に満室を狙うという戦略も一応は成り立ちます。
しかし、家余り時代が加速して行けば、どんなに安くても「バランス釜じゃねぇ…」と見向きもされない恐れがあります。
屋外給湯器タイプの物件が今よりもはるかに安く貸し出される可能性があるからです。
また仲介会社も、なかなか決まらないバランス釜物件は紹介したがらない懸念も出てきます。
家余り時代は、質の良い物件が安価に貸し出される時代であるため、家賃が安いことは必ずしも武器にはならないという点をしっかり認識しておくことが重要です。
リフォームして貸し出す
バランス釜では現代の若者にアピールできない以上、思い切ってユニットバスなどにリフォームして貸し出すという方法も考えられます。
バランス釜を屋外給湯器に交換し、その分広めの浴槽に交換すると大体30万円ほどの費用となります。
ただし、これだけではマイナス評価をゼロに戻す程度の効果しかありません。
浴室内もカビなどで汚れているので、最新のユニットバスなどに浴室内すべてを一新すると、プラス評価に変わり、家賃を多少引き上げることが可能になってきます。
浴室内を一新するには50万円程度はかかります。
さらに、キッチンへの給湯設備もあって当たり前の時代です。
配管工事や混合水栓への交換も必要ですし、ついでにコンロやキッチン周りの化粧直しをした方がベターです。
また、シャワートイレやインターホン、ディンプルキーなどへの交換なども効果的な方法です。
これらのリフォームに100万円かけるとして、6世帯なら600万円、10世帯なら1000万円の費用が必要となります。
これだけの費用をかけて、ようやく現代の若者にアピールできる物件にできるという事です。
つまり、これらのリフォーム費用を足しても相場よりも安い物件であるのなら、購入を検討する価値があると言えます。
しかし、そこまで安くないというのであれば、さらなる値引き要求を試みて、難しいようなら投資は断念した方が無難です。
ただ、リフォームすることで、うまくいけば20年、30年先も入居者にアピールできる物件になるため、ローン完済後の収益性も大きく期待できるでしょう。
その辺の収益性も計算して判断することが大切です。
プロパンガス会社への協力要請
検討しているバランス釜物件がプロパンガスを使っているのなら、プロパンガス会社に協力を打診してみるという方法もあります。
プロパンガス会社の競争が激しいエリアでは、業者の切り替えを条件に設備交換費用を一部または全部引き受けてくれる場合があります。
設備機器はガス会社が所有し、オーナーは一定期間それを借り受けるなどという形を取り、他のガス会社に切り替えられないようにするわけです。
現在供給しているガス会社を調べ、別のガス会社に打診すると、具体的な協力条件を出してくれるかもしれません。
そうなると、リフォーム費用を抑えられるので、現オーナーへの値引き交渉額も引き下げられ、3者(現オーナー・貴方・ガス会社)のソロバンが合ってくる可能性があります。
もちろん、ガス会社から出て来た協力条件を、現供給ガス会社にぶつければ、さらにそれを上回る協力を提案してくれるかもしれません。
ガス会社同士を競い合わせてより良い条件を引き出そうとする行為には、少々抵抗を感じる方もいるかもしれません。
しかし、一般企業なら普通にやっていることでもあります。
不動産投資家たるもの、このぐらいの駆け引きができないようでは、成功をつかむことはできないと心得る必要があります。
まとめ
バランス釜物件は今からおよそ50年前に広がり、1990年代には殆ど使われなくなった設備。
当然、バランス釜物件は築30年以上の築古物件が多く、キッチンやトイレ、居室も古い“不人気物件”の可能性があります。
バランス釜自体は追い炊きもでき、シャワーも使えるなどお風呂としての機能には問題ないものの、古臭いイメージは否めず、家余り時代(超借り手市場)が加速して行くことを考えると、敬遠される懸念があります。
バランス釜物件は相場よりも安く売り出されていることが多いと思われますが、安い家賃を武器にバランス釜のまま貸し出す方法は、将来的には厳しくなると見られます。
良質な設備を備えた物件が手ごろな家賃で供給される可能性が高く、“安かろう、悪かろう”では見向きもされなくなる恐れがあります。
バランス釜をユニットバスなどにリフォームする費用は、1戸あたりおよそ30万円程度。
しかし、キッチンやトイレ、セキュリティ機能なども高めないとこれからの時代には厳しくなるので、1戸当たり100万円かけてリフォームして採算に乗るかどうかを検討すべきです。
その場合、賃貸住宅としての寿命が延びることで、ローン完済後の収益性も大きくなる可能性があります。
その点も踏まえて投資判断することがポイントです。
また、プロパンガス会社同士を競わせることで、設備更新費用を抑える手法も検討してみましょう。
hayasaka
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