こんにちは。仙台で小さなアパートを経営しているhayasakaです。
不動産投資関係のサイトなどを見ていると、たまに「不動産投資自体が赤字でもメリットがある」という趣旨の記事を目にすることがあります。
「節税効果がある」「銀行預金より有利」「生命保険代わりになる」などといった論陣が張られていますが、果たしてこれは本当なのでしょうか?
もちろん、記事の内容は嘘ではありません。
しかし、甘い前提に立った話や、あえてマイナス要因には触れずに利点だけを抜き出した“とんでも理論”が殆どです。
不動産投資初心者の知識不足をいいことに“口車に乗せて売却してしまおう”という悪意を持った業者が裏で糸を引いている可能性すら心配されます。
そこで今回は「不動産投資は赤字でも得をする」という、とんでも理論の検証と、万が一赤字に転落した場合の対処法、そしてそもそも赤字にならないための鉄則などについて学んで行きましょう。
目次
「不動産投資は赤字でも得する」は本当か?
収支シミュレーションが赤字なのに…
投資用の区分所有マンション(いわゆるワンルームマンション)などでは、投資した場合の収支シミュレーションが「赤字」という物件が堂々と売られています。
多くの方が「え?わざわざ投資して、毎月赤字なの?」と驚くと思うのですが、そんな反応にも自信満々に切り返すのが“やり手営業マン”。
さも「不動産投資とはそういうものですよ」と言わんばかりに自信たっぷりに切り返してくるのです。具体的に見ていきましょう。
節税になる?
「仮に赤字が出ても、節税になるから大丈夫なんですよ!」というのが、切り返し話法その1。
確かに、サラリーマンの給与所得や法人の事業所得など他に所得額を得ている方は、不動産投資で発生した赤字や、減価償却費を損益通算するという節税方法により、所得金額を圧縮し、所得税率を抑えるができますから、確定申告、青色申告を行う事により、払い過ぎた所得税額が還付されます。
所得割額が低くなれば、住民税も抑えることが出来ます。
しかし、これは本末転倒な理屈で、所得控除での節税よりも、不動産で収入を増やすのが不動産投資本来の目的。
見苦しい言い訳としか言いようがありません。
しかも「損益通算の特例」という規定があり、土地の借入金額の利息は赤字が出た場合は、まるまる経費には認められません。
赤字から土地の借入金の利息を引いた額だけが損益通算の対象になるので注意が必要です。
(例)不動産所得金額:100万円の赤字、土地にかかる利息:60万円の場合
損益通算対象額(他の所得と通算できる額):100万円-60万円=40万円
さらに言えば、業者が提示した収支シミュレーション自体も甘い可能性があります。
つまり、あくまでも入居者がいる場合の収支計算でしかなく、実際には空室が発生する事もあるのです。
その場合は、空室が発生している期間は家賃が入らなくなるので、収支はさらに悪化するのです。
「月々1~2万円ぐらいの赤字なら何とかなるか…」などと安易に考えるのは大変危険です。
また、固定資産税や相続税が安くなるという事を利点に挙げる場合もありますが、それはあくまで土地を持っている方の話。
遊休地に賃貸住宅を建てることで課税評価額が引き下げられ節税額につながるという事であって、そもそも遊ばせている土地を持っていない方には無関係なのです。
銀行預金より有利?
「毎月2万円程度の赤字が20年続くことになりますが、これは見方を変えれば毎月2万円程度の負担で20年後に2000万円の収益不動産を手に入れることでもあります。毎月2万円貯蓄しても殆ど金利もつかない銀行預金と比べても断然有利ですよね!」これが切り返し話法その2です。
この場合も、もしも空室が発生したら毎月の赤字は2万円どころではなくなります。
また、20年後には大規模なリフォーム費用も発生するでしょうし、売却価格も購入価格を大幅に下回ると見るべきです。
つまり収支計算方法前提が実に甘々なのであり、実際は赤字だけが積み重なるという事態すらあり得るのです。
ただし「返済期間を短く設定して、毎月は赤字でも早く返済する」という提案なら「良い赤字」と言えるかもしれません。
ローン金利は返済期間が長くなるほど雪だるま式に増えるものなので、返済期間を短く設定することはローン利息総額を効果的に圧縮できます。
また、金利はいずれ上昇するはずなので、そのリスクを回避する意味でも、返済期間を短くしておくのは賢明な方法と言えます。
生命保険代わりになる?
「団体信用生命保険が付いていますので、万が一亡くなった場合はご家族にローン返済のない収益不動産を残すことができます!」これが、切り返し話法その3。
「団体信用生命保険が付いていますので…」などと、さも特典のように言っていますが、実際は金融機関がとりっぱぐれないための保険。
保険料を支払うのは借り手であり(ローンの支払いの中に組み込まれている)、死亡と高度障害状態になった場合以外は適用にならない(特約を付ければ範囲を広げることは可能)という、思わぬ落とし穴もあります。
投資用のワンルームマンションなどのセールストークで良く用いられる話法ですが、注意が必要です。
キャッシュフローが赤字に転落すると…
キャッシュフローは黒字が大原則
このように、不動産投資の世界では「キャッシュフローが赤字でも得をする」という論法は“まやかし”に過ぎないというのが、筆者の実感です。
地価が上昇していた時代は、値上がり益(キャピタルゲイン)が発生したため、少々キャッシュフローが赤字でも不動産投資を行う価値がありました。
しかし、現在はこのようなキャピタルゲインは期待薄なので、あくまでもキャッシュフロー(インカムゲイン)のみで投資判断するのが鉄則です。
ところで、もしも購入した投資物件のキャッシュフローが赤字に転落した場合、どのような打開策があるのでしょうか?
いくつか見ていきましょう。
赤字対策①管理会社の変更
キャッシュフローが赤字に転落する要因としてまず考えられるのが空室率の拡大。
その原因には、近隣への競合物件の出現、所有物件の老朽化など、様々考えられますが、「管理会社の客付けが不十分」なことで起こる空室もあります。
この場合は、管理会社を変更することで空室率が改善する可能性があります。
特に管理委託料が格安の業者の場合“それなり”の管理しかしていない懸念があるため、管理委託料は高いが実績のある業者に相談して、管理を切り替えてみる価値はあります。
ただ、運良く優良な管理会社に出逢える保証はなく、必ずしも決定打になるとは言えません。
赤字対策②物件へのテコ入れ
建物や設備が老朽化してくると、なかなか埋まらなくなって行くため、リフォームやリノベーションをして魅力度を引き上げるという方法は有効です。
しかし、リフォームやリノベーションには莫大な費用が発生するため、あまり現実的な解決策とは言えません。
そこで試してみたいのが、ガス会社などへの協力打診。
アパートなどの場合、プロパンガスを利用している場合が多く、協力を打診すると給湯器やシャワートイレ、モニタ―付きドアホンへの交換をガス会社の負担で行ってくれる場合があります。
ガス会社としては業者を切り替えられるよりも、機器代金を負担してでも契約を継続してもらう方が得策だからです。
また、壁紙の一部を流行のアクセントクロスに変えたり、数万円の家具や雑貨を設置しておき、そのまま入居者にプレゼントしたりといった方法も、わずかな費用で入居率アップにつながるので試す価値はあります。
それでも、物件は年々老朽化して行くので、このようなテコ入れ策は抜本的解決にはならないのは言うまでもありません。
収支改善は期待できない対策
そのほか、赤字解消に有効な方法として次のようなものも紹介されていますが、効果には疑問符が付きます。
ローンの借り換え
高い金利の時に組んだローンは、安い金利のローンへと借り換えれば、毎月の返済額を抑えられる可能性はあります。
しかし、現在は超低金利時代であり、今借りたローン金利よりも安い金利のローン商品が将来登場するとは考えられません。
つまり、いざとなったらローンの借り換えで赤字脱却を図るという選択肢は、これから投資する方(これからローンを組む方)にはないと考えるべきです。
売却
「いざとなったら売却すれば投資した資金ぐらい回収できるのでは?」と安易に考えるのは危険です。
まず、人口減少・家余り現象が加速するこれからは、購入価格よりも売却価格が大きくなるという事はまず考えられません。
しかも売買には安くない手数料や税金もかかります。
新築物件の場合、中古物件になるだけで何割も価値が低下します。
売却によってローンを完済するのはまず無理であり、したがって売却に成功しても手元には多額の負債だけが残ることになるでしょう。
このように、不動産投資においてキャッシュフローが赤字に転落した場合、赤字からの脱却は決して容易ではなくなります。
では、どうすればキャッシュフローが赤字に転落する事態を回避できるのでしょうか?
赤字転落を回避するには
全額自己資金なら無敵
不動産投資で赤字に転落する要因としては、空室の発生、金利の上昇、建物の老朽化、競合物件の出現などが挙げられ、これらは避けようのないリスクと言われています。
しかし、これらのリスクに全く影響を受けない不動産投資の方法があります。
それはローンを組まずに全額自己資金で購入する方法です。
ローンがなければ、たとえ入居者がゼロでも赤字にはなりません(厳密には固定資産税などのコストは多少ありますが)。
1人でも、1カ月でも、入居者がいればたちまち黒字です。
また、ローンがなければ金利がいくら上昇しようが関係ありません。
建物の老朽化に対しても、家賃収入がほぼまるまるキャッシュフローになるわけですからリフォームで老朽化対策を行うのも容易です。
競合物件が出現したとしても、いくらでも家賃を引き下げる余力がある、つまり家賃で競合に打ち勝つことができるというわけです(多少家賃を引き下げても空室が出るよりも満室経営の方が収益面で有利なのです)。
自己資金の割合を厚くするのが鍵
つまり、不動産投資では自己資金の割合が高ければ高いほど、リスクに強く赤字に転落しにくくなるのです。
無借金で不動産投資できる方は限られるでしょうが、自己資金の割合を多くしてできるだけ借り入れを少なくすれば、赤字転落のリスクを抑えることができるわけです。
従って、赤字回避を図るなら、自己資金の割合をいかに高くするかを考えるべきで、そのためには「まとまった自己資金が貯まるまでは投資をしない」「自己資金の3~4倍以内の安価な物件(地方物件など)をじっくり探す」といった姿勢が資産運用では重要です。
まとめ
投資用ワンルームマンションなどに見られる「赤字でも投資する価値がある」というセールストークを安易に信じるのは危険です。
値上がり益(キャピタルゲイン)が望めない現代では、キャッシュフロー(インカムゲイン)で黒字が出ることが鉄則であり、業者が示す収支シミュレーションでさえも赤字になっている物件は論外と言えるでしょう。
また、キャッシュフローが赤字に転落した場合、そこから黒字に転換するのは決して容易なことではありません。
キャッシュフローが赤字に転落しやすいかどうかは、自己資金と借り入れのバランスで決まるので、できるだけまとまった自己資金を作りながら、投資総額を抑えられるようなお手頃物件を探してみることが重要です。
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