区分マンション投資を行っている人の中には、いずれはアパート投資にステップアップしたいと考えている人も多いのではないでしょうか。ひとことでアパートと言っても、新築アパートと中古アパートがあります。そして、新築アパートと中古アパートでは全く異なる投資手法が用いられます。
今回は、新築アパート投資のやり方に付いて、詳しく解説することにいたします。
目次
新築アパート投資の種類
新築アパート投資は、さらにいくつかの方法に分かれます。それぞれについて、特徴を説明いたしましょう。
建売新築物件
アパートが完成した状態で引き渡されるのが、建売アパートの特徴です。購入後、すぐに入居者の募集を開始することができることと、土地を探したり建物のプランを考えたりする煩わしさがないというメリットがあります。
- 短期間で入居者の募集を開始することができる
- 物件購入に関するもの以外の手続きが発生しない
新築アパートの中でも、比較的手軽に始めることができる建売アパート投資ですが、いくつか注意すべき点もあります。
建売の新築アパートには、1部屋の専有面積が20㎡に満たない造りのものも多く、なかには15㎡以下という物件もあります。部屋数をなるべく多く確保できるよう、1部屋あたりの専有面積を小さくするのです。
単純に部屋の広さが2倍になっても、2倍の家賃を設定することはできません。つまり、部屋数を多くすると、より多くの家賃収入が得られることになります。ところが、そのような極小の部屋は敬遠されることも多く、ターゲットも単身者に限られるため、期待どおりに入居者を集められないというリスクも負うことになります。
また、販売図面に掲載されている利回りも、検証してみる必要があるでしょう。入居者が居ない状態では、利回りはあくまでも想定に過ぎません。そして、利回りを高く見せるために、想定家賃を高く設定していることだってあるかもしれません。近隣物件と比べてその物件の賃料設定が適切なのか、注意深く検討してみることをおすすめします。
建築条件付き土地
建築条件付き土地とは、その土地に建てる建物について、売主が指定した業者と一定期間内に請負契約を結ぶとする条件が付いた土地のこと。建てられるアパートのおおまかな設計が決まっているため、思いどおりのアパートが完成するわけではありません。
とはいえ、大まかな設計が決まっているというのは、購入者の手間が減るというメリットとも捉えることができます。建っている状態のものを売る建売に対して、建築条件付き土地は、土地を売ってからある程度スペックが決まった建物を建てるため、「売り建て」と呼ばれることもあります。
また、後にご紹介する、土地から探してアパートを建てる形式ほどではありませんが、自由度は建売アパートよりも高くなります。
このように、建築条件付き土地は、建売アパートと土地から探してアパートを建てる場合、双方の特徴を少しずつ併せ持つやり方です。
- 建売アパートより自由度が高い
- アパートの設計がある程度決まっているため、設計の手間が省ける
SUUMOにおける建築条件付き土地の掲載は、建築条件がない土地と区別できるよう、次のように「建築条件付土地」と明記されています。
土地から探す
土地から探してアパートを建てるというやり方では、土地探しに始まり建物の完成に至るまで、一から十まで自分が関わることになります。
よって、いちばん時間と手間を要する新築アパート投資ということになります。土地から探す場合は、この煩わしさが大きなデメリットと言えるでしょう。しかし、土地から探してアパートを建てると、このデメリットを補って余りあるメリットを享受することもできます。
投資経験が浅い投資家が新築アパート投資を始める場合、多くの人が建売アパートを選ぶことでしょう。ところが、自分が希望するエリアに建売アパートが販売されているとは限りません。幸運にも、希望どおりのエリアに建売物件を見つけられたとしても、駅から遠かったり競合物件が多かったり、投資には向かない環境であることも多々あります。
しかし、自分で土地を探しさえすれば、自分の希望どおりの場所にアパートを建てることができます。
建売アパートや建築条件付きの土地にも増して、広さや間取りなど設計の自由度が高くなることも、土地から探してアパートを建てることの魅力でしょう。エリアや立地からターゲットとなる入居者をイメージし、その入居者のニーズに合わせた設計をすることも可能です。建売や建築条件付き土地に比べて介在する業者が少ないため、リーズナブルな価格でアパートを建てられることも、この手法の魅力でしょう。
- 希望のエリアにアパートを建てられる
- 思いどおりの間取り・広さを実現できる
- リーズナブルな価格でアパートを建てられる
土地から探す新築アパート投資の流れ
価格が抑えられるのであればと、土地から探す新築アパート投資にチャレンジしてみたいと感じる人もいることでしょう。
でも、進め方が分からない人が多いのではないでしょうか。そのような人は、これからご説明する土地探しから引渡しまでの流れを、参考にしてみてください。
次の図は、土地探しから竣工・引渡しまでの流れを表したものです。そのうち、オレンジ色になっている3つの過程で支払いが発生することになります。
1. 土地を探す
土地探しは、不動産会社の訪問のほか、SUUMO、アットホーム、ホームズなどの不動産ポータルサイト、楽待・健美家などの不動産投資物件ポータルサイトなどでも行うことができます。
土地探しでは、エリアと価格が主な条件になりますが、建ぺい率・容積率・権利(所有権・借地権)などの諸条件も確認しながら探すことをおすすめします。そして、条件に合う土地を見つけたら、買い付けを入れます。
他にも斜線規制や条例などで容積率に制限がある場合もあります。建築士や設計士など専門家とあらかじめ打ち合わせをして、「その土地にどんな建物が建つのか」を把握できるようにしておく準備が必要
建ぺい率
建物の建築面積に対する制約です。建ぺい率が高い土地ほど、建築面積の大きな建物を建てることができます。例えば、面積100㎡・建ぺい率60%の土地には、建築面積60㎡までの建物を建てることができます。
容積率
建物の床面積に対する制約です。容積率が高い土地ほど、床面積の大きな建物を建てることができます。例えば、面積100㎡・容積率200%の土地には、床面積200㎡までの建物を建てることができます。
所有権および借地権
所有権が得られる土地は高額で取引されるため、所有権の土地を購入してアパートを建てた場合の利回りは、借地権の土地に建てた場合よりも低くなります。その一方で、借地権付きの土地にアパートを建てる場合、土地の購入費用が掛からない代わりに、地主に一定の地代を払い続けなければなりません。そして、所有権の土地は担保価値が高いため、融資が受けやすいという特徴があります。他方、自分の所有物ではない借地権の土地を担保提供することはできません。よって、借地権の土地を利用する場合は、資金調達が課題になることも考えられます。
条件に合う土地を見つけたら買付けを入れ(所有権の土地の場合)、金融機関に融資の申請を提出します。ちなみに、借地権の土地にアパートを建てる場合は、借地権の設定を行うことになります。
2. 土地の購入
融資の承認が下りたら、土地の売買契約を結びます。そして、融資が実行されると同時に、土地の引渡しを受けます。
施工会社の選定・見積もり
施工会社の情報収集は、建築会社やハウスメーカー、工務店などのホームページだけでなく、建築関連の雑誌などもチェックしてみるとよいでしょう。施工会社を選定する際は、忘れずに次の3点について確認するようにしましょう。
- 施工実績
- アパート建築の実績
- アパート建築が得意かどうか
施工会社が決まったら、建物のプランに移ります。全てを自分で設計するのは大変なので、施主の希望を取り込んでもらうとともに、土地の形状や条件に応じたプランを施工会社に提案してもらうとよいでしょう。プランの提案と併せて見積もりも依頼しておくと、よりスムーズに作業を進められます。
4. 工事請負契約の締結
プランが決まったら、施工会社と工事請負契約を締結します。施工会社に対し、この時点で契約金(着手金)を支払います。
5. 工事準備および着工
工事に先立って、建築確認申請を行います。建築基準法の規定により、着工前に敷地や構造、設備などの内容が記載された建築確認申請書を、都道府県や市区町村、指定確認検査機関に提出し、検査員の確認を受けなければなりません。着工にあたっては、工事の概要を説明して近隣住民の理解を得ておくことが大切です。そうすることでクレームなども減り、工事をスムーズに進めることができます。
6. 管理会社の選定および募集開始
建物の引渡しを受けた直後から入居してもらえるのが、大家さんにとってはベストです。そのためには、工事と並行して管理会社を探し始める必要があります。早期の満室を目指すのであれば、入居者の募集や提案力に長けた管理会社とお付き合いしたいものです。家賃は、相場を考慮しながら管理会社と相談して決めるとよいでしょう。新築物件では、相場より高めの家賃でも満室を目指すことができます。初めは、強気の家賃設定に挑戦してみてはいかがでしょう。
7. 竣工(完成)・引渡し
施主は、工事責任者とともに完成した建物をチェックしながら工事完了の報告を受けます。不明な点や気付いたことがある場合は、その場で確認するようにしましょう。そして、工事代金の残金の支払いと同時に、完成した建物の引渡しを受けます。
新築アパート投資の平均利回り
新築アパート投資では、どのくらいの利回りが期待できるのか、検証してみることにしましょう。収益物件の利回りは、エリアごとに異なるのが一般的です。新築アパート投資の利回りも、エリアをごとに考えてみることにしましょう。
東京23区
地価が高い東京23区のような都市部では、多くの場合、限られた面積の土地にアパートを建てることになります。次のような条件のアパートを建てるとして、利回りをシミュレーションしてみましょう。
- 土地面積:100㎡
- 間取り:ワンルームまたは1K
- 専有面積:20~25㎡
- 世帯数:6
23区の住宅街の土地の単価を50万円/㎡とすると、土地の購入費用は5,000万円。そして、木造アパートの建築単価は15万円/㎡ほどです。床面積150㎡のアパートを建てるとすると、アパートの建築費用は2,250万円になります。登記費用などの諸費用含めて、アパートの購入には総額7,500万円ほど掛かることになります。
次に、この物件から得られる家賃収入について検証してみましょう。1部屋あたりの家賃を7.5万円とすると、1カ月の家賃収入は45万円、年間の家賃収入は540万円ということになります。利回りを計算すると、次のようになります。
23区のアパートの利回り=540万円÷7,500万円×100=7.2%
都市部近郊の郊外
次に、23区以外の東京圏など、大都市近郊にアパートを建てるとしましょう。駅から徒歩10分程度の住宅街に、上記「東京23区」の例と同じ仕様のアパートを建てるとします。
大都市近郊とはいえ、郊外に向かうにつれて土地の価格は下がります。仮に土地の単価を30万円/㎡として、土地の価格を計算してみましょう。郊外では23区よりも土地が2,000万円安く仕入れられることになります。地域によって建築費用が異なることはないため、アパートの建築コストは23区と変わりません。よって、トータルのコストは5,500万円ということになります。
では、家賃はどうでしょう。郊外とはいえ新築物件です。東京のターミナル駅までの所要時間が30分程度であれば、6.5万円で賃貸することは十分可能でしょう。この家賃をもとに利回りを計算すると、次のようになります。
郊外のアパートの利回り=6.5万円×6世帯×12カ月÷5,500万円(トータルコスト)=8.5%
8%以上を目指す
上記は、平均的な地価・建築費・家賃をもとに計算したシミュレーションに過ぎません。とはいえ、郊外にアパートを建てる場合は、8%以上の利回りは目指したいものです。また、形状が悪かったり道路付が悪かったりする土地は、相場よりも安く購入することも可能です。
建築プランや内装に工夫を凝らし、競合物件にはない特長を備えたアパートに仕上がれば、差別化を図ることができます。つまり、より高額な賃料設定が実現する可能性もあるということです。より収益性の高い高利回りアパートを作れるかどうかは、投資家の経営者としての手腕に掛かっていると言ってもよいでしょう。
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