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かぼちゃの馬車のスマートデイズが民事再生!オーナーへの影響と被害弁護団の行く末は?

投稿日:2018年4月14日 更新日:

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先日、女性向けのシェアハウスである「かぼちゃの馬車」のサブリース業を運営していた「スマートデイズ」が銀行融資の審査時に「虚偽の書類提出」をしていた疑惑に関する記事をご紹介しました。

また、別のウェブサイトになりますが、「不動産投資で自己破産?かぼちゃの馬車サブリース解除の対策」についても書きました。

その後、スマートデイズは正式に東京地方裁判所に「民事再生法」の申し立てをしたとのことです。

しかも、かぼちゃの馬車のオーナーたちは、被害者団体を作ってスマートデイズを訴えたところだったのです。

今後、スマートデイズはどのようになっていくのでしょうか?そもそも民事再生とはどのような手続きで、オーナーにどんな影響があるのかも心配だという方が多いでしょう。

今回は、かぼちゃの馬車・スマートデイズの民事再生申立とオーナーへの影響、被害弁護団の行く末、それとスマートデイズが設定したという「債権譲渡登記(質権設定)」の意味について、ご説明します。

かぼちゃの馬車

これまでの経緯の概要(サブリース契約の仕組みとかぼちゃの馬車の破綻)

まずは、スマートデイズ(かぼちゃの馬車)の事件について、これまでの概要を簡単にご紹介します。

かぼちゃの馬車というのは、都心を中心にした女性向けシェアハウスのシリーズで、「サブリース」によって、運営されていました。

サブリースとは、物件の一括借り上げのことです。サブリース会社が不動産オーナーから一括で物件を借り上げ、エンドユーザーに物件を転貸する方法です。

不動産オーナーが物件を貸す直接の相手はサブリース会社となり、サブリース会社が不動産オーナーに賃料を支払います。個々の入居者は、サブリース会社へと賃料を支払うため、個々の賃借人と不動産オーナーとの間に直接の賃貸借契約関係はありません。

サブリース契約

かぼちゃの馬車のサブリース会社だった不動産業者が、今回問題となっている「スマートデイズ」です。

スマートデイズは、昨年から経営状態が悪化しており、不動産オーナーへの賃料を滞納していましたが、ついには経営破たんして一切の賃料を支払わなくなったのです。

このことで、高額な不動産ローンを組んでいた不動産オーナーたちは、金融機関への支払いも苦しくなって、大変大きな不利益を受けることとなりました。中には、「自己破産を検討しなければならないのか?」という状況の人まで現れていたのです。

これが、スマートデイズ問題のこれまでの概要です。

スマートデイズが申し立てた民事再生とは?

【要点】

  • 4月9日にスマートデイズが民事再生申し立てをした
  • 民事再生は再生が目的で破産とは別物
  • 未払い家賃は10%程度しか返済されない可能性が高い
  • 配当を受け取れるのは1年以上先になる可能性が高い
  • 個別の請求や直接請求はできない

スマートデイズ

スマートデイズが、民事再生を申し立てた

これまで、スマートデイズは破たん状態となり、不動産オーナーたちに対する賃料を支払わなくなっていましたが、これはあくまで「事実上」の状態であり、法的に「倒産手続き」に入っていたわけではありませんでした。

ところが平成30年4月9日、ついにスマートデイズは東京地方裁判所宛に「民事再生」の申し立てをしました。

負債総額は約60億円ということです。

その中には、当然不払いになっている不動産オーナーたちへの賃料も含まれています。

それでは、民事再生とはいったいどのような手続きなのでしょうか?破産との違いもよくわからないという方が多いでしょうから、以下で順番に見ていきましょう。

民事再生とは

民事再生とは、倒産手続きの1種であり、企業や個人が「再生」するための手続きです。

「再生」が目的なので、企業が民事再生をするときには、その企業は消滅することはありません。

負債が増えすぎて支払いが困難になった企業や個人が民事再生の申立をすると、一定の要件のもとに負債を圧縮してもらうことができ、圧縮された負債を数年の間に弁済すると、債務を完済した扱いとなり、残りの債務の支払いを免除されます。

その後は負債の無い企業として、元のように経営を続けていける、という仕組みです。

以上のように、裁判所が介入して債務を大きく減額することにより、企業が存続できるのが民事再生です。

民事再生

経営者は交代するのか?

民事再生の場合、経営者が交代する必要もありません。多くの場合、元の経営者が残留して、自分たちで再生計画を立てて、再生しようと試みます。

今回のスマートデイズも、経営陣は交代せずに、自分たちの手でスマートデイズを建て直そうとするでしょう。

配当率は、どのくらい?

それでは、今回スマートデイズが民事再生を申し立てたことにより、不動産オーナーたちにどのような影響があるのでしょうか?不払いになっている賃料が払われることがあるのか、払われるとすればどのくらいのお金が戻ってくるのか、見てみましょう。

民事再生は、「負債を減額」する手続きです。

不動産オーナーたちはスマートデイズに対する債権者ですから、民事再生法の手続きに従って債権の支払いを受けることができます。

民事再生法の規定による支払いのことを「配当」と言います。

しかし、債権は民事再生によって大きく減額されてしまいますから、配当率は高くはありません。

多くの場合、10%以下になってしまいます。

たとえば配当率10%の場合、500万円分の賃料不払いになっている不動産オーナーでも、50万円しか返ってこないということになります。これでは、「1ヶ月分のローン返済にも足りない」という方が多いでしょう。

しかも、このお金が支払われるのは、民事再生の手続きがきっちり終了して、スマートデイズによる再生計画が認可された後です。民事再生の手続きには何ヶ月もかかるので(多くの場合、半年~1年以上かかります)、配当を受けられるとしても遠い将来になってしまいます。

このように、いったん民事再生になってしまったら、まとまったお金を取り戻すことはかなり難しくなってしまいます。

民事再生中に、個別に請求はできないの?

かぼちゃの馬車の被害者である不動産オーナーたちは、スマートデイズによる賃料不払いに遭っているので、法的にスマートデイズに対して「賃料支払い請求権」を有しています。

それであれば、裁判などを起こしてスマートデイズから取り立てをすることができないのでしょうか?

実は、民事再生が始まると、こうした個別の権利行使が制限されてしまいます。つまり、民事再生の申立後に、個別に裁判を起こしたり強制執行(差押え)をしたりすることはできないのです。そこで、民事再生中に、民事再生手続きを無視して自分だけ先に賃料を回収することはできません。

結局、不動産オーナーたちは、民事再生手続きの進行を見守るしかないのです。

経営者個人への追及について

このように、スマートデイズが民事再生したことにより、スマートデイズに対する責任追及はかなり厳しくなってしまいますが、経営者個人に対する損害賠償責任追及は、これとは別に認められます。

民事再生法は、以下のようなケースにおいて、取締役への責任追及を認めています。

違法配当等をした場合

粉飾決算により、本来は配当できないのに配当したケースです。違法配当の金額が損害賠償額になります。

株主の権利行使に際して利益供与した場合

たとえば、総会屋にお金を渡した場合などが想定されています。利益供与した金額が損害賠償額になります。

他の取締役に対し、お金を貸し付けたとき

代表取締役などの取締役に「貸付金」がある場合です。この場合、まだ返済されていない金額が、損害賠償額となります。

企業と取締役との自己取引

取引によって、会社がこうむった損害の金額が賠償額になります。

法令または定款違反行為

こういった行為により、会社が受けた損害額が賠償額になります。

新株発行の取締役の引受担保責任

新株を発行したのに引き受けられていない株式があるときや、株式の申し込みが取り消されたときには、その価額が賠償額になります。

こういった役員責任を追及するときには、民事再生の裁判所に対し「査定の申立」という申し立てを行う必要があります。この申し立てを受けると、裁判所が対象の取締役を呼び出して事実関係を調査し、迅速に責任の有無と賠償金額を決定します。

民事再生と破産の違いや破産との関係

【要点】

  • 民事再生は会社が消滅しない
  • 民事再生は経営陣も残る
  • 民事再生から破産に移行するケースもある
  • 配当を受けるには債権調査票の届け出が必要

ところで、今回スマートデイズが申し立てたのは「民事再生」であり「破産」ではありません。一般的に、民事再生と破産の違いが理解されていないことも多いので、以下で説明します。

民事再生とは

民事再生は、先ほど説明したように、会社や個人が債務を減額して、再生するための手続きです。会社の場合、消滅せずに存続していくことが前提となります。
民事再生

破産とは

破産

これに対し、破産は、会社や個人が負債と財産を清算する手続きです。

破産をすると、破産者の持っている財産からできる限り債権者に対する支払いを行い、会社は消滅します。

通常、破産する会社は全額の返済に足りる資産を持っていないので、債権者の種類や人数に応じて、平等に支払いが行われます。

こういった、破産の際に行われる支払いのことを「配当」と言います。

つまり、民事再生でも破産でも、債権者に対する「配当」は行われるということです。

また、破産の場合にも、民事再生と同様に、非常に長い時間がかかります。数ヶ月~1年以上かかることもありますし、その間、債権者が個別に権利行使することはできません。

違いは、会社が消滅するかどうか

それでは、民事再生と破産の違いはどのような点にあるのでしょうか?

まず、会社が消滅するかどうかという点が大きく違います。

民事再生の場合には、会社は存続することが前提です。今回のケースでも、スマートデイズは民事再生を申し立てているので、会社を残すことを想定しています。

これに対し、破産は会社が無くなる手続きです。もしも今後、スマートデイズの手続きが破産に移行したら、スマートデイズは消滅することとなります。

経営者が残留するかどうか

次に、経営者が残留するかどうかも異なります。

民事再生の場合には、旧経営陣が残り、債務の圧縮や支払い、経営を継続して行っていきます。

これに対し、破産の場合、破産手続き開始決定とともに、破産管財人が選任されて、破産管財人が破産の手続を進めていきます。手続き開始決定があると、元の経営者はすべての財産や経理、負債などに関する資料を管財人に引き渡し、会社の経営や破産手続きからは外れることになります。

今後、スマートデイズが破産手続きに移行すると、そのときにはスマートデイズの経営陣らが自分たちで破産手続きを進めることはできなくなります。

債権者の同意の要否

民事再生と破産では、債権者の同意の要否も異なります。

民事再生の場合、再生計画案が認可されるためには、一定数以上の債権者による同意が必要です。同意が得られなければ、再生計画案は否決されて、効果を発動せず、申し立て企業は破産せざるを得なくなります。

これに対し、破産の場合には、債権者の意向は関係なく、要件さえ満たしていれば手続きが進んで配当が行われ、会社が消滅します。

配当率について

民事再生の場合にも破産の場合にも「配当」が行われるという説明をしましたが、どちらの場合のどのくらいの配当率が認められるのでしょうか?

これらの倒産手続きの配当率はケースバイケースなので、一概に〇%とは決まっていません。

ただ、民事再生の場合、破産より高配当になることが通常です。

民事再生では「破産した場合よりは高額な支払いをしなければならない」という決まりがあるからです。

たとえば、破産した場合の配当率が10%になるケースであれば、民事再生なら最低限10%を超える支払いをしなければなりません。そうしないと、債権者にしてみれば、「民事再生に同意するより破産してもらった方が良い」ということになり、民事再生の意味がなくなるからです。

そこで、民事再生になる場合、最低限、破産する場合よりは多く配当されます。

実際にも、民事再生であれば1020%程度の配当が行われることもありますが、破産の場合、配当率が13%などとなるケースも珍しくありません。

民事再生から破産になることも多い

今回、スマートデイズは民事再生を選択していますが、必ずしもこのまま手続きが進んでいくとは限りません。実際に、当初は民事再生を申し立てても、途中で頓挫して破産に移行する例が非常に多いからです。

会社が経営破たんしても、多くの経営者は「何とか会社を残したい」と考えるものです。また「できれば、自分の手で再生させたい」と思います。そこで、まずは民事再生を選択することが多いのです。

しかし、実際には財産関係や債権者関係が非常に複雑になっていて、経営者に任せていても整理ができず、債権者の理解も得にくく手続も進められないということが多々あります。そのようなときには、裁判所が民事再生手続きを廃止してしまい、破産手続きに移行します。

今回のスマートデイズの件でも、権利関係が複雑であり、債権者による経営陣に対する不信感も極めて強いので、今後破産に移行する可能性が相当程度あります。

破産2

配当を受ける方法

民事再生であっても破産であっても、債権者の立場からすると、きっちり配当を受けることが非常に重要です。

ただし、配当は、何もしなければ受けることができません。

民事再生でも破産でも、「債権調査」が行われます。

債権調査の際、どのような債権者が存在するのか、会社の帳簿や資料によって調べられます。そして、会社や管財人から債権者へと「債権調査票」が送られます。

債権者は、それを受け取ったら、必要事項を書き込んで資料をつけて提出しなければなりません。きちんと届出をしないと、債権者として認められず、配当の連絡も来ないのです。

もしも債権があるにもかかわらず、債権者として把握されていない場合には、自分から裁判所や会社、管財人に連絡を入れて、債権調査票を送ってもらうべきです。

スマートデイズの場合にも、これから債権調査が行われるでしょうから、自宅に調査票が届いたら、きちんと書類を作成して裁判所に提出しましょう。

被害者団体がスマートデイズに訴訟提起

【要点】

  • 不動産オーナーは不法行為を主張
  • スマートデイズ社は民事再生申し立て中につき個別請求は不可
  • 役員や建築会社、販売会社などに対する賠償請求は認められる可能性がある

被害弁護団による訴訟の概要

ところで、今回のスマートデイズの騒動で、不動産オーナーたちが結束して弁護士(加藤博太郎弁護士(わたなべ法律会計事務所))に依頼し、スマートデイズを訴えたという情報があります。

この訴訟がどういうものなのか、見ておきましょう。

スマートデイズが賃料を支払わなかったことにより、不動産オーナーたちは多大な損害を受けました。そこで、平成30327日、スマートデイズの不動産オーナー13名が、スマートデイズや建設会社、販売会社などの合計15社及び、スマートデイズの役員らに対し、総額2億円の損害賠償を求める訴訟を提起しました。訴訟が提起されたのは、民事再生と同じ東京地方裁判所です。

ところが、提訴後半月も立たない49日において、スマートデイズが民事再生を申し立ててしまいました。

被害弁護団の主張

スマートデイズの被害者たちは、損害賠償請求訴訟において、どのような主張をしているのでしょうか?

不動産オーナーたちは、スマートデイズやその他の責任者の「不法行為」を主張しています。不法行為とは、故意や過失によって他人に損害を発生させた場合の責任です。

不動産オーナーとスマートデイズには契約関係がありますが、訴訟では、契約関係のない人や企業も被告にしています。

そこで、契約関係にもとづく損害賠償請求とは異なり、「違法行為によって損害を与えた」として、別途不法行為が成立すると主張しているのです。契約関係のあるスマートデイズにも、不法行為責任が発生するとしています。

オーナーたちが主張している不法行為の相手と内容は、以下の通りです。

スマートデイズの責任

スマートデイズは、そもそも契約に従った賃料を支払う意思も能力もなかったにもかかわらず、高額なシェアハウスをオーナーに購入させ、あるいは建築させた

スマートデイズの役員たちの責任

スマートデイズの役員たちは、20181月以降、一方的に不動産オーナーに対する賃料支払いを停止する決定を行い、オーナーに多額の損害を与えた

建築会社の責任

建築会社は、スマートデイズと業務委託契約を締結し、不動産オーナーが支払った金額の数十%ものお金をスマートデイズにキックバックしていた。このキックバック料金は、社会通念に照らしても高額過ぎ、不当である

かぼちゃの馬車の販売会社の責任

販売会社は、不動産オーナーに対してサブリースのリスクも説明せず、市場価格より高額な土地購入契約をさせた。また、不動産オーナーが購入に必要な融資を受けるため、金融機関に対して預貯金や収入資料を改ざんして、資料を提出した可能性もある

このように、不動産オーナーたちは、以下の4者に対し、損害賠償請求を行っています。

  1. スマートデイズ
  2. スマートデイズの役員
  3. 建築会社
  4. 販売会社

今回、スマートデイズは民事再生してしまったので、同社に対してはこうした個別の訴訟による請求は困難となりますが、役員や建築会社、販売会社などに対する賠償請求は、認められる可能性があります。

また、この弁護団の活動が周知されてくると、全国から他の不動産オーナーたちも訴訟に参加してきたり、別途訴訟を起こしたりする可能性も出てきます。

全国における被害弁護団の結成

上記の訴訟以外にも、全国で、シェアハウス問題の被害弁護団が立ち上がっているので、ご紹介します。

46日現在において、東京、大阪、広島、京都、福岡の約40名の弁護士が弁護団に参加しており、約120名の不動産オーナーから受任しているということであり、活動の中心となっているのは河合弘之弁護士(さくら共同法律事務所)です。

先にご紹介した加藤弁護士は、この被害弁護団と連携しており、協力して被害者の救済を進めています。

スマートデイズが民事再生を申し立てた49日には、河合弁護士と不動産オーナーたちが被害回復を求める街頭デモを行いました。ただ、被害弁護団は、この日にスマートデイズが民事再生する予定だということは、知らなかったということです。

民事再生により、損害賠償請求権も減額される

スマートデイズは民事再生を行いましたが、これにより、被害弁護団が主張している「スマートデイズに対する不法行為にもとづく損害賠償請求権」がどうなるのかも、理解しておきましょう。

民事再生をすると、一般の債権は一律の割合で減額されます。

そこで、不法行為にもとづく損害賠償債務が認められるとしても、その金額は民事再生法に従って減縮されることになります。

このことは、破産の場合でも同じです。そこで、債務者が民事再生や破産手続きに入ってしまったら、契約責任であっても不法行為責任であっても、全額の追及は困難となります。

以上のことから、スマートデイズに対する全額の責任追及は、どのような方法をとっても難しくなる可能性があります。
破産3

債権譲渡登記が設定されていた

【要点】

  • スマートデイズの債権は譲渡済み
  • 債権譲渡を受けた人物は不動産オーナーより先に債権を実行できる
  • 配当が不動産オーナーに回ってこない可能性がある
  • 債権譲渡が認められない可能性もある

債権譲渡登記とは

今回のスマートデイズの事件で、見逃してはいけないポイントがもう1つあります。

それは、平成3021日、スマートデイズに債権譲渡登記(質権設定)がなされていたことです。債権譲渡登記というのは、債権を第三者に譲渡して、そのことを登記によって公表することです。

このことにより、スマートデイズの債権は優先的に譲受人が行使できることとなり、一般の債権者はそれに劣後する形になってしまいます。

スマートデイズの債権を譲り受けたのは、スマートデイズの親会社である(株)オーシャナイズの監査役を平成30112日まで務めていた人物であり、スマートデイズと極めて関係が深いとされている人です。

本件の時系列的な流れからすると、スマートデイズは、まずはスマートデイズが有する債権を関係の深い第三者に先に譲渡してしまい、きっちり登記までして質権設定してから民事再生を申し立てたということになります。
債権譲渡

債権譲渡と民事再生の先後関係は?

それでは、今回明らかになった債権譲渡により、不動産オーナーたちはどのような影響を受けるのでしょうか?

債権譲渡が登記されると、その効果は民事再生に優先します。民事再生では、「担保権を持っている債権者は、他の債権者に優先して担保権を実行することができる」とされているからです。

つまり、21日に債権譲渡を受けた人物は、スマートデイズの不動産オーナーの存在にかかわらず、先んじてスマートデイズの債権を実行し、回収できることになります。

しかし、本来であれば、債権はスマートデイズの資産であり、回収した資産は不動産オーナーたちへの配当に充てられるべきです。それなのに、債権譲渡されたせいで、不動産オーナーたちのもとには一切渡らなくなってしまうおそれがあるのです。

債権の内容は明らかにされていませんが、たとえば2億円の債権であれば、債権譲渡されたことにより、不動産オーナーに返されるお金が2億円減ってしまうということです。

債権譲渡が、不動産オーナーにとって大きな不利益となることは、明らかです。

否認権とは?

本件で問題になるのは、「この債権譲渡が詐害的なものではないか?」ということです。

スマートデイズが債権譲渡登記をしたのは、平成3021日のことです。しかも、相手はスマートデイズと関連の深い人です。

スマートデイズが民事再生を申し立てたのは平成3049日のことですから、21日の時点では、当然民事再生を予定していたでしょう。また、その頃、すでに不動産オーナーたちへの支払いを停止しており、支払いができない状態になっていたことも明らかです。

このような状態で、価値のある資産だけを知り合いに譲渡して隠すことは、財産隠しに他ならず、不当であり、法律においても認められていません。

今回のように、支払い停止状態になってから行われた弁済や担保権設定等については、「否認」される可能性があります。否認とは、法律行為の効力を否定することです。

民事再生をするときには、手続き自体は経営者が進めていくとしても、「監督委員」が選任されるケースが多いです。そして、民事再生直前の財産隠匿行為や担保権設定行為などがあると、監督委員が「否認権」を行使して、その効果を否定します。

否認権が行使された場合、第三者(債権の譲受人など)が「支払い停止の事実を知らなかった」のであれば、否認権を争うことも可能です。

しかし、今回、スマートデイズから債権を譲り受けた人物は、今年の1月まで親会社の監査役を務めていた人物であり、スマートデイズの状況を知らなかったことはあり得ないでしょう。

そこで、このまま債権譲渡が有効になる可能性は小さく、否認される見込みが高いと考えられます。

債権譲渡

今後の展望

以上のように、スマートデイズは民事再生を申し立てましたが、債権者である不動産オーナーたちは不満を募らせており、被害弁護団を結成するなどして、全国で訴訟を起こそうとしています。また、不動産投資ローンを貸し付けていた金融機関である「スルガ銀行」を訴えている不動産オーナーもいるという情報も入っています。

スマートデイズ自身も、民事再生直前に債権譲渡登記を行うなど、不審な動きを繰り返しています。

このような複雑な状況の中、民事再生手続きがスムーズに進むとは考えにくいです。

今後は、破産手続きに切り替わり、破産管財人が入って厳格な手続きにより、スマートデイズが清算される可能性も高いと言えるでしょう。

その場合、配当率は低くなるでしょうから、不動産オーナーたちは、役員や代表取締役への個人責任の追及、建設会社や販売会社などへの責任追及により、被害弁償を受けていく必要があります。場合によっては刑事告訴を検討する余地もあるかも知れません。

今後のかぼちゃの馬車・スマートデイズ、不動産オーナーたちの動向から目を離さずに、見守っていきましょう。

4月13日に行われた説明会

11分30秒あたりから特集されています。

追記:4/19現在動画削除されていました

かぼちゃの馬車関係ツイッターでの声

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