今回のテーマは区分マンション。ひとことで区分マンションと言っても、その運用方法はさまざまです。いわゆる「マンション投資」で儲けるにはどのような物件に投資したらよいのか、考えてみることにしましょう。
目次
区分マンションの出口を考える
不動産投資の世界では、売却のことを「出口」と呼びます。
区分マンションに限らず不動産投資を行う上で重要なのが、この出口を考えること。不動産投資の成否の半分以上は、購入時に決すると言われています。個人的には、投資の成否の6割程度は購入時に決すると思っています。では、残りの4割は何でしょう?私は、4割のうち2~3割を出口が握っていると考えています。
株式投資においてよく用いられる「利益確定」という言葉、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。ある銘柄を購入したとしましょう。
しかし、その銘柄が値上がりしても、その銘柄を保有しているうちは、値上がり分は単なる「含み益」に過ぎません。つまり、売却しないことには、投資の利益が確定しないということになります。それは、不動産投資の世界でも同じです。
物件を購入して家賃収入を得始めると、儲かっていると思ってしまいがちです。しかし、いざ、売りに出してみると、購入価格の半額程度にしかならないことも。その場合、購入価格の残り半分に相当する金額を、物件の購入から売却までの間に家賃収入として得られていなければ、トータルでは損をしたことになります。
つまり、そのような投資は失敗と言わざるを得ません。家賃収入を得ていたときに覚える「儲かっている」という感覚は、単なる「錯覚」に過ぎなかったわけですね。
では、区分マンション投資にはどのような出口戦略が考えられるのか、詳しく解説いたしましょう。区分マンション投資には、出口戦略としての対象が3つあります。
投資家
最も大きなボリュームを占める日本人個人投資家の需要を意識することが、出口を考える上で一番重要と言えるでしょう。
不動産投資熱が過熱している昨今ですが、売却するときまでこのブームが続くとも限りません。ブームが去った後も、投資家から支持される物件をリーズナブルな価格で購入することが、区分マンション投資ではとても大切です。投資家たちは何を目的に不動産投資を行っているのか?それを考えてみると、投資家は何を重視して物件を選ぶかが、自ずと見えてくるはずです。
あなたがそうであるように、多くの不動産投資家が求めているのは、高い収益性です。つまり、利回りが高く安定した収益が期待できる物件ということになります。では、収益性の高い物件とそうでない物件、この2種類をどのようにして見分ければよいのでしょう。それを知るためには、まずは入居者の立場に立って考えてみるとよいでしょう。
家賃
リーズナブルな家賃設定は、入居者にとって大きなメリット。その一方で、家賃を低く設定すると、大家さんの収入は減ってしまい、利回りも下がってしまいます。このジレンマは、物件を安く仕入れられさえすれば解決します。物件の仕入れ価格が低く抑えられれば、リーズナブルで競争力のある家賃設定にしても高い利回りを維持することは十分可能です。ところが、高値で購入した物件の場合、こうした競争力のある家賃設定には無理が生じます。このことからも、安く物件を購入することがいかに大切か、お分かりいただけることでしょう。
立地
都心に近いことや、最寄り駅からターミナル駅までのアクセスの良さも、入居者が物件を選ぶ際に参考にするポイントです。
利便性
利便性を求める入居者が多い区分マンション。入居者のニーズを考えると、最寄り駅から徒歩10分以内に位置する物件を選ぶべきでしょう。
周辺環境
大きな企業や大学が複数、徒歩圏や自転車での通勤・通学圏にあるマンションは、高い稼働率を維持しやすいと言えます。退去があったとしても、空室期間を比較的短く抑えることができるため、安定した収益につながります。
管理状況
購入前に現地を確認して、集合ポストやゴミ箱からチラシがあふれていたり、清掃が行き届いていなかったりするマンションはおすすめできません。購入後に管理会社を変えれば、メンテナンスは向上するでしょう。しかし、オーナーチェンジの場合、質の悪い管理会社が斡旋した入居者を、そのまま引き継ぐことになります。粗悪な入居者を抱えてしまうことにもなりかねません。
築年数
できれば築年数は新しいに越したことはありません。築年数が古い物件でも、築年数の割に建物の状態が良好なものを選ぶようにしましょう。
設備
モニター付きインターホンや宅配ボックスなど、入居者のニーズを満たす設備が整ったマンションであれば、その部屋が選ばれる確率が高くなります。
外国人投資家
マンション価格の高騰によって、都心マンションの利回りは低下する一方です。5-6%はあたり前、2-3%という築浅物件も珍しくなくなってきました。日本人投資家にとっては物足りなさが感じられる都心マンションの利回りですが、外国人投資家は少々違う捉え方をしているようです。
「日本の不動産を購入して得られる利回りは、本国の不動産から得られる利回りよりもまだまだ魅力的だ」。そう答える外国人も多いとのこと。ハワイの高級物件に関して言うと、利回りがわずか1-2%というものもあるほどです。そうした物件に比べれば、6%程度の利回りが期待できる日本の区分マンションは、彼らにとっては依然魅力を感じられる存在なのでしょう。
また、外国人投資家による日本不動産への投資には、不動産から得られる収入のほかにもう一つ投資の要素が加わります。外国人はより高い収益を目指すために、為替の変動も加味して日本の不動産を購入することでしょう。今現在、対ドルの円相場は円安水準で推移しています。外国人投資家をターゲットにするのであれば、こうした円安時に売却活動を始めることも大切です。逆に円高のときは、多くの外国人投資家が物件の売却を急ぐため、市場に大量の不動産が出回ることになります。そのようなときは、物件の売却を控えたほうが得策です。
外国人投資家の嗜好も加味して考えることも、外国人投資家をターゲットとする際には重要です。例えば、タワーマンションの最上階、キラキラとしたモダンな内装の部屋は、外国人投資家にも好印象を与えます。
実際に住む人
投資家だけでなく、実際に暮らすことを想定している購入希望者を取り込むには、間取りも重要な要素になります。ファミリー層が多く暮らすエリアであれば3LDKを、夫婦のみの世帯が多いエリアであれば2LDKを選ぶようにするなど、エリアに対する住民のボリュームゾーンを考慮しながら、どのようなタイプの間取りにするかを検討してみるようにしましょう。
2LDKは、ひとり暮らしから夫婦と子供1人の世帯まで、幅広く対応できる間取りです。どの間取りの物件を購入するか、迷ってしまったら2LDKの物件を選ぶようにしましょう。
賃貸物件の場合、重視するポイントとそうでないポイントとを天秤にかけた結果、多少妥協しつつも入居を決めるという人がほとんどです。しかし、自分が住む物件を購入するような場合は、妥協は最小限にとどめたいもの。将来の購入希望者が何に重きを置くかは分かりませんが、購入する前に少なくとも自分が住んでもよいと思えるマンションであるかどうか、自分に問うてみることも大切です。自分が住みたいと思えないマンションは、他人も住みたいとは思わないはずです。
区分マンションを転売して儲ける方法
区分マンションを転売して利益を出す一番確実な方法は、
- オーナーチェンジの区分ファミリーマンションを購入
- 退去とともに実需用(住む人)向けに売却
という方法です。
具体的にこの方法を見ていきましょう。
投資物件としてオーナーチェンジを購入
例えばですが、上記のようなファミリー向けの物件を購入するとします。
すでに入居者がついていて、年間約185万円の家賃収入が入ってきます。利回りで6%ちょい。都心の物件ですので利回りが低いですが、まぁこんなものでしょう。利回りだけを見るとあまり儲かる物件のようには思えません。
このように、賃貸がついている物件は売却先が原則投資家のみとなってしまいますので、賃料に対する利回りでしかその価値を計れなくなってしまいます。
退去後に実需用層に向けて転売
しかし、上記のような物件の入居者が退去したあと、今度は投資家向けではなくて実際に住む人に向けて売却をするとどうなるでしょう。
実際に五反田駅周辺の同じような物件をホームズで探してみました。
この物件は先に載せた物件と同じではありませんので、一概には言えません。ただ、よくよく数字を比較してみてください。
物件A | 物件B | |
築 | 39年 | 37年 |
駅徒歩 | 4分 | 3分 |
平米数 | 59㎡ | 62㎡ |
売価 | 2,980万 | 4,480万 |
多少物件Bの方がスペックが勝っているように見えますが、1500万円もの差があるようには思えません。
もちろん、どちらの物件も売り出し価格であり、実際にいくらで売れるかはわかりません。ただ、物件Bの方も適当に金額を決めているわけではなく、過去の事例などを参考にして、五反田駅近のファミリー物件ならこれくらいで売れるだろうという数字にしているはずです。
投資物件としては2980万でも魅力的ではなかった物件が、実際に住む人を対象にして売り出すと4500万円近くにまで売値が変わるのです。住む人は投資として考えませんから、そこで家賃がいくらくらい取れるとか、利回りとか気にしません。
気に入った場所に気に入った物件があって金額に納得すれば購入に至ります。
仮に、これを狙ってやった場合、物件Aを2980万で購入して5年後に退去、その後リノベーションに300万円かけても
- 家賃収入185万×5=925万
- リフォーム300万
- 売値4480万円
4480万ー(2980万+300万-925万)=利益2125万円
計算は簡易的なものですが、5年で2125万の利益ならかなり効率よい投資ではないでしょうか?
そして、これを繰り返すことで利益を伸ばし上場まで上り詰めたのが下記で紹介するスターマイカです。
繰り返して上場を果たしたスター・マイカ
ここで、マンションの転売を繰り返すことで急成長を遂げた不動産会社、「スター・マイカ」を紹介いたしましょう。東京都港区に本社を構えるスター・マイカ。2001年に設立され、中古マンション事業・インベストメント事業・アドバイザリー事業の3つを柱に事業展開する不動産会社です。
一般的に、中古マンションを取り扱う不動産会社は、その戦略ごとに次の3つのグループに分類されていました。しかしスター・マイカは、これまでにはなかった第4のグループを創り出すことで、これまで業績を伸ばしてきました。
空室をリフォームし転売するグループ
50㎡以上の空室の区分所有ファミリータイプマンションを購入して、リノベーションしたものを販売するという戦略です。投資額が少ないため、この手法を手掛けるのは主に中小中堅の再販業者になります。値下がりのリスクを回避するため、3カ月程度の短期間での売却を目指します。
ビル再生を専門とするグループ
ビル1棟を買い上げ、収益の基本となる賃料や稼働率を向上させた後、ファンド等に売却します。ビル1棟を購入することができる資金力を持ったREITなどが中心プレイヤーになります。収益の多くを、不動産価格の上昇に依存するという特徴があるため、不動産価格が下落基調にある局面では、収益が圧迫されてしまいます。
ワンルームマンションを扱うグループ
30㎡以下のワンルームマンションを運用商品として扱います。オーナーチェンジでワンルームマンションを購入、それを転売するという手法で収益を上げるもの。売り手・買い手ともに投資家を主な対象として事業を行います。
スター・マイカの事業スキーム
スター・マイカは、中価格帯(2,000万~3,000万円程度)の区分所有ファミリータイプマンションを、築10年以上のものに特化してオーナーチェンジで購入。賃貸中はその物件のオーナーとして、賃貸経営および管理を行いながら家賃収入を得ます。そして、入居者が退去したタイミングで物件をリノベーション。実需のある購入希望者に物件を売却するという、これまでにないスキームで急成長を遂げることに成功しました。